79 精霊の約束
数時間の空の旅を終え、昔の武勇伝や苦労話も聞き飽きるほどに聞いてエドワードさんと呼べるくらいには仲も良くなった。
鉱脈の場所が分かりやすいように多少木を切って広場を作っておいたので空からも見つけやすく迷うこと無くアーラも着陸する事が出来た。
付いた場所でゲートを開くとネヴェア達と共にホムンクルス達も出てきた事にエドワードさんが驚いていた。
「なるほどこれが凄まじい速度でランクを上げていった理由の一つか。」
「ええ、この中に魔物は入れませんからこの中で寝れば野営をしなくてもいいので寝不足で森の中を歩かなくて済みます。
怪我をしても怪我人を中に入れて治療をしながら移動も可能ですから他のパーティよりもより遠くまで行けます。
当然荷物も入りますから十分な食料や素材も持ち運べますしね。」
「便利だけに恐ろしい性能だな、お主は大丈夫だろうが犯罪にいくらでも使えそうでもある。」
「一応特殊な精霊のスキルなので犯罪に使用すると二度と使う事ができなくなってしまいます。
盗みを働けばゲートを通ることはできませんし暗殺には1度だけ使えるかも知れませんが逃げる事には使えません。それにこれを失ってでも殺すなら暗殺依頼じゃ割に合いませんね。」
「確かに白金貨数枚積まれた程度じゃ全く足りんな、じゃが戦争はどうだ?兵士の十数人や物資が運べるだけでも大分違うと思うが。」
「物資は商人としてなら可能かも知れませんが兵士は無理ですね、このゲートを通れるのは俺の所有物になった者だけなので親兄弟であろうと入ることが出来ません。
戦争の参加がどう判定されるかも分からないので正直リスクが大きいですね。」
「輸送中に敵に見つかって物資をぶちまけたのでは馬車と変わらんか。
それでもワイバーンの速度で物資を運べるのなら雇う価値はあるがお主を戦争に雇うとなると白金貨は必要になりそうだの。」
「上級ポーションが作れるようになったので白金貨数枚じゃレオゲンの防衛戦ならともかく外征は参加しないでしょうね。」
「なるほど1月外征に出るよりも薬の材料を取ってきたほうが稼げるのか、立派な大商人の仲間入りだのう。」
「変則的なので商人と言えるかは分かりませんけど上手く店が回ってくれればと思っています。」
いつかは犯罪に使える事が問題にされるだろうとは思っていたが街の権力者に詳しく話せるのはいい機会だった、この世界では精霊との約束を破ると呪われるどころか普通に命を落とすので信用度がとても高い。
精霊との約束や契約を詐称するのも悪質だと罰則があるらしく安易に嘘を付く者もいない、俺の場合は「精霊と」という所以外は本当なので見逃されるとシルフに相談した時に言っていた。
これが「精霊と」の他に一箇所でも嘘を入れると段階的に体調不良などが問題を解決するまで続く事になるらしい。
ひどくなるとエルジーの様に不運に見舞われたり命を失うような事故にあったりすることになる。
嘘を聞いた人全員に嘘だったと伝えないといけないので酒場で酔った勢いで大声で言ったりすると一生苦しむことになりかねないので精霊関連で嘘を付く人は基本的にいないらしい。
なので俺が軽いつもりで言ったドライアドへまた来ると言ったり、精霊との約束で約束で森を切り開いて道を切り開く事ができないと言ったりしたのはかなり危なかったらしい。
月光の花はまた行くからいいとして森を切り開く事ができないという嘘は不味かったのでドライアドに俺自身は森を切り開いて道を作らないと約束することで後付で解決した。
この約束なら俺じゃなければ切り開いてもいいし、道じゃなければ木を切っても問題無い。
今日の寝床であるテントを立てるために鉱脈の周辺の地面に落ちている石をどけて平らにする。
殆ど斜面になってる場所しか無いのでドライアドとゴーレムに手伝ってもらって平らな場所を広げてもらった。
「精霊様にゴーレムなんてのが普通に出てくるしまだまだ秘密はありそうだなぁ。」
