82 東の山登山
全員の治療が終わると攻略を再開して通路を進み、出会い頭にカノンを撃ち込んで弱らせたフロストベルグに止めを刺していく。
大きさゆえか羽毛のクッション性能が高いのかアースカノン1発では倒しきれず重症を負ってもこちらを睨みつけてくる相手を容赦なく切り捨てて、先へ進んでいくリリ達付いて歩き4時間ほどの探索で階段を見つけることが出来た。
3匹で出現しても支援魔法が上手く相手のスキルを中和出来たようで攻撃を受けること無く倒しきった。
さすがに凍傷はどうにもならないようで毎回体を温める休憩を取る必要があったがなんとかなってよかった。
少し遅めの夕食を食べてもまだ夜更けには早かったので少し追加で倒しに行ってさらに時間を潰す。
日付が変わる頃にゲートから出るとすでにドライアドが顔を出していた。
「来たわね、もう蜜を採取しても大丈夫よ。」
「待っててくれたのか?ありがとう早速採らせてもらうよ。」
採取をクルス達に頼みドライアドと話しながら終わるのを待つ。
今日は疲れただろうからもう寝ていいと言ったのだが大きなあくびをし目をこすりながらもネヴェアとフェリも手伝ってくれた。
ついて行っていただけの俺ですら度重なるフロストベルグの威圧で疲れているので戦っていた2人なんてもっと疲れているはずなんだけどな。
「採取が終わったら街へ帰るの?」
「いや、明日はこのまま東の山を登ってみようと思ってるよ。」
「そう、気を付けるのよ。あっちには大きな魔物がたまにいるみたいだから。」
「大きな魔物?」
「ええ、正体は知らないけどたまに木がなぎ倒される音が聞こえてくるもの。」
何がいるのか分からないけどこの辺にいるのはハンマー系の魔法すら使えない魔物達だ、いきなりランスやカノンを使う魔物が出て来ることは無いだろう。
山だからサンドワームでは無いだろうがカッター系の魔法が使える魔物でもいるのだろう。
「ありがとう気をつけて行ってくるよ。」
「何をしに行くのか知らないけどわざわざ危険な所に行くなんてやっぱり人間って分からないわ。」
そりゃあ分からないだろう、なんせ行く意味など無くゲームのマップを埋める感覚で近場の散策をしているだけなのだ。
この世界の人間ですらそこに謎があるからなんて理由で危険地帯に行く奴はいやしないだろう。たぶん。
さすがに山を越えるつもりは無いが地図ではあの山の向こう側に大きな湖があるらしいので山頂まで行って景色を見てみたいと思っている。
幸い山もそこまで高くなく半日あれば登れそうに見える。後は登るための道が続いているかだが身体能力が上がった今なら多少の高さや幅はどうにでもなるだろう。ゴーレムを梯子代わりにすれば5m以上の崖も簡単に登れる。
一晩眠り朝出発する前にドライアドに分かれを告げると東に向かって森を歩き出す。
ドライアドが言っていたようにたまにオークを見かけるくらいで沼地にいた魔物達が襲って来る。
巣を見つけることも無く道に傾斜が付き始めるが未だにウォーターフロッグが出てくるのは水場が多いのだろうか。
登っていくと木々の中にへし折られた物が散見され始めた。折られた上半分は周囲に落ちていない事から何処かに運んでいった存在がいるらしい。
属性が変わってきたのか鹿や鳥などの魔物が増え、ゴブリンをよく見かけるようになってきた。
さらに奥へと分け入っていくと大きな音を鳴らしながら20匹ほどのゴブリンを連れてトロールが出てきた。
まぁ何となく予想はしていた、水属性が強くてゴブリンやオークなどの亜人が多く折った木を何かに使う為に持ち帰る。
もちろん木を食べたりする生き物もいるだろうが俺がトロールと聞いてまず思い浮かべる姿は丸太を棍棒の様に振り回している巨人だ。
ゴブリン達が道を開けると大声を上げ丸太を振り回してトロールが走ってくる。
大きな足音を慣らし当たった枝葉を散らしながら近づいて来る太った巨人はドライアドのアースカノンで頭を吹き飛ばされて吹き飛ばされるように倒れた。
解体をするために傷が少なくなるように倒してくれたのだろうが完全に出落ちだった。ゴブリン達もクルス達に倒されフォレコに追われて逃げることも出来ずに全滅した。
トロールがゴブリンの護衛になっている事があると聞いてはいたが一体何を対価に雇っているんだろう。
トロールの巨体を考えると結構な量の食事が必要なはずだけどゴブリンはそんなに狩りが得意なんだろうか?
