92 黄色く光る球体

 炭鉱前に降り立つと早速ゲートを開いてフェリとネヴェアを呼ぶ。

 ドライアドに切っても出来るだけ大丈夫な木を聞いてネヴェアに大剣で切ってもらいゴーレムで運んでくる。

 俺は石でレンガを作りかまどを作るとお湯を沸かし始め運ばれて来た木を更に切って丸太の椅子を作る。

 皆やることがあって人数が足りないな、警備のためにも人数が欲しい。ヴェロニカ嬢達にも出来れば専属の護衛を付けたいがどうしたものか。

 制作魔法を使うので死霊魔法で死霊を呼ぶ事もできないし夜中にトイレに起きて付いてくるのが死霊ではヴェロニカ嬢も困るだろう。

 今日の所はシドーに任せるとして新しくシャドーキャットのテイムが必要かな。



「ドライアド、この辺を広場にして欲しいのだけど土を固くする事とかって出来るのか?」


「程度によるけど私ができるのは植物が育つのに最適な硬さくらいまでだから石みたいに固くとかは無理ね。それ以上が欲しいなら土精霊の領分だわ。」


「土精霊か、この辺にいないかな?契約しないまでも手伝って欲しいんだけど。」


「多分いると思うけど反応は無いわね、寝てるんじゃないの?」


「そうかぁ…どうしようかな。」



 数百キロの馬車が通っても沈まない様に出来るだけ地盤を固めたいのだがドライアドでは出来ないらしいし土精霊がやっぱり必要だよな。

 鉱山を崩落させないように壁を強化したり道を固くしたりと開拓には欠かせない。

 そうと決まれば迷うことは無い魔素を使って精霊魔法を覚える。



「えっと、精霊魔法。召喚。」



 覚えても何も起きないので呟いてみると黄色と言うには少し茶色に近い黄土色の光る球体が現れた。



「驚いた何を始めたのかと思ったら下級精霊じゃないの。」


「下級精霊?」


「私みたいなドライアドや街にいたシルフみたいに名前の決まっていない不安定な精霊のことよ。

 ドライアドやシルフは中級精霊とよばれているわ。」


「何か違いがあるのか?」


「自我が薄くて下級魔法しか使えないくらいかしら?あ、シルフは上級魔法を使えるけど中級精霊ね基準はそれだけじゃないから。

 後は不安定だから他の属性も使えるけどやり過ぎるとドライアドの様に複数の属性を持つ精霊になるわ。」


「じゃあ土の精霊になって欲しければ土属性だけ使わせろって事か。」


「そういう事ね。下級精霊でも土を石のように固くすることくらい出来るから気にしなくていいわよ。

 ただ、持ってる魔力が少ないから使い過ぎて消えない様に気を付けなさい。」


「使いすぎたらどうなるんだ?」


「どうって、魔力の塊が魔力を使い切ったら消えるに決まってるじゃない。」



 以前に調べた時は精霊魔法は様々な属性を使えるが魔法を数発撃ったら精霊が消えてしまい再び呼び出すまでに1時間ほどの待ち時間があると書いてあった。

 俺は最初から魔石を持たせて魔法を使ってもらってたからドライアド達が消えなくても気にしてなかったがもしかしてこれ魔力を使い切った精霊が死んだ後新しく生まれるか選ばれるまで使えない待ち時間が発生してるんじゃないだろうか?

 魔石の魔力で魔法を使わせて育てていけばドライアドやシルフの様に成長してくれるのかも知れない。



「取り敢えず試してみるか。下級精霊だと長いし土の精霊になるならノームだな、お前の名前は今からノームだ。

 ノーム、魔石の魔力を使ってこの線を書いた場所を5cm盛り上げて石のように固く平らにしてくれ。ザラつきは残して斜めにならないようにな。」



 ゆらゆらと浮いて明滅した後、魔石を持って書かれた四角の中心に行くと音もなく盛り上がった土が平らな石に変わっていく。

 そういえば霊体なのに魔石は持てるんだな、シルフは風で持ち上げていたしドライアドははっきり見えるから気にならなかったが光る球体が魔石をぶら下げてるとさすがに違和感がある。

 魔石も使い切ると消えてしまうし精霊と似た様なものなのかな。


 作られた土台の上に砂で間取りを考え奴隷達の部屋が2つヴェロニカ嬢とメイドの部屋が1つづつ、洗い場とトイレが2つづつ、調理場も必要と考えると結構広くなるな。

 石炭を置く倉庫も必要だし平屋ではなかなか大きな建物になりそうだ。2階建てにして寝るのは2階にするしかないかな。

 水は魔法で貯めるにしても出来れば小川か井戸は探したい、トイレも今は汲み取り式にするしか無いが王都のような下水、浄化湖完備とまでは行かなくても堆肥を作る場所まで流れていって欲しい。

 そうだ、トイレもノームに作ってもらおう。陶器は無理でも石を自由に加工出来るなら木板を定期的に張り替え無くてもよくなる。

 流す水が用意しにくいから水洗式には出来ないけど磨いたら落ちるだけでも大分違うだろう。


 細かく指示を出しながらノームに頑張ってもらい地上2階建て地下室、屋上完備の建物が出来上がった。2階の床や屋根も石なので柱は多めにして10畳の部屋の真ん中にデカい柱が立ってたりするが安全のためには欠かせない。

 石では作れない窓や扉はネヴェア達が持ってきた木と鉄を使って制作魔法で作ったがこれカード化が出来るので使った俺にはカギが意味ない。

 どうなるか分からないのでいずれちゃんとした職人に作ってもらわないと駄目だろう。

 ダブルベッドを作り奴隷用の4人部屋、メイド用の部屋に配置しヴェロニカ嬢の部屋だけは部屋の中を区切り執務室と寝室の二部屋を繋げた。

 一応暖炉を食堂と執務室に作ったけどこの辺は雪は降っても積もることがないらしい。降っても年に1回あるか無いからしいのでそこまで寒くはならなそうだ。

 洗い場に繋がる水桶にドライアドのウォーターウォールで水をためてもらったがこれも誰かに覚えさせる必要がある。やはり奴隷にも魔素を貯めさせるか?

 一通り完成した所で荷物を運び込みヴェロニカ嬢の部屋とメイドの部屋、調理場を優先に家具を整えて行く。

 デザインは許してくれ…失敗するから何度も細かい意匠を考えるのは面倒なんだ。



「どうだろ、後は欲しい家具はあるかな?」


「そうですね、お嬢様のクローゼットは寝室の部屋一面でもよろしいかと。それと姿見があると嬉しいのですが。あとは調理器具はどこまであるのでしょう」


「クローゼットはドレスを考えると確かにこれじゃ小さいか。調理器具はフライパン、大小の鍋、鉄板、網はあるから後で持ってくるよ。

 姿見は鏡かぁ材料がないから今は作れないけど用意しよう。」



 野営をすることもあるので準備部屋の調理器具は鉄製、銅製で固めている。地球の物の方が使いやすいので買い足して来ればいいだろう。

 鏡は持ち込めるか分からないが最悪鉄か銀をノームに板にしてもらえば作れる。

 調理器具は一時的に準備部屋の物を持って来るつもりだがどちらにしても少し買い出しが必要だな。


 暗くなってきたし今日はここまでかな。魔物が入って来ないように壁を作ったり排水周りの水路を作りたいが明日でいいだろう。

 警備など後は任せて俺は地球で買い出しに行って来るとしよう。

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