第16話 煙草の自動販売機

日帰りの出張でものすごい田舎に来たんですよね。駅までは遠いしタクシーも電話して呼ばない来ない、コンビニに近いようなお店はあるけど大手チェーンじゃなくて、24時間営業は絶対にしてないようなショップがあるような場所に。それで昼過ぎに仕事が終わったので一服しよう、と思ったら煙草を忘れたみたいで駅まで向かいつつ買いに行くことにしたんです。

20分ぐらい歩いたところに少し錆びついた自動販売機が4台ぐらい並んでるところがあってタバコあるかなぁ…て思って近寄ったらあったんですよ。でも、その自動販売機に売ってある煙草のパッケージがちょっと変わってて。

ふみえ、かつひこ、とか人の名前が書いてあって一緒にその名前の人の顔写真が載ってるデザインだったんですよ。野菜とかでもたまに見かける生産者の顔と名前が載ってる商品か、煙草では珍しいな、と思いつつ実際に買って吸ってみたら、メンソールっぽい爽快感はあるけど煙草特有の舌に残る少しの苦さとか雑味もなく、ほぼ無味。しかも何だか粉っぽくてなんだこれ?て思いながら吸い続けてたら最後にポロッと何か落ちてきたんです。それが、少し煤けてはいるけど骨っぽかったんですよね。


あのパッケージの顔写真と名前の人の遺骨や遺灰だったのでは?て思ったら居ても立っても居られなくて、その場に煙草のような何かを置いて走って駅まで行きました。誰が何のためにそんなものを売っていたのか…知りたいとも思わないです。

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