第10話 赤いハイヒール【下】

『すみません、大丈夫ですか?』


と声をかけられた後にもう一度肩を叩かれた。恐る恐る目を開けると、先ほどすれ違いざまにぶつかった学生がしゃがみ込んで動かない俺に声をかけてくれたのだった。そこでやっと正気に戻り、辺りに視線を巡らすと赤いハイヒールは消えていた。正直ほっとしたのだが、こんな状態でまともに講義を受けられるはずもなく、他の友人に伝えてその日はそのまま家へと帰った。友人からの連絡を待ちつつ、ふと赤いハイヒールについて何か情報がないか調べたところ気になる掲示板のスレッドに辿り着いた。


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【視界に赤いハイヒールが入ったら絶対に、ハイヒールを履く存在の顔を見てはならない。見ルと精神ニ異常ヲ、キタス。】


1:名無しのホラー好き

何これ?


2:名無しのホラー好き

これXXの大学に張り紙あるらしいよ。顔見た人いるけど、どんな顔なのか話してくれないし知らない。


3:名無しのホラー好き

>>2 絶対お前が考えたんだろ。


4:名無しのホラー好き

ていうかこれスレ立てた時点で精神狂ってね?



XXの大学ってうちじゃないか、とスレッドを読んで嫌な気分になって携帯を放り投げた。もう友人に会えないのだろうか、連絡はこないのだろうか、そう思いつつ目を閉じた。


何時間経ったのだろうか。インターホンの鳴る音で目が覚めた。携帯を確認すると他の友人たちから連絡がたくさん入っており、そのうちの1人がレポートを届けてくれるとのことだった。もう直ぐ着くよ、と最後に来たのが数分前だったので友人が来たのだと思って急いで玄関を開けた。


「ごめん、寝てて」


そこで言葉を飲んだ。目の前には昨日から連絡が取れなかった顔色の悪い友人がふらふらしながら立っていたのだ。大丈夫だったのか、と驚きながらもあまりにもふらふらしているので、心配になって家に入るように促した。心なしか目線がいつもより高い気がする、そんなことを考えながら友人がふらつかないように支えようとした時に足元に目が行った。そこには大学で見た、あの赤いハイヒール。


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【視界に赤いハイヒールが入ったら絶対に、ハイヒールを履く存在の顔を見てはならない。見ルと精神ニ異常ヲ、キたス。】


1:名無しのホラー好き

何これ?


2:名無しのホラー好き

これXXの大学に張り紙あるらしいよ。赤いハイヒールの存在の顔見た人いるけど、どんな顔なのか話してくれないし知らない。


3:名無しのホラー好き

>>2

絶対お前が考えたんだろ。


4:名無しのホラー好き

ていうかこれスレ立てた時点で精神狂ってね?


5:名無しのホラー好き

これって元々オカルト研究部が考えた勧誘だったらしいよ。コの張り紙ってなンですか?て聞きにキた学生ヲ入部させルみたイな。笑

デも、張り紙にまツわる色んな噂が一人歩キしてみんなが勝手に怪異を作り上げてしまったんダッて。


6:名無しのホラー好き

>>4

どこかおかしいかな?

そウいえばこの話にハ続きガあって、こレ、赤いハイヒールの存在ノ顔を見タ人が、また次の人のとこロに赤いハイヒール履いて来るんダよ。


7:名無しのホラー好き

>>5>>6

おいマジでやめろ。

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