第3話 縁結び

出張のためビジネスホテルに泊まることになったんですけど、経費削減なのか古びている分金額も安いホテルに泊まることになったんですよね。手続きを終えて部屋に入ったら、すぐ真後ろでドアをコンコン…とノックする音が聞こえて


「…い…ますか…?」


て女性の声が聞こえたんです。いますか?て何だよ。いるよ。と思って無愛想にはい、と返事したら何も返答がなかったので不思議に思いつつ、その日は部屋で少し仕事を済ませて寝たんです。

翌日起きて着替えを済ませようとしたら、左手の薬指に長い髪の毛数本が丁寧に結んであったんです。気味の悪さからフロントに昨晩の件とあわせて連絡したんです。


そしたら、昨晩の「いますか?」は「いりますか?」であること、「はい」と答えた人はその女性の髪の毛と一緒に縁も結ばれてしまうこと、阻止するには結んであった髪の毛を他の人へ渡して他の人と縁を結ばせること、などを説明された後に


『暫く出てこなかったので安心していたのですが…申し訳ございません…』


とひたすら謝罪されたのですが、黙っていたことなども含めて全てが気持ち悪かったので早々にホテルを出て、会社に戻る途中の満員電車の中で少しの罪悪感を抱えながら、他人の鞄にこっそり入れてしまいました。

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