第4話 姿見

週一ぐらいで田舎のスナックで働いてたけど、お店が急に閉店することになってしまって、店側もなるべくゴミを減らしたいからという理由で閉店した2週間後に更衣室にある大きな姿見をいらないか、と声をかけられた。

元々姿見が欲しかった私はこれ幸いと譲ってもらうことにした。


姿見をもらった数日後に遊びに来た彼氏が、姿見に女性の後ろ姿が映る、と言い出した。

そんなことあるわけないでしょ、と笑い飛ばしたが彼氏の真剣に話す態度が気になって仕事が休みの日に1日張り付いて鏡を見ることにした。

いくら待っても変化がなく、気のせいかと思い始めていた夕方、とある女性の後ろ姿が映った。綺麗な黒髪をそのままおろしているその後ろ姿は、一緒に働いていたSちゃんだと思った。Sちゃんは一部の女性に嫌われそうな気が強いタイプの女性だったが、Sちゃん目当てのお客様はかなり多く、なぜか私の面倒を見てくれるやや変わった人間だったと思う。


「Sちゃん…?」


と思わず呼びかけたが、その声はもちろん届くこともなく、なぜSちゃんが鏡に映るのだろうか、そういえばSちゃんはどうしているのだろうか、と思い我が家まで持ってきてくれたスタッフに連絡をすると、


『Sちゃんですよね…亡くなってしまったんですよ。そのSちゃんが持ってきた姿見も一度貰い手が見つかったんですけど、Sちゃんと仲が良くなかったからなのかSちゃんに睨まれてしまったみたいで…。』


そう言われると貰うまで期間が空いたこと、閉店の理由も客足が減ったからではないかなど納得がいき、特に害もないのでそのまま我が家に置くことにした。

一度だけ、夜中にSちゃんが化粧直しをする姿を見たがその後は一度も出てくることはなかった。

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