第2話 雀荘

数ヶ月前に近所に新しく雀荘ができた。

早速、麻雀好きな友人を誘ってその雀荘に向かったんだけど、いざ入ってみたら先にいた客の1人がこっち向いて少し微笑みかけてくれた。

見覚えのない顔だけど会ったことあるのかな…とか考えつつ、案内された雀卓で打ち始めたんだけど、ずっと「負けろ」て囁きが耳に入るのよ。最初は気にしなかったけど、次第にその声が大きくなってきて集中できなくてイライラするし、負けが続いてしまってもう帰ろうって話になったら微笑みかけてくれた先客の1人が、


「もう帰るんですか?」

「まだ帰らないでくださいよ」

「寂しいじゃないですか」


とか必死に声かけてくるわけ。

すみません…とかなんだか言ってたら明らかに睨まれちゃって、友人たちもそこで気分害しちゃったからさっさと退店しようとしたら帰り際に店員が、


「すみません…。うちの店、囁かれた人が必ず負けちゃうんですよ。で、囁いてるヤツは新しく来たお客さんの方にどんどんいっちゃって、新しく来た客とお客さんが帰ると、その前まで囁いてたお客さんの方に戻っていくんです…。」


とか変な言い訳するんだけど、負けろって囁いてたヤツと店員の声が一緒に聞こえたのは、気のせいだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る