84 49階層へ

 ダンジョン49階を進み最初に出会った敵はいきなり3体のレギオンだった。

 近づくと大量のゴーストを喚び出し行く手を塞いでくる、ドライアドがアースカノンを撃ち本体を狙うが大量のゴースト達を消し飛ばしながら進むが本体には当たらず通り抜けていった。

 ゴースト達が撃つ何発ものダークボールに当たり弾道がズレてしまった様に見える。

 俺が喚び出したリッチの放つダークカノンはゴーストに当たった瞬間周囲のゴーストを吸い込むように消し去ったが本体には届かずゴーストと一緒に消えていった。

 今までほぼ1撃で魔物をほふってきた中級魔法が大量の雑魚によって無力化されるというアクシデントに会い慌てて俺も戦闘に参加する。

 クロスボウの矢を出来るだけ数を減らすことを目的にゴーストに撃ち込み、最大5匹を同時に倒す事ができたが次々に呼び直されるゴーストによってなかなか数が減らない。

 トラッド達の撃つランス系よりサユキのダークハンマーの方が巻き込む数が多くより減らせているがボールではさすがに威力が足りないらしい。

 しかし前衛が大量のダークボールの雨を潜り抜けなんとか本体を攻撃するとすぐにゴーストの召喚が止まりなんとか倒すことが出来た。

 本体は思ったよりも弱かったようだけどさすがに50体を超えるゴーストを倒し続けるのは大変だった。

 前衛が近づいた後は武器を振り回すだけで半円状にゴーストが消え去るのであっという間に本体まで辿り着いた。

 トルネードを使えばすぐに一掃出来るだろうけどこの階は魔法の相性が悪いようだ。

 俺が撃っていた矢も役に立っていたと思いたいが魔法にぶつかり駄目になった物もあり拾うのも面倒なので効率は悪そうだ。次は本体を直接狙ってみるとしよう。


 1体で現れたレギオンは護衛が足りずにカノンで早々に倒され、2体からはアースカノンが通った穴に俺が矢を通すことで1体を倒すことが出来た。どうやら本当に本体は脆いらしい。