鹿や大蛙など食料には困らなそうだけどトロールを雇わないといけないような魔物はまだ見ていないし他にも強い魔物が未だいるのかも知れない。
気になるとしたらウルフやフォレストキャットの様な肉食獣を全く見かけない事くらいかな。
トロールの巨体をゴーレムに持ってもらい何とか皮だけでも剥ぎ取ると再び山を登り始める。
出来るだけ緩やかな道をフォレコに探してもらっているがそれでも傾斜がきつくなってきた。
昼を過ぎ、3時を過ぎる頃にやっと山頂が見え始め峰まで登り山の向こう側を見渡す事が出来た。
遠くに見える大きな湖が光を反射して輝いて見え、まばらに生える木々の隙間には生き物がいる気がする。
その時空から急降下した物体が湖から蛇のように細長い生き物を捕獲してそのまま飛び去っていった。
遠すぎてろくに見えないが鳥ではなくワイバーンの様に見えた。
望遠鏡が欲しい所だが生憎と持っていない、結構古くからあるらしいし木製の物ならこっちに持ってこれるだろうか?
売っている可能性もあるがレオゲンの雑貨屋では見かけなかったな。装飾品屋か眼鏡屋辺りなら売っているだろうか?
とりあえず以前使った余りのガラス板とトレントの枝を使い製作魔法で作ってみる。
望遠鏡で見ると空にはワイバーンが何匹か滞空しているのが見え、湖にはカニやクマのなどの魔物が見える。小さいものを合わせればかなりの種類の魔物がいるようだ。
あの数と戦いながら空中からの攻撃を警戒しないといけないんじゃあの辺に行くのは無しだなぁ。ワイバーンの皮は欲しいけど自由に飛んでいる空飛ぶ魔物と戦うのは危険が大きい。
交代で望遠鏡を使いしばらく景色を楽しんでいるとネヴェアが警戒した声を上げた。
「旦那ワイバーンが全員こっちを見ている気がするここまで来るかも知れない。」
望遠鏡を受け取り確認すると確かに何匹かこちらを見ているのが確認できた。もしかしたらレンズの反射で興味を引いてしまったのかも知れない。
望遠鏡を仕舞いワイバーンが見えなくなる所まで山を降りるとしばらく待ってからもう一度確認する。
もし興味を引いてこちら側まで来てしまったら辺境の村が危ないからな、ここでなんとか倒しきらないといけない。
鳥ですら何十キロも縄張りを持つというから警戒していたがすぐに興味を無くしたようでこちらに向かっているワイバーンは確認できなかった。
また興味を引いてしまうと悪いので望遠鏡はここまでにして山を降り始める。
もしかしたら水竜やシーサーペントの様な見たことの無い様な大きな魔物が見えれるかと期待していたが残念ながら見覚えのある魔物ばかりだったな。
景色も良かったがどうしても生き物の方に興味が惹かれてしまった。
明日からは山を北へ向かい石炭を探すつもりだ、鉄鉱石が見つかったのに石炭が無いとあっという間に周りの木を切り尽くしそうだからな。もしかしたら魔法である程度なんとかなるのかも知れないけど調査の時に探してくれと言われた以上必要なはずだ。
日が傾き始めたら早めに準備部屋にひっこみ今日の探索を終えることにした。
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