第7話 閉架式書庫

とある図書館で働いている。


その図書館の一階は子供向けの絵本やら小説、大人向けの雑誌や話題の小説を置き、二階は館内でしか読めない専門的な本を取り揃えており、地下一階が閉架式書庫となっている。借りられることが少なくなった本なども地下に置いてあるので、利用者の方に声をかけられては本を探しに行くことも多いのだが、私が働く図書館には【閉館時間である夕方6時を過ぎたら閉架式書庫に入ってはならない、もし閉架式書庫にいた場合は6時になる前に必ず出ること】という変わった決まりがあった。この決まりに関しては誰に聞いても分からないけど守っている、という感じで私も守っていたのだが、ある日の夕方、閉館時間ギリギリに利用者の方が読みたい本が閉架式書庫にあると聞いて探しに向かった。


地下の書庫は蛍光灯をつけても薄暗い雰囲気で、人の声や気配などもなく、少し不気味に思うこともあるがそんなこと言ってられるわけもなくハンドルを回して棚を移動させた。この辺かな、と探し始めるとすぐに見つかったので再びハンドルを回して移動棚を元に戻そうとした時、ぐじゃっ……と何かが潰れたような音がした。そして一瞬の沈黙の後、


うわぁぁああんうわぁぁああああんん


と子供の泣き叫ぶ声が棚の間から聞こえてきて、あまりの恐怖に走って地上の利用ブースまで戻った。戻った時には6時を過ぎており、事情を説明するとみんなが怪訝な顔をして利用者は全て帰っている、と言われた。そんなはずはないと思ったが私も利用者の見た目や顔を全く思い出せず、また、あの時聞こえた泣き叫ぶ声も原因が分からないままである。

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