第9話 赤いハイヒール【上】

【視界に赤いハイヒールが入ったら絶対に、████████████を見てはならない。█████████████。】


そんな張り紙を見かけたのはなんてことない日の午後だった。大学の友人と帰りながらそのことを聞いてみたところ、そういう張り紙を貼りそうなのはオカルト研究部だ、その話を聞きにきた人を流れで勧誘するんだよ。と答えてた。


『でも肝心なところが書いてないよね。』


そうなのである。

肝心なところが塗りつぶされており、何を見てはいけないのか、そして見たらどうなるのか、などの情報が全く無くて正直気味が悪いのである。友人ともう少しその話について語りたかったが俺たちは貧乏大学生という身でもあるので、俺はコンビニ、友人は倉庫内の仕分けバイトがあるということで別々の帰路に着いた。

その日の夜、バイトが終わって携帯を確認すると友人から不在着信が入っていたので折り返すとワンコールも鳴らないうちに繋がり、

お前が話してた赤いハイヒールのやつをバイト中に見た、と言うのだ。どんな人だったの?と聞くも


『知らない方ガ………』


そう言って一方的に電話を切られてしまった。何となく不安な気持ちを抱えたまま翌日大学に向かうと、友人は来ていなかった。電話やSNSで連絡するも何の音沙汰もない状態で、友人から連絡がきたらすぐ返せるように携帯を見ながら歩いていたら、すれ違いざまに人とぶつかって携帯を落としてしまった。すみません、と謝りつつ携帯を拾おうとしゃがみ込んだ時、落ちた携帯から少し離れた位置に赤いハイヒールを履く足がこちらに爪先を向けて立っていることに気づいた。

まずい、直感的にそう思いながらも体が言うことを聞かないのか自分の意思と反して、ハイヒールを履いてる人を見ようと視線が上に動いてしまう。見てしまったらどうなるんだろう、見てはいけない気がする、そう思って見ないようにしっかりと瞑った時に誰かが肩を叩いた。

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