「そりゃまぁ手札をすべて晒すことはありませんよ。」
「精霊様だってめったに見れるものじゃ無いというのにこうも普通に会話まで出来るとは。」
「俺この街に来てから1月くらいで3体に会ってるんですけどそんなに珍しいんですか?」
「精霊と契約しているエルフは結構街にも来るが精霊は姿を隠しているし目にしたことが無い奴も結構いると思うぞ。」
「そりゃそうよ精霊や住処を攻撃して来る人間が多すぎるのよね、だから近くに街が出来ると精霊は離れるし街では姿を隠しているのよ。」
そう言ってドライアドが会話に入ってきた。
隠れている精霊は別にして会えないんじゃなくている場所に行く人が少ないという事か、俺は森の奥まで行くから会えてるだけなんだな。
「それで広さはこんなものでいいの?もう少しくらいなら広く出来るけど。」
「ならギリギリまで広くしてくれるか?採掘が始まると鉱夫が寝る建物とかも建てるだろうし。」
「おお、それは助かる。整地作業が短縮できれば採掘までの予算が減らせるからな。」
「良いけど木は退かさないからね、どうせ全部切り倒すのでしょうけどそれくらい苦労したら良いわ!」
「うむ、木の精霊様に木を切り倒してくれなど頼む訳が無い。出来るところまでで大丈夫ですぞ。」
「全部切ったら土砂崩れが起きるじゃないか、それくらいの土木知識はこっちにはないのか?」
「無いのよね~切ったら切りっぱなしで植林することもないし自分達で住めなくしておいて精霊の怒りだ~とか言ってた街もあったらしいわね。」
「ふむ、土砂崩れは精霊様の怒りではないのか?」
「簡単に言うと土砂崩れは今まで木が押さえていた地面や水を木が無くなった事で起きやすくなる災害です。
原因はそれだけではないですがこの広場から下の木を切ると広場が崩れやすくなるということは覚えておいてください。」
「精霊の怒りを買ったらそれだけじゃ済まないわよ。下手したら街が更地になるだけじゃなくて一ヶ月は近づくことも出来ないでしょうね。
土砂崩れで飲み込まれる村や街もあるけどあんなものじゃないわ。まぁ精霊も消えちゃうからそこまで怒る事もそうそう無いでしょうけどね。」
「覚えておきます。ご当主様と担当者にも伝えておかねばなりませぬな。」
セオの街に行った時に街の周りに切り株が残されていたが考え無しに切っていたのではなくあれがこの世界の普通だったんだな。
畑にしたり植林している所ももちろんあるんだろうが周りに木が残っていた街も周辺の村や街から買っているだけなのかも知れない。
「夜番をした者は明日の昼間寝てもらうので心配しないで良いのでエドワードさんも夜番は無しで寝て下さい。
明日は俺も今日よりは早く起きるので早起きする分にはいいですが空の上で居眠りするのは危ないのでちゃんと寝てくださいね。」
「分かった従おう。今日はわしも朝が早かったのでな夕飯が終わったら寝させてもらうとするよ。」
ドライアドが広げた広場をゴーレムが踏み固め平らにした上にテントを2つ張り片方の近くにゲートを開き直す。
寝ず番はホムンクルス達とネヴェアに交代でしてもらい俺は準備部屋で寝させてもらう。
フェリはそもそも起きていられるのか分からないし警戒も出来ないので人選外だ、シャドーキャットであるシドーは外の影にいてもらうがフォレコ達はテイム登録をしておらず見られたくないので準備部屋で寝てもらう。
夕飯は簡易かまどで焼いた襲ってきた魔物の串焼きと街で買ってきた硬い白パンと干し肉だ。
昼にも食べたがフランスパンよりも固くスープ無しに食べるのが大変だった。
今回は火が起こせるので肉と塩と乾燥野菜のスープを作れたので浸して美味しく食べる時が出来た。
黒パンの4倍も値段はしたが硬いだけで味は小麦のパンだったのでこれなら俺でも食べられる。
スープも美味しく作れたしこれからは野営をしても食事に憂鬱になることもないな。
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