 倒し方さえ分かってしまえば3体来ても苦労する事は無く次々と倒して先へ進む。

 毎回走らせる前衛組には悪いが俺は自分が活躍している感じがあって少し嬉しい。

 4時間ほど歩き回ると階段を見つける事ができ準備部屋へと戻った。


 集めた霊石は一応エルジーに聞いてから使うため一旦、素材箱に入れておく事にする。

 上級ポーションの半分ぐらいは復活薬にしても良いと思うけど値段が数倍になるなら買えない人も多いだろう。

 出来ればある程度の怪我を治療できる中級ポーションで複数用意しておきたい所だ。


 ある意味伝説の薬である復活薬に未だに興奮してるネヴェアとフェリをサユキと共に鎮めると自分も眠りに就く。

 明日は朝に出発しても着くのは15時頃の長距離フライトだ、アーラの背中で寝ないようにしっかかりと睡眠を取らなくてはいけない。




 翌朝、フェリと共にアーラに乗り空へ飛び立つ。

 そろそろ領主に呼ばれるかもしれないので受け答えなどを勉強しようと思ったのだ。

 最初は空からの景色を怖がっていたが1時間もすると慣れ始め貴族の会話を教えてくれた。

 礼などの仕草は帰ってからになるが言ってはいけない言葉や敬称や話しかける順番など覚えていられるか不安だが美人家庭教師の授業だ精一杯勉強させてもらおう。


 予定通り日が落ち始める前にレオゲンに到着して冒険者ギルドに素材を買い取って貰いに行く。

 大量のウォータースネークやフロッグの皮の他、41階以降の素材。霊石も8個出して買取額を調べてみる。

 8個も出すのは今後も出しても不自然じゃ無い様に大量に手に入れる事ができたという示威行為のつもりだ。

 復活薬を売るなら何個もあることがどの道バレるからな、あとこれだけあれば王都で取り合いをしてあぶれた奴がこっちまで来ることもないだろう。



「おいおいまじかよ、とんでもねぇもん持ち込んできたな。こりゃうちじゃ買い取れねぇかも知れんからちっとギルマス呼んで来るわ。この石は一度仕舞っておいてくれ。

 おい!計算代わりにやっといてくれちっと上行ってくるわ。」



 そう言って買い取り所のおっさんは近くの職員に木札を押し付けると足早に奥へ去っていった。

 しばらくして計算も終わった頃おっさんが2人に増えて帰って来た。



「すまんがもう一度さっきの石を見せてもらえるか?」


「ええ、どうぞ。」



 差し出した霊石を受け取ることもなくそのまま眼鏡をかけて確認すると少し悩む素振りを見せた後部屋で話そうと言って石を再び仕舞うようにと言ってきた。

 買い取り所のおっさんを置いて後ろに付いて行くと2階の奥まった部屋に連れて行かれ鍵を開けて部屋に入った。



「まずは自己紹介と行こうか、この冒険者ギルドのマスターをやってるオズマンドだ。」


「森猫の影のリーダーをしているショートです。よろしくお願いします。」



 一緒に来ているメンバーを一通り紹介すると話が本題に入る。



「おう、話は聞いてるぜ色々と持って来るもんがやべぇ新人がいるってな。

 まあ今回がとびっきりやべぇが結論から言うと今買い取ることはできねぇ、買い取る金は多分問題ねぇが思ってるよりは額は小さくなるはずだ。

 最近お前さんの様な珍しい物を大量に持ってくる奴が増えててな相場が大きく変わってるんだ。

 お前さんの様にゲートってのを使う奴はこの国にはまだ数人しかいないが他国には何十人も王都に押し寄せて色々と問題が出た国もあるらしい。

 それであの石を何個も持って来たって事は今後も大量に持って来るんだろ?まだ霊石が大量に見つかったって話は他から来て無いが大損しないように王都に聞いてから買い取りたい。」



 今までは噂の域を出なかったのだろうがどうやら情報が集まり地球人達の存在が確定したのだろう。

 相場が崩れないようにしていたつもりの俺でさえこの世界の人から見れば大量に持って来ているのだ、気にしないで持って来る人が1人でもいれば同じ物を何百個も持って来てあっという間に価格が暴落するだろうな。



「分かりました、では霊石に関しては命も関わってきますし誰かがやらかして暴落するまでは必要分を注文してもらう形にしますか。

 安くなってしまうのは仕方ありませんね、ポーションの方の供給が間に合わないでしょうし価格に関してはそちらに任せます。」


「助かる、復活薬という性質上安くなり過ぎるのも困るんだよ。

 珍しいから諦めざるを得ないくらいにしておかないと見捨てる見捨てないの問題が出てくるだろうしな。

 今でさえ中級ヒールが使える連中は色々と言われることがあるってのに金持ってるだけで助ける助けないを始めると収拾がつかん。」


「あー感情論にはどうやっても勝てませんものね。となると薬屋でも売らないようにしないと駄目だな。」


「少なくとも店には並べないほうがいいな、金は無いけどその薬があれば生き返るんですとか言われても困るだろ。

 しばらくしたら広まって値段も下がっていくだろうが今やると国中から死体を担いだ奴等が集まって来かねんぞ。」


「分かりました不用意に口にしないように注意しておきます。」


「おう、2、3日したら価格も決まるだろうからよ。その時は頼むわ。」


「はい、ありがとうございます。」



 話し合いが終わり部屋を出て木札を換金するために階を降りて受付へと向かう。

 しかし危なかった中級ポーションの素材を集めて量産しようと思っていたがそう簡単な物ではないらしい。ゲームの復活アイテムくらいの感覚で量産するところだった。

 仲間のために作りはするが外に出さないように気をつけないとな。

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