第14話 真面目な青年

職場で使ってるキャスター付きの椅子が壊れたんですよね。それで相談したら倉庫にあるよ、と言われたので探しに行ったんです。倉庫にキャスター付きの椅子は複数あったんですけど、新人が新品を使ってもいいのかなって思って他にないか探してたら、カバーのかかってない椅子が一つあったのでその椅子を使うことにしました。それから数日経って異変が起きたんです。トイレに行って戻ってきたら、席が近い人がみんな静かに俺の椅子を見つめてたんですけど、


んぎぃ……ぎ…ぎぎ…ぎ


て一人でに鳴ってるんですよ。その異様な空気感に上司とかも何事かと集まってくれたんですけど、椅子を見たら顔色が変わってしまったんです。持ってきてはいけない椅子だったのかな、て思ってたら別室に呼び出されて、


『…あの椅子使ったらダメなんだよね。数年前に使ってた人が亡くなってるんだよ…。捨てればいいと思うかもしれないけど、あんな感じで鳴るからまだ未練があったり、成仏できてないのかなって思うとね…。』


倉庫に戻して別の椅子に変えてくれる?、と申し訳なさそうに話されたんです。その時、他の人が間違って使わないようにって【封印】て紙に書いて貼り付けて倉庫に戻したんですけどそれからですね。俺の耳元でずっと、んぎぃ……ぎ…ぎぎ…ぎぃいいい…ぎいいいいいい、て音が聞こえるんです。ずっと。俺、なんか悪いことしましたかね?

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