85 新居紹介

 話し合いを挟んだおかげで帰宅ラッシュと重なってしまったようで長蛇の列となっている受付に並んで木札を換金する。

 計算ではこれでミスリル武器の支払い分の資金が出来るはずだが買取額が下がっているとなるとどうだろうか。

 日数にはまだ余裕があるとはいえもう一度依頼に出ないといけないかもな。



「お待たせしました。常設依頼と素材買い取り分合わせて金貨37枚、銀貨21枚、銅貨35枚になりますご確認ください。」


「はい、確認しました大丈夫です。」


「森猫の影の皆様は依頼回数が規定回数を越えましたので全員のランクが上がりますのでカードをお出しください。」



 事前に依頼の回数をこなせばランクが上がるとは聞かされていたので常設依頼を沢山報告できるように魔物を倒して来たのだが無事に全員のランクアップが出来た。

 湖付近は魔物の数が多くて移動が大変ではあるが今回は助かったな。



「更新が終了しました。今後のご活躍も期待しております。」



**********

ランク:プラチナ

名前:ショウト

パーティ:森猫の影

称号:精力絶倫

テイム:淫魔、シャドーキャット、セイントスカラベ、ワイバーン

賞罰:なし

**********

ランク:ゴールド

名前:クルス

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

**********

ランク:ゴールド

名前:ダリア

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

**********

ランク:プラチナ

名前:ネヴェア

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

**********

ランク:ゴールド

名前:フェリシティ

パーティ:森猫の影

称号:木精霊の加護

賞罰:なし

**********

ランク:ゴールド

名前:ジュリア

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

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ランク:シルバー

名前:エルジー

パーティ:森猫の影

称号:風精霊の加護

賞罰:なし

**********

ランク:シルバー

名前:ベル

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

**********

ランク:シルバー

名前:シエナ

パーティ:森猫の影

賞罰:なし

**********



「ありがとう頑張るよ。」



 カードを受け取って受付を離れ、ギルドの入口に向かって進む。



「まさかこんなに早くプラチナに成れるなんて思ってもいなかったよ。シルバーに上がるのですら何年もかかったはずなんだけどねぇ。」


「休みもせずに上のランクの素材ばっかり納品してるからなぁ。」


「それもあるしやっぱり運搬が楽なのが大きいね、荷物が一杯になるから遠出も出来なかったし。」


「討伐証明部位も地味に場所を取るし肉は重いしゲートがなかったらどっちを選ぶか悩む所だ。」


「あ、ショートさんお久しぶり~またでっかい爆弾投げたねぇ。」



 丁度ギルドに入ってきたのきねぇさんと凪紗さんに声を掛けられた。



「お久しぶりです。ショートさんのSNSすごい反響になってましたよ。」


「おひさです、それに関してなんですがまだ大っぴらに出来ないみたいなんです。」


「そうなんですか?ならこの後ちょっとお話しませんか?」


「良いですよ、ついでに家を買ったので場所案内します。会わせたい人もいますし。」


「それ!エルフ自慢するだけしてお預けなんてひどいですよショートさん!」


「では先に受付済ませてしまうので少し待っててください。行くよのきね。」


「は~い、ちゃんと待っててくださいね!」



 凪紗さんに引かれて行くのきねぇさんを見送って空いてる椅子に座って待っているとネヴェアの知り合いが何人か話しかけてきた。

 いくつか質問に答えながら談笑しゴールデンタイム故大分待たされたがのきねぇさん達が戻ってきたので話を打ち切って冒険者ギルドを出る。

 離れる時に嘆きと盛大なため息が聞こえて来たがまた変な噂が補強される気がする。



「すまん、2人に変な噂が付くかも知れん。」


「今更ですねぇ、私達最初からショートさんの愛人扱いでしたからね。ナンパかと思ったらショートさんの事を聞いてきた人もいるくらいですし。」


「あまり一緒にいないので捨てられたとか色々と言われてましたよ。」


「なんかすまん…」


「基本的に良くしてもらえているので大丈夫ですよ、しつこいナンパも周りが停めてくれますし。」


「迷惑になって無いならよかった。ここが新しく買った拠点兼薬屋予定の家だよ。」



 薬屋の裏口に周りベラに鍵を開けてもらい一通り部屋と人を紹介して応接室に向かう。



「エルジー、先にこの霊石を使って中級と上級の復活薬を作れないか?」


「えっと、作るのは直ぐにできますけど何で霊石がこんなに沢山あるんですか。」


「ダンジョンで新しく倒せるようになった敵が落とすんだよ。大量にあるから取り敢えず上級、中級を5個づつ欲しいんだけどどのくらいで出来るかな?」


「作るのは簡単なので本当にすぐ出来ますよ。ここで作りましょうか?」


「この2人は見られても大丈夫だからここで頼む。珍しい物だって聞いたけど作った事があるのか?」


