75 人外の成り方

 休憩してる間にトレントのレベルを上げる方法を考えてみたんだが出来るだろうか?失敗しても1日分が無駄になるだけだしやってみるか。


「ローレル、念話と死霊魔法を覚えさせたからスケルトンを喚び出してダンジョンの1階でスライムを倒させてみてくれないか。」


『了承』



 枝を揺らしながら念話で短く言葉を伝えてくるローレルの近くにスケルトンが出現してダンジョンに入るゲートに向かっていく。

 邪魔しないように道を開けて通し、後ろを着いて行ききちんと戦えているか見てみたが動きは遅いがスライムを探して殴って倒せているようだ。

 これならレベルが上ってゴーストを呼べるようになれば空中から魔法を撃ってイノシシも倒せるようになるだろうしスケルトンナイトが何匹か呼べればゴブリンなんかの10階層付近のモンスターを倒してくれるだろう。

 あまり細かい命令は出来ないので素材やカードは拾ってきてくれないだろうけど毎日数千くらいは魔素を稼げるようになるはずだ。



「上手くいったみたいだから今後は死霊魔法でレベルを上げてくれ、スケルトンナイトまで呼べるようになれば自分で水を汲んでくる事もできるようになると思う。

 それまでは何か要望があれば念話で伝えてくれれば対応するよ。」


『了承、求、青球』


「青球?何のことだ簡単に手に入る物か?」



 何かを求めていることは分かったが心当たりが全く無い、魔石の事なら水属性を込めれば青い石にはなるが球ではない。

 何のことか分からず首を捻っていると部屋の一角を指差すように根っこで指し示した。



「スライムグミでいいのか?あれって動物や虫の餌だけじゃなくて植物の肥料にまでなるのか。あれで良ければ持ってくるよ。」


「良」



 取り敢えず2個持ってきてローレルの近くに置くと根っこで包みこんで地中に持っていった。



「感謝」


「スケルトンでもあそこから持って来るくらいなら出来るかも知れないから好きに食べる?といいよ。」


「了承」


「ちょっと今の丸いのは一体何なの?畑の土に魔力があふれたんだけど。」


「あれはこのダンジョンでスライムが落とすスライムグミだよ、あれ1つで人間の1食分の栄養があるらしい。」


「栄養っていうか大量の魔力で無理やり満腹にした感じだったけど…ちょっとそれ花畑の方にも埋めてみない?」


「いいけど何か起こっても責任は取らないぞ。」


「大丈夫よ魔力しか感じなかったから精霊である私が何とかできるわ。」



 試しにまだ埋めていなかった花を取った穴にグミを入れて土をかけてみると徐々に埋めた土が沈んでいって丁度グミの分だけへこんでしまった。

 再び掘り起こしてみるけどスライムグミは何処にも見当たらなかった。


「本当に魔力に変わってるみたいだな。」


「魔力には変わっているけどどうやら発生した魔力を何に使うか最初から決められている魔道具の様な作りになっているようね。

 効果を周りに広げることも出来ないし発生する魔力量の割には効率が悪いわねぇ、残念だけど花達を癒やすのには使えそうになかったわ。」


「ということは自分の魔力を使って満腹にしたりとかって出来るのか?」


「出来るようになっても魔力の回復にも栄養を使うから一時的に満足できるだけよ?」


「それでも魔石の魔力を使えれば食料が無くても暮らせるじゃないか。」


「人間を辞めたいならいいけどそうじゃないなら辞めておきなさい3年も魔力だけで暮らしたら人間じゃなくなるわよ。

 魔力の供給方法が無くなったらそのまま消えちゃうんだからね。」


「体がゴーストみたいな霊体になるってことか?精霊は魔力が無くなることはないのか?」


「精霊は自然の魔力を扱えるからね。

 それでも使い過ぎると自然の魔力が薄くなり過ぎて他の生き物が生きていけなくなるから出来るだけ魔力が高い場所にいたり私みたいに木に宿ったりして使わない様にしてるのよ。

 そして自然の魔力を使えないからって生き物を襲って魔力を吸収して行きてる存在を死霊と呼んでいるのよ。

 たまに魔力溜まりで長生きしちゃうやつも居るけどね。」


「長生き出来ても魔力溜まりって家から出れないんじゃやることも無いし暇そうだな。」


「永遠の命が欲しくてリッチになる奴はよくいるけど殆どが魔力が無くなって死ぬか生者を襲って退治されるかのどちらかね。」


「ん?ということはスライムグミがある限り俺はゴーストになっても大丈夫ってことか?」


「そうね、多分生きていけるんじゃないかしら。

 あの部屋の魔力は普通よりは濃かったし条件は揃っていると思うわ。」


「なるほどな~まず俺には3食あれを食べ続ける根性が無いからなれる自信が無いな。」



 永遠の命に興味は湧くが3食あれで霊体じゃ物に触れないから他の物を食べる事すら出来ないんじゃ俺には絶対に無理だな、せめて味が複数あればいいのになぁ。



「勘違いしてると悪いから言っておくけどグミで暮らせるのはなった後よ、一応物質みたいだからあれ。」


「ああ、そうだったまずは食事がいらない魔法からか。」



 実験を終えて休憩を終わりにすると花畑から山に向けて歩き出す。

 アーラで飛んで行った方が速いが山には何がいるか分かってないので縄張りに入って襲われ無いように一応地上から進んで行く。

 ドラゴンがいたとかは聞いたことは無いけど空中で中級魔法を撃つようなモンスターがいたら逃げられないからな。


 山に辿り着いて傾斜のある斜面を登りながら落ちている石などを見て地図に地形を書いていく。

 見かける魔物はホーンラビットやフォレストウルフが殆どでたまにフォレストキャットが襲って来る。

 ウォーターボールを撃ってくる泥だらけのイノシシや光る角を持つ鹿も見かけたから属性はまだ湖の近くと変わらないのかも知れない。

 山頂に近づくと徐々にロックウルフなどの地属性の魔物が現れ始めサンダーゴートがたまに混ざるようになった。

 ドライアドに聞いても石の事は分からないと教えてくれなかったが鉱石ってどういう所にあるんだろう、川で砂金や水晶や翡翠が採れる所があると聞いたことがあるから取り敢えず南に向かってみるか。

 標高が高い所を探せばいいのか低い所がいいのか悩んで結局中間を南に進み日が沈み始めた所で準備部屋に入り今日の探索を終えた。

 ちょっとネットで鉱石の探し方とかを調べてみようかな見た目くらいは知っているけどどういう所で取れやすいかまでは知らないからな。

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