76 鉱脈

 翌日は貯まった魔素で畑を拡張してからまた山を南に移動していく。

 調べてみた結果赤茶けた石や縞模様に注意しろということくらいしか分からなかった。一応クルスに写真で見た目などを覚えてもらったがそもそもミスリルなど地球に存在しない物もあるので意味があるのか…

 丸く半分以上を山脈に囲まれている地図を見るに巨大火山が爆発したのかプレートがぶつかったのかはたまた隕石でも落ちて出来たのかすら分からないので結局歩き回るしか無いという結果に終わった。


 この日は丸一日歩いても鉱石は見つからず見たことの無い魔物を発見するだけで終わった。

 背中に石がついたアルマジロや砂塵をまとって走る鳥、ウインドバットなど知っている魔物もいたが徐々に敵も強くなっている気がする。

 水属性の魔物が出てこなくなって地属性が強くなってきたようだ、その代わりに風属性も増えているのである意味変わりがないんだけど。

 地属性だけが強くなれば鉱石があるんじゃないかと思ったんだけどそう上手くは行かないな。




 次の日も相変わらず山を歩き回っていると明らかに金属を含んだ石を背に付けた大きな亀が歩いていた。

 銀色の甲羅を背負い地面に落ちている物を食べている。

 よく見ると赤茶けたココアパウダーをまぶした様な石を丸呑みにし無くなると壁に体当たりをして壁を崩している。

 見つからないように一度場を離れてネヴェアに相談をする。



「ネヴェア、あの亀はどのくらい強いんだ?」


「攻撃はアースハンマーが使えるくらいだけど甲羅は金属だから武器じゃ壊せない、けどこのパーティなら魔法撃ち込んで終わりじゃないかね。

 幸いドライアドもいるし一発ぶち込んでやればいいんじゃないかい?」


「確かに足は早そうに見えないし普通に魔法で倒せるか。

 よし、ドライアドのアースカノンの後様子を見ながら全員で魔法を撃ち込もう。」



 フェリにドライアドに指示を出してくれるように頼み、他のメンバーも魔法が撃てるように扇状に広がる。



「まったく、結局山に入ってるしこんな事までさせられるなんて、行くわよアースカノン!」



 撃ち出された石弾が3mはあるアイアンタートルにぶつかると甲羅と一緒に粉々になって吹き飛んだ。

 中にあったの体がさらされ驚いたアイアンタートルが首と足を縮めて隠れようとするがすでに甲羅が半分近く無くなってしまっている。

 そこへ第二波の魔法が打ち込まれてアイアンタートルは動かなくなった。

 あっさりと倒せたがまだ生きている可能性もあるので首にもう一度ウォーターランスを撃ち込んでもらってからゆっくりと近づく。

 全身から血を流して動かなくなったアイアンタートルをミスリルの剣を渡したジュリアに首を切り落としてもらい安全を確保してから散らばった甲羅と鉱石を集める。

 ミスリルのツルハシを持ったクルスに大きな塊を砕いてもらい赤くなっている岩壁を少し掘ってもらい準備部屋に入れていく。

 ちなみにミスリルの槍はダリアに渡され、ナイフも解体する事が多いダリアが持っている。

 集めた鉱石と甲羅で準備部屋に山を作る、中身が無いとはいえ甲羅だけで2mくらいあったので結構な量がある。

 鉱石は20個くらい持って帰れば十分かな?割ってみると鈍い銀色をしており簡易鑑定では鉄鉱石と表示されたので間違いないだろうが鉄の比率までは分からないので使い物になるといいな。



