98 炭鉱帰宅

 奴隷商の店から出て大通りまで出ると、道具屋に向かいカラムの木工作業用の工具を先に買うことにした。

 本人が使いやすい物を選んでもらうのに時間がかかるかと思ったが刃さえきちんとしたものなら後は自分で調整するからとあっさりと決めてしまった。

 代わりにヤスリや研磨剤、塗り油、ニスなど自分で直せない物は真剣に見ていたがこれも種類がある訳では無いので良い方を選んで終わりであり思っていたよりも早く終わってしまった。

 簡単な細工も出来るそうで金属を打ったり削ったりする道具も選んでもらった。

 鍛冶まではさすがに出来ないので店員に一式まとめてもらったが釘くらいなら俺でも打てそうなので炉を作ったらやってみようと思う。

 木工は学校でやったことがあるけど鍛冶はやったことが無いので一度やってみたいんだよね。きちんと教えても欲しいけどまずは適当に自分だけでやってみたい。

 刀とか作ってみたいけど鍛冶スキルは無いので戦闘に耐えられる物は作れないが観賞用の模造刀でも作れたら楽しそうだ。


 ドアノブやカギなどは細工師の店で買えたのだが数十人分の食料って何処でかえばいいのだろう。露天で買うには量が多いしどこかで発注しないといけないだろう。

 カラムに聞いて食料をあつかっている商会に行けばいいと分かったがこの街の住人ではないので良い店は知らないとのことなので念話でベラに聞くことにした。

 商会の名前など言われても分からないが幸いにも商人ギルドの数件隣という分かりやすい位置を教えてもらえたので助かった。

 欲しい物を伝えて料金を支払うと薬屋の裏まで届けてくれるらしいのだが馬車数台分になるのでわざわざ持ってきてもらうのも悪いし2日後に取りに来ることにしてもらった。

 思いつく限りの街作りに必要な物を次々と購入し支払いは銀貨ばかりでも合わせれば金貨数枚分は飛んでいっただろう。

 鉄を使っている農具などはもちろん高かったが布製品が思ったより高かった。

 安い生地で新品の服を買うよりも1ランク上の生地で俺が制作魔法を使った方が安く済みそうなほどに職人の手間賃が高く設定されているのだろう。汚れ仕事用に中古の投げ売りされていた服を男女で十数着づつと丈夫そうな生地を一巻単位でいくつか買ったらあっという間に金貨2枚を越えた。

 価格交渉をしたらもっと安く買えるんだろうけど面倒でやらなくなってしまった。幸いにも悩んだり大量に買ったりすると向こうから値引きしてくれるので助かっているけどこれからは価格交渉用の商人も必要だろうか?

 奴隷に落ちてる商人は果たして優秀なのかという疑問もあるが今回の様な買い物の時に売っている店に案内できるだけでも役に立つかも知れない。

 領地を管理する人間も必要だし金を管理できる人間を早めに育てた方が良いのかな。出来ればベイリアル男爵から紹介してもらえると助かるんだけど。


 買い物が終わるとやることが無くなってしまう。

 食料が集まるのは2日後だしダンジョンはメンバーが護衛などで散らばっているので新しい階には行けず。依頼を受けるには時間が遅すぎる。

 明日も空いているので2日がかりでというのも出来るが、対象の魔物が見つからない可能性もあるので後が控えている状態で行くのは不安がある。

 ゴールドやプラチナランクの魔物となるとアースタイガーの様になかなか見つからないだろうし、下のランクの依頼を受けようにも今更銀貨数十枚稼ぎに行くのもやる気が出ない。

 今日の所は街を回って新しく作る街に必要な施設や配置なんかを勉強しようかな。

 街の形と道の配置くらいしかまだ決めていないが大きな建物は先に決めておかないといけないよな。

 食料の生産も始めないといけないしやる事が渋滞している、まあ本来は村から徐々に大きくしていくのにいきなり街を作ろうとしているんだから当たり前ではあるが。


 翌日も皆と相談しながら街の青写真を書き上げて過ごしさらに次の日食料を受け取るとアーラに乗って炭鉱へと飛び立った。



「おかえりなさいませショート様。寂しかったですわ。」


「ただいまヴェロニカさん。何か変わったことはなかった?」


「空を飛ぶ魔物がたまに入ってきましたが警備の方達がすべて撃ち落としてくださいましたわ。地上の魔物もショート様が作った外壁を越えられる者はいないようですし安心ですわね。

 後は石炭の買い付けに来た商隊の中にお父様が送ってくださった方達が一緒でしたので炭鉱の運営はお任せ出来るようになりました。鉱山の専門家の方もいたので後で紹介致しますわね。」


「おや、人を送って貰えたんだ。なら後で家を追加で建てないといけないね。」


「出来れば倉庫もお願いしますわ、採掘用の奴隷も増えたので1階の倉庫だけでは次に商隊が来るまでに溢れてしまいそうで。」


「分かった、倉庫は2つ作る予定だったし倉庫が一つ埋まったら人員の振り分けも考えないといけないね。」


「ショート様の奴隷は力も強くて優秀ですから他の仕事も難なくこなせそうですわ。あの細身でお父様が送ってきた男性の奴隷よりも力が強い方もいるんですよ?」


「ああーそういえば残りの人の治療も終わったから紹介するよ、体も鍛え直したから同じ様に働けると思う。」


「まあ!ショート様の育成術は素晴らしいですわね。わたくしも見習って強くなりたいですわ。」


「炭鉱も任せられるようになったのなら魔物退治に着いてきますか?しばらくは街も作らないといけないので来週とかになるかもですが。」


「え、街を数日で作るんですの?」


「取り敢えず家と枠組みだけですけどね。見た目が街なだけの村ですからそんなにかからないと思いますよ。」


「それだけでも早いのですけど…普通は外壁だけでも数ヶ月から数年かかりますのよ?」


「うちの精霊は優秀ですからね。街道もすごいスピードで整備してくれましたよ。」


「門からですが見せていただきましたわ、商隊の方も言っておられましたが本当にあの様な道がレオゲンまで続いているんですの?」


「ええ、むしろレオゲンの街に近いほうが慣れて綺麗に作れていたと思いますよ。街を作ったら歩いてみて下さい。」



 再会の挨拶をすませて追加の家や倉庫を作ると日が暮れたので久しぶりに夕食をヴェロニカ嬢と一緒に食べ、新しい使用人を紹介してもらった。

 執事に料理人、新しいメイド、炭鉱の管理ができるドワーフと必要なスタッフがすべて揃っていた。

 街道を通したとはいえ念話でこんな所まで呼び寄せるとはさすがは貴族だ。

 明日は街を作るために外壁を一周張り巡らせようと思う。畑も外壁の中に作る予定なので結構広く作るつもりなので1日がかりになるだろう。

 外壁が終われば道を張り巡らし、農業をやる奴隷達の家を作ったら商隊用の宿をいくつか作り領主館を作ることになる。

 石部分は何度も変更が出来るので見た目にも凝って出来るだけ綺麗な屋敷を作り上げたいと思っている。木材も外壁を作った時に邪魔になる木材も大量に出るだろうからカラムには頑張って家具を作ってもらいたい。

 いずれは街全体のドアや窓も作ってもらうため数人の弟子を付けて働いてもらうのでしばらくは街で一番忙しい人間になるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る