81 48階層へ
サンダーバードが落とす物を羽から爪に変更し、敵を一瞬痺れさせる効果を追加しました。
71話を2行ほど変更しましたが読み返す必要はありません。
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疲れを癒やすために早く寝るつもりだったのだが1日お預けをされていたサユキによる新人歓迎が開かれ眠れたのは結局日付が変わってからだった。
重い目蓋をこすりながら起き上がり朝食を食べ、月光の花の蜜を採取しに行くために北門を出てアーラに乗って空に飛び立ち東の花畑を目指す。
そういえば食料を運んでいた商人が襲われた辺境の村は大丈夫だろうか。追加で物資が送られたとは思うがどうなったのかまったく噂を聞かない。
花畑から山に向かう時に少し村側を見て回ろうかな、せめて魔物はなんとかしてあげたい。ゴブリン達が木を倒して村を作っていてくれれば分かりやすいが洞窟に住んでいたら空から探せないからお手上げだけど。
空から見ていると森の所々に切り開かれた場所がありオークやゴブリンが住んでいるのが見える。
オークは資源なので減りすぎると困るだろうしゴブリンは減らしすぎるとオークの食料が増えて繁殖しすぎるかも知れない。場所だけメモしておいて後は冒険者ギルドに丸投げでいいだろう。
ゴブリンの村ならシルバーの冒険者で対処できるし村から近くなければ大丈夫だろう。
西の花畑と同じく空から場所が確認できなかったので近くの開けた場所に降りてもらう。
あいにくと沼地の上だったがアーラに乗ったまま移動して沼地を抜ける。
大量にいたウォーターフロッグもワイバーンの姿を見て逃げ出し隠れてやり過ごそうとしたウォーターフロッグの1匹はアーラのおやつにされてしまった。
ウォータースネークもさすがにワイバーンに挑むほど命知らずでは無い様で視界に入っても静かに去っていった。
地面が固くなり俺でも歩けるようになると背中から降りてゲートを開きフォレコ達と交代でアーラには休んでもらい花畑の方向へ森の中を歩いていく。
ワイバーンがいたせいか魔物に出会うこともなく、静かな森の中を進んで前と変わらぬ姿の花畑へたどり着きドライアドが宿っていた木の前まで行って話しかける。
「ドライアドいるかー?また蜜を採取させてもらいたいんだが。」
「いらっしゃいまた来たのね蜜なら自由に採っていくといいわ。魔石はまた期待してもいいのかしら?」
「ありがとう、もちろん魔石はちゃんと用意してあるよ。」
以前より魔力を込めた魔石を渡そうと取り出すと西のドライアドが出てきて声をかけてくる。
「蜜をもらうだけでその魔石はあげすぎじゃない?その半分でも多いわよ。」
「あら、こっちでドライアドに会うなんて初めてね。始めましてかしら?」
「西の湖の近くにいたドライアドよ始めまして、といっても植物を通しては話したことがあるけど。」
「西にいたドライアドがなぜここに?この間話した時はまだしばらくはあそこにいると言っていなかったかしら。」
「ショートから魔石をもらえたし持ち直せると思ったんだけど人間が魔物を引き連れてきたあげく花畑で暴れてね、ダメそうだからそこにいるフェリと契約して逃げて来たの。」
そういうと東のドライアドがじっとこちらを見て来る。
「いや俺じゃないぞ俺が行った時にはもう半壊してたから。」
「そうね、一応魔石を貰って傷ついた子達は癒せたけど精霊を攻撃してくる様な人間が来るようになったら駄目そうだから逃げてきちゃった。」
「あそこに人が集落を作り出してから20年くらいかしら今回は早かったわね。」
「私がいた場所は強い魔物が水辺から出てこなかったから来る人間のレベルも低くて数が多すぎたわねぇ。
弱いけど魔物の数は多いから逃げてくることも多いしあっという間だったわ。」
「うちの所は村は出来たらしいけどウォータースネークやオークなんかが歩き回ってるからまだしばらくは大丈夫そうね、場所は知られてるから時間の問題だろうけど。
まぁそれもあって出来れば準備をしておきたくて魔石が欲しいのよね。」
「魔石は渡すために用意したものだからいいけど花を2輪もらえないかな?ドライアドがいるから育ててみたいんだ。」
「そこのドライアドは光属性持ちでしょ、育てるのは無理だと思うわよ?」
「ドライアドが宿ってる木が闇属性なんだ、だからその近くなら育つんじゃないかと思って。」
ドライアドが陽光の花を育てる時出来るだけローレルと離れたところで育てたいと言い出したので今は広げた畑の端と端にローレルと陽光の花を植えている。
ならローレルの近くでなら月光の花を育てられるんじゃないかと思いついたので試してみたかったんだ。
「なんで闇属性の木に光属性持ちのドライアドが宿れているのかも分からないけど属性が合っているのなら育つと思うわ。本来は精霊の力が無くても植物は勝手に育つ物だものね。」
「そうね闇属性の木が育つ環境がすでにあるんだもの大丈夫だと思うわ。」
「ただ試すのなら花を移すのじゃなくて種をあげるわ、折角綺麗に咲いている子を萎れさせるのは可愛そうだもの。」
「ありがとう大切に育てるよ。」
「任せておきなさい、私がいる以上枯らすなんてことは絶対させないから。」
魔石と種を交換し畑に植える。2輪から増やすつもりだったが種を10粒もらえたので上手く育てることが出来ればこちらがもらい過ぎなくらいの取引だろう。