「これでも王都で20年以上薬師をしていましたから。何個か扱ったことがありますよ、と言っても調合と言えるほどの物ではないんですが。」



 そう言ってマジックバッグから上級ポーションを5本取り出すとビーカーに移し霊石を5個投入する。

 霊石が溶けて消え去ったビーカーの中身をガラスの棒でかき混ぜてから漏斗ろうとを使って瓶に戻すとコルクで封をし直してから差し出してくる。



「本当にこれだけで完成なので薬師は必要無いんですが皆さんより効果がある方が安心だとか言って薬師に持ち込んでくるんですよね。」


「確かに上級復活薬になってるな。2人はマジックバッグはもう買ったよね?」


「ええ、殆ど財布にしか使ってないけど2人共買ってあるわ。」


「なら上級と中級1本づつ貰っていって、持っていることがバレると面倒なことになるらしいけど使う分には問題無いから遠慮なく使っちゃって。」


「え~これ高いんじゃないの?確かに死にたくはないけどタダで貰うには重たくない?」


「中級ポーションは銀貨数十枚だから私達でも払えますけど上級ってこっちだといくらするんですか?地球だと確か一千万円でしたっけ。」


「こっちだと昔は白金貨5枚とか10枚とかしたらしいですけどダンジョンで大量に手に入る様になったんで上級ポーション代の白金貨1枚くらいが価値ですかね。」


「いやいや高すぎでしょう。なに私達を買いたいの?」


「いえ、知り合いに死んで欲しく無いのと勧誘の一貫です。近々鉱山か村をもらうかも知れないんで良かったら手伝ってくれないかなと思いまして。」


「え、ショートさん貴族になるの?」


「まだ分からないんだけど最近ワイバーンで飛び回ってたら鉱脈を2つ見つけちゃいまして、まだ1個目の報奨も貰ってないのに2個目の鉱脈を見つけちゃったんだよねぇ。」


「この街の領主って男爵様でしたっけ。男爵ってそんなに爵位高くないですよね?いくらくらい国から貰っているんでしょう。」


「どうだろう何億か貰ってるとしても使用人とか騎士団とかの維持費に使うだろうしあんまり残らないんじゃないかなぁ。」


「中世だと社交にお金かかりすぎて借金で領地運営してたとかも聞きますよね。」


「上級ポーションの値段が白金貨1枚と考えると白金貨10枚も国から貰っているとは思えないんだよね。

 フェリと話してみたけどこういう時は金と領地を渡して運営に金を使わせるんだって言ってた。」


「なるほど、それで村ですか。」


「そうそう、村なんだ。」


「でも手伝うと言っても畑仕事なんてやったことありませんよ?」


「やってみたいならそれもやっていいけどどっちかと言うと物資の輸送とか頼みたいんだよ。

 買ってきて欲しい物を連絡して買ってきてもらったり街に売りに行って欲しい物を売ってきてもらったりとかを頼みたいんだ。」


「なるほど、準備部屋があれば馬車の1台や2台分は余裕で運べますしね。」


「部屋を広げたり馬かワイバーンを手に入れる必要があるかも知れないけど動ける人がいると便利だと思うんだよね。」


「ワイバーン!いいですよね私も空の旅してみたいなぁ!」


「私は高いところは少し苦手ですね…落ちそうになったりとかしないんですか?」


「今のところは落ちそうになったことは無いなぁ、急降下とかしても結構安定してるよ。まあ最初の羽ばたいて上がっていく時は上下するけど。

 そういえば2人はテイムスキルは持ってるの?」


「ええ、二人共シャドーキャットを連れてますよ。護衛は必要ですから。」


「いつでもどこでも連れて歩けるとかペット飼えなかった猫好きにはたまらないよね~」


「じゃあワイバーンをテイムするのは問題無さそうか、本当に貰ったら連絡するから考えておいてくれないかな。

 もちろん安いけど依頼料は出すし何れは村に家も作れると思う。」


「良いですね拠点!街に家が欲しいとは思ってたんですけど依頼で外にいる時間の方が多いしどうしようかな~とは思ってたんですよね。」


「依頼で行く場所も遠いですしね。その予定の場所の近くってモンスターは何が出るんです?」


「そうだね山だから移動は大変だけど近くに出るロックスパイダーが稼げるらしいよ。」


「げ、蜘蛛ですか。大きいんですか?」


「足無しで1mちょっとかな。糸が高く売れるんだって。」


「蜘蛛はちょっと苦手ですねぇあんまり戦いたくは無いかも。」


「でもスパイダーシルクですよ?自分で布まで作ったら高級品で衣装作り放題ですよ。染めないといけませんけど。」


「それ良い!スタッフ雇って布から服まで作ってもらえば型紙作れば服が作り放題に!」


「作った服を売る店もいずれは街で開けるかも知れませんね。」


「地球のコスプレ衣装広めちゃうか~良いですよ、魔素を貯めないといけないのでしばらくかかりますし向こうでの仕事もあるのですぐには出来ないかも知れませんけどそれでいいなら。」


「もちろんです、まだ貰ってもいませんし人を集めないと村も作れないから1月以上先になると思います。」


「なら大丈夫ですね。」



 その後も雑談を重ねた後夕飯を一緒に食べ、客間を貸して今日は泊まってもらった。

 まあベッドはあるが多分寝るのは準備部屋か地球の自宅だろうけど道端の物陰で準備部屋に入るのはこの世界の住人というロールプレイ的に微妙な気分になるんだよな。

 宿を取ってもいいけど部屋の人が突然いなくなるのでどうなんだろうと思って利用するのをためらっていた。

 今は拠点ができて問題は無くなったのでベラと2人には自由に客間を使っていいと言っておいた、2人が気にしない人だったとしても伝言とか何かしらには使えるだろう。

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