第23話 鍋パーティー
私を含めた学生時代の仲良しグループ4人で今年の冬も鍋をしようという話が出た。ここ数年、毎年冬の季節に鍋パーティーを開催していたのだけど、一通りやったし次は何鍋にする?て話題になった時に闇鍋しようよ、という声が上がった。持ってくるものの担当さえ決めておけば闇鍋でも問題ないよね、という話になり、私は鍋のベースとお茶やジュース、野菜数種類をAちゃん、メインがBちゃん、〆やツマミ、お酒はCちゃんと役割分担することになり、今回も楽しみだね~と話していた。
闇鍋パーティーは私の家で開催することになり、夕方6時にみんなで集まろうと話していたがCちゃんから遅れると連絡が入り、私とAちゃんとBちゃんの3人で先に準備を始める事になった。それぞれが話しながら買ったものを冷蔵庫に入れたり、卓上コン口を用意したり食材を切ったりしているとインターホンが鳴った。
「あれ、意外と早く着いたね~」
と話しながらドアを開けると、買い物袋を下げたCちゃんが立っていた。遅くなってごめんね~!と言うCちゃんを部屋に迎え入れて、カーテンを閉めて電気を消し、あらかじめ煮込んでおいた白菜やメインの鶏もも肉の中に鍋のベース、食材を入れて煮込み始めて闇鍋パーティーが始まった。
『鍋のベース、あんまり匂いしなくない?』
「香りでバレないように豆乳にした〜」
『良かったー!メ、パスタにしたんだよね』『太る太る!やばいって!』
みたいな話をしながら火をじっくり通して闇豆乳鍋が完成した。みんなで豆乳鍋美味しいね、今食べたの何か分からない、など感想を言いつつ食べていた時に携帯の通知音がなった。通知の名前を確認すると遅れてきたCちゃんだった。この至近距離でどうしたのだろう、とメッセージアプリを開くと、
【遅くなってごめん!やっと仕事終わったんだけどもう鍋パお開きになった?】
という内容のメッセージだった。状況が分からず既読をつけたまま固まっていたら電話がかかって来たので数秒経って恐る恐る出ると、
『急な残業で思ったより長くなっちゃってごめん!何かいる?AとBにも聞いてくれ
る?』
とCちゃんの申し訳なさそうな声が電話口から聞こえて来た。Cちゃん何言ってるの、遅れたけど来たじゃん、何なら目の前にいるじゃん、と言いそうになるんだけど暗闇でじっ...と何かに見られてる気がして言葉が出ない。そうこうしている間に電話に出たけど何の返答もしない私を少し変だと感じたのか、AちゃんとBちゃんが大丈夫?電気つけようか?とリモコンを探して電気をつけた。暗闇に目が慣れていたせいで一瞬明るさに目が眩んだが、視線を感じた方向を見るとそこにCちゃんはいなかった。
『あれ?Cちゃんは?トイレ?』
と2人が言い出したので、通話が繋がったままの電話をスピーカーモードに切り替えてCちゃんの声を聞かせると、2人とも理解できない、という困った顔を見せていたが状況を理解していくうちに沈黙が訪れた。Cちゃんには何もいらないことを伝えて一日電話を切り、必要最低限のバッグやコートを持って3人で外へ飛び出した。その後、Cちゃんと落ち合って4人が泊まれる部屋を探し、ホテルで明かりをつけたまま一晩過ごした。
翌朝、鍋の片付けをしなければいけないこともあってCちゃんも含めた4人で私の部屋に戻った。鍋も何もかもそのまま放置してきたので換気から始まり、明るい時間なのに電気を全部つけてそれぞれ大きな声で話しながら作業をした。今、目の前にいるCちゃんは何も食べてないのに片付けを手伝わせて申し訳ない、と思っていたらCちゃんが、テーブル片付けようと思うんだけど…何人で鍋してたの?と唐突に質問してきたので、私とAちゃんBちゃん、そしてCちゃんのような人…の4人、というと
『…鍋の具材が残ったままの取り皿、5枚あるんだけど…。」
と言い出して、私たち3人以外にあと2人得体の知れない何かが同じ空間にいたことに再度恐怖を味わうことになった。思えば、誰が鍋をしようと言い出したのかも分からない。
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