 全員準備部屋に戻ってもらいアーラとダリアと共に飛び立つと周囲の目印になりそうな物を地図に書き込んで出来るだけ正確な位置を分かりやすくしていく。

 この周辺には強い飛行型の魔物がいないことは分かったけど山の向こう側は分からないので出来るだけ低くゆっくり飛んでもらっているけど当たり前だが風で非常に書きにくい。

 一応持ち込めた地図を押さえられる画板や鉛筆を使ってはいるが限界がある。

 ダリアに背中から押さえてもらっているとはいえ両手を離していると少し怖さもある。

 地図への書き込みを終えてそのままレオゲンの街へ帰るための帰途についた。




 4時間ほどの空の旅で街に到着し冒険者ギルドへと報告に向かう。

 冒険者ギルドに入るとサブマスターのヘイディさんがいたので以前のお礼のついでに話しかける。



「お久しぶりですヘイディさん、この間はありがとうございました。」


「お帰りショート、聞いたよネヴェアとゴールドランクになったんだってねおめでとう。

 モンスターをテイムができる冒険者にはたまにあることだから気にしなくていいよ、むしろいきなり街に乗ってこなくて良かったよ。

 ワイバーンなら群れずに街を襲うことはないから大丈夫かもしれないけどあまり知られていないデカい魔物だと兵士と戦闘になるかも知れないからね。」


「ええ、おかげで問題なく受け入れてもらえました。

 今日は西の湖の方での報告がいくつかあるんですが部屋で話せませんかね?」


「西というとまさかアイツ等の事か?分かったついて来な。」



 ヘイディさんに案内されて通された2階の応接室で話を始める。



「それで西で何があったんだい。」


「話は2つありますがまずはドライアドが管理していた陽光の花の採取場所が冒険者が引き連れて来た魔物とドライアドと冒険者の三つ巴の戦闘で半壊してしまいました。

 ドライアドはすでに去っていて15本程度の花しか残っていません、その戦いで冒険者は全滅していたので遺品をいくつか持ち帰ってきました。」


「そうか…ドライアドが去ったというのは本当なのか?」


「はい、経緯とかも会話して聞きましたから間違いないです。

 花畑に来る人間が増えて来て維持できない、人間に襲われそうだから去ると言っていました。」


「なるほどな、冒険者ギルドが行かないようにさせる権限は無いし今まで誰も行かなかっただけであの辺は魔物の数が多いだけで強い魔物もいないから防波堤も無いからな。

 せめてゴールドランクの依頼にしていたが噂が広まりすぎたか…分かったギルドが出来ることは少ないだろうが考えておこう。

 遺品はあとで受付に渡してくれ、それで2つ目の話というのは?」


「今回受けた依頼の本題なんですが西の山脈でおそらく鉄鉱石の鉱脈を見つけました。」



 地図と証拠として赤茶けた石とアイアンタートルの甲羅を机に出して話を始める。



「花畑があった所から西に行き山脈をさらに南に1日ほど行った所にアイアンタートルが生息していまして食事をしていた所を調べたら鉄鉱石の様でしたので報告に戻ってきました。」



 勢いよく机の上の石を手に取ると手についた粉の匂いを嗅ぎ断面を確認する。

 鑑定してくると言って部屋から出ていったヘイディさんがどたばたと足音を鳴らして帰ってくると部屋のドアを開けて笑顔で聞いてくる。



「よくやってくれた!これでこの街の発展は約束されたな!それで何処にあった。場所は!?」


「地図のこの場所ですね、デクオンの街よりはかろうじてレオゲン寄りではありますけど領地の境界線ってどうなっているんです?」


「ここならレグオンの領地内だな、西の森はすべてレグオンの領地内と思っていいよ。

 そもそも川からこっち側は王家主体で開発中だからレオゲン男爵もデクオン男爵も領地を預かっているだけだからいくらでも引き直せるんじゃないかね。

 なんなら鉱山周辺だけ王家直轄になるになる可能性もあるかも知れないけどあたしらが考えることじゃないさ。」


「変な火種にならないならまあいいです、採掘して川で輸送した方が速そうな距離なんで取り合いになりそうだと思って。

 もし現地を確認したいならワイバーンで連れていけると思いますけど出来れば戦闘ができる人だといいです。

 無いとは思いますけど空中で戦闘になるかも知れないので、後は強行軍なら1日で帰って来ることも出来ますけど余裕を見て2日は欲しいですね。」


「この距離なら最低でも片道6日はかかるだろそれですむなら指名依頼を出すだろうからその時はよろしく頼むよ。

 どの道もう一度行って魔物の分布と大物の討伐をやってもらう事にはなるだろうけどね。

 この川は毎年氾濫するから川沿いに建物を作れないし上流の方は崖や滝が多いはずだから結局街道で運ぶことになるはずさ。」


「あ、道で思い出しましたがドライアドとの約束で森を切り開いて道を切り開く依頼にはうちのパーティは参加できないので先に言っておきます。」



 そんな約束はしていないが森の中で何ヶ月も泊り込みで道を作る様な依頼なんて受けたくないからな。

 魔物の強さ的にもシルバーランクでなんとかなるし先手を打っておけば呼ばれずに済むだろう。



「精霊と約束なんて命知らずな奴だね、どっちみちゴールドランクを道造りに縛り付けるだなんて予算が足りなくなっちまうから安心しな。

 後は何か言い忘れはないかい?」


「はい、大丈夫だと思います。」


「なら下に戻るか、この報告で依頼を完了にするから報酬を貰って行きな。

 鉱山の発見報酬もいずれ領主から出るだろうから楽しみにしときな。」



 まだ鉱物や推定埋蔵量など確認は必要だろうが街の柱になる産業が生まれるのだ結構な額を貰える可能性がある楽しみにしていよう。

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