本来の目的である蜜の採取は夜中まで時間を潰さなくてはいけない、久しぶりにダンジョンの攻略をしようかな。
念話で皆を集め、貯まっていた魔素でクルスに盾術を覚えさせてから48階へと足を踏み入れる。
「48階のモンスターはフロストベルグという大鷲だ。
使ってくる魔法はアイスカッター。当たると体の表面を凍らせられるから非常に危険だ。
避けるか盾で防ぐかとにかく食らわないようにな。
大きすぎてダンジョン内ではろくに飛べないから嘴と爪、翼による突風による攻撃を主体で戦ってくる。あと混乱の魔眼を持っているから注意する様に。」
そう、このフロストベルグ翼を広げると10m位ある大きな鳥でダンジョンは狭すぎて飛び上がれない。
鷹の様に風を受けて滞空しようにもダンジョンに風が吹いていないので得意の急降下も出来ないというダンジョンに特技を封じられた可哀想なモンスターの一匹だ。
それでも魔法は強力で受けると肌が裂けたり凍傷になったりして長時間の狩りを難しくしてくる。
この階を攻略するために雪山に飛ばされた人を習い氷の魔石を使ったブレスレットとフレイムフォックスの毛皮のマントを全員分作り準備して来た。
この装備なら雪山で吹雪になっても大丈夫らしいので安心して良いだろう。
少なくとも凍った場所にマントを当てれば溶かすことが出来る。
通路を進んでいくと徐々に肌寒さを感じ始める、見つけた1匹のフロストベルグに近づくほど寒さは強くなり暑く感じた背中のマントが温かく感じる様になった。
使って来たアイスカッターの魔法をクルスが盾で受け止めその背から飛び出したゴブリン達がフロストベルグに傷を負わせる。
分厚い羽毛に覆われているせいか傷は浅く血が付いた武器には霜が降りている。
しかし突き刺さった魔法の傷は深く特にフレイムランスは周囲の羽を焼き焦がし大きな傷を作り出した。
フロストベルグが羽ばたき突風で近くにいたゴブリン達を吹き飛ばすと大きな鳴き声を上げ俺の体が重くなり恐怖に足が震えだす。
安全な距離を取っていたはずのフロストベルグが突然目の前に現れ嘴を開き俺を飲み込もうと迫って来るのを見て慌てて無理やり重い体を動かし地面を転がって攻撃から逃れる。
床に寝転がっている俺の肩をサユキに強く叩かれあまりの強さに文句を言おうと顔を上げると近くにいたフロストベルグの姿が遠くなっていた。
「魔眼の射程距離がフローティングアイより広いみたい!絶対に顔を見ないようにして!」
サユキは大声で状況説明しながら続けて床に転がって悲鳴を上げているフェリの混乱も解きに向かった。
前線を見ると俺のように床に転がっている者はいないが明らかに動きが遅い者がおり躱すことが出来ずに武器で攻撃をガードしている光景が目立つ。
状態異常に強いゴーレムですらただでさえ遅い動きを更に遅くして殴りかかって体の動きで受け流される。そもそも腰から下の速度が出ていないせいで威力が出ていないように見える。
足を切り裂き首を貫かれ徐々に弱らせる事で倒すことは出来たが火力不足は否めない。特に鈍足を受けて動きが遅くなるせいで攻撃機会が減り相手の攻撃を増やす結果になっているので1匹だからと出し惜しみしても悪い結果にしか繋がらなかった。
思ったよりも状態異常の効果が強力で怪我に繋がりかねないのでカノンで速攻を決めるべきだろう。
動きが遅くなる対策にファイヤーモンキーのアジリティアップの様な支援魔法も欲しくなってくる。
覚えさせるなら常に掛けるために魔力の多いメンバーがいいだろう、ダークハンマーも火力不足になってきたしダンジョンに潜る時間も多いインキュに覚えてもらおうかな。
支援魔法の有効距離が分からないしファイヤーモンキーはそこまで離れた場所で踊ってはいなかったので距離が短いの魔法の可能性がある。
残っていた魔素でインキュにアジリティアップを覚えてもらい、凍ってしまった部分をマントで包み込んでゆっくりと溶かしていく。
武器を持つ手が霜焼けになっていた近接組の手などの怪我をヒールで癒やしながら休憩を取って作戦を練り直す。
回復したMPで死霊魔法を使い新しく呼べるようになったリッチを喚び出した。
魔力の最大値を1250も使い呼び出すこの魔物はダークカノンの魔法を使える強力な魔物だ、精霊のように魔石の魔力を使って撃ち放題とはいかないが一発で戦況を変える存在が増えるのは大きな変化だろう。
ダークカノンは当たった時の威力は他の属性より低いが吸収する生命力を合わせると威力が他より高くなるらしい。
ドライアドとリッチがいれば敵が3体で来ても対処できるだろう。
残る1体はまたガチンコで戦うことになるが支援魔法が増えたのでそこまで苦労することは無いと思う。
ドロップするフロストベルグの爪は巨体に見合ったサイズがあり片手剣や槍に使える。
傷口を凍らせるので出血が狙えないのが一長一短ではあるが体温低下による弱体が狙えるのでモンスターの種類によっては高い効果を狙えるだろう。
体温を下げて動きを鈍くするだけじゃなく火属性の魔物の中には温度の高い魔物もいるだろうから役に立つ時が来るはずなので槍を何本か作っておくのがいいと思う。
この階で素材を集めるのは大変だけど少し多めに欲しい所だ。
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