74 荒れた花畑
翌日北門からアーラと飛び立ち湖の向こう側へと向かう、2日かかる湖までの道のりも2時間ほどで越え目的地付近に到着できた。
上空から花畑を探すがそれなりの広さがあった開けた場所が見当たらないので仕方がなく湖の縁に降りて歩いて向かうことにした。
自分で書き込んだ地図を見ながら森を進んで行くと前方に見覚えのある光指す光景が見える場所に辿り着いた。
木々の間を越えその場所に向かうと木が傷つき花畑が荒らされている光景が目に入ってきた。
木が折られるような傷ではないが中には焦げ跡もあることから人が原因である事がうかがえる。
この辺は湖が近いせいか火属性の魔物はファイヤーモンキーくらいしか見かけない、あいつは踊っているだけでこちらを攻撃してくる事は無いので何度も火魔法を使うことは無いだろう。
花も半分は踏み倒されて花が散らされていた。
「ドライアドはいるか?一体何があったんだ。」
木の精霊であるドライアドが宿っていた木に近づくと声を掛ける、一際傷が多く魔法を撃ち込まれた痕が散見される大きな木は葉を茶色に染めて枯れているに見えた。
「あらこの間来たばかりなのにもう来たの?でも丁度良かったわまた魔石を貰えないかしら今回は十分な報酬は出せないけどこの子達を直してあげたいのよ。」
「ここが無くなるのは困るし魔石は構わないけど一体何があったんだ。」
マジックバッグに入れていた魔石を先に渡してから詳しい話を聞き出す。
「といってもよくあることよ?魔物を引き連れて逃げ込んできた人間達が花達に悪さしそようとしたから魔物ごと倒しただけよ。
ちょっと被害は大きくなったけど花を引っこ抜いたあげく魔物も倒さずそのまま逃げて行こうとするんだもの、人間にも魔物にも踏まれて花が駄目になっちゃったし当然の報いよね。」
「逃げ続けた割には周りに被害が大きいみたいだが。」
「そうなのよ最初はちょっと脅かしてやろうと思っただけだったんだけど怖がらせ過ぎちゃったみたいでね、魔物を倒してやったっていうのにこっちを攻撃してくるんだものびっくりしたわ。
そうだ、お礼になるか分からないけどこの木の裏にそいつ等の持ち物があるから持っていって。」
「なるほど精霊を知らなかったのか怒らせたと思ったのか分からないけどかなり必死に反撃したみたいだな。
持ち物はありがたく頂いていくよ、ここまで来れるくらいの冒険者ならマジックバックの1つくらいは持ってるだろ。」
汚れてはいるだろうけど準備部屋に置いておけば綺麗になる、入手経緯が微妙なので使っていて気分の良いものでもないが。
ちなみに製作魔法で作った装備のカード含め冒険者カードも外に出していない限り持ち主が死んだ時点で失われてしまう。
冒険者カードが無くなる事でギルドにある対になっているカードから魔力が失われ死亡の確認ができ依頼の失敗が分かるらしい。
オークの村討伐時の遺品は被害に会った商人の物で冒険者の物は余程本人を象徴するものでもなけば自己責任で返って来ることはない。
もちろん知り合いだったりすれば持ち帰って家族に声を掛ける事もあるし、護衛依頼の時に一緒にやられた場合は商人の物と一緒に遺品が返ってくる事もあるらしい。
ということで今回の場合は一応バッグの中身を確認はして持ち主が分かるものが入っていれば遺品としてギルドに渡すつもりだが自分の物にしても誰かに怒られたりはしないのだ。
「旦那、あたしは先に持ち物を見て来てもいいかい?この街の冒険者なら知り合いかもしれないから。」
「ああ、確かに。ならゲートは開いておくから使えそうな物と遺品になりそうな物は入れておいてくれ。」
「あ、死体はもう魔物と一緒に肥料にしちゃったからね。
あと残ってる花達から蜜をとっても大丈夫よ、分け与えてたこの木の生命力も魔石のお陰で回復できたし無事な花達は全部癒せたと思うわ。」
「ありがとう、貰っていくよ。」
クルス達に蜜を採取するように指示を出して再びドライアドと話を続ける。
「今回みたいなのは早々無いだろうけど花の数は増やせそうなのか?」
「無茶をする奴らが出始めるとむしろこれから来る数が増えるだろうし人間を殺しちゃったから下手したら討伐されかねないから私はここを離れるつもりなの。
だから花を増やすのは無理だと思うわ、そうだ移動先で良いところ知らない?」
「俺も地理は詳しく無いから当てにならないが地図を見るに山を越えるか月光の花がある場所のさらに東ならまだしばらくは人間が来ないんじゃないか?」
「月光の花の辺りは闇の力が強すぎてその先は今度は水の力が強すぎるのよね。」
「ならこっちの南西の方はどうだ?」
地図を指差し街から遠い所を指差して行くが属性が合わないだの先客がいるなどで俺が持っている地図では良い所を案内することは出来なかった。
「う~ん山は私じゃ越えられないし良さそうな所が無いわね。」
「山には精霊が勝てないほどの魔物がいるのか?」
「いえ、どちらかと言うと精霊の領分の問題かしら。別に通っても良いんだけど余り他の精霊の所は行かないようにしているの。」
「となると行けそうな所が見当たらないな。それならうちに来るか?旅をする訳じゃ無いから移住先を見つけるのは無理でもほとぼりが覚めるまでうちの精霊魔法が使える奴と契約するのはどうだ。」
「それも良いかも知れないわね。幸いそこに私の加護を持った人間もいるし契約してもいいかも。」
「ん?契約には精霊魔法は必要無いのか。」
「精霊魔法を持っていると精霊と契約出来るんじゃなくて、精霊と契約すると魔力を渡す代わりに頼みを聞いてもらう精霊魔法が使えるようになるのよ。
契約するのは良いけど私が宿る木が欲しいのだけど大丈夫?」
「新しく苗木を植えていいなら大丈夫と思うけど…そうだ、宿る木ってトレントじゃ駄目かな?
今畑にトレントを植える予定なんだ、駄目なら一応庭がある家があるからそこに木を植えることも出来るけど。」
「畑にトレントを植える…?木には変わらないけどさすがにそんな事をした話は聞いたことが無いわね。
でも畑があるのはいい事だわ、ここにある花を移せば増やすことも出来るしいいと思うわ契約しましょう!」
「よかった、ならフェリを呼んで来よう。」
蜜の採取を手伝っていたフェリに来てもらい契約をしてもらうが端から見ていても特に変化もなく終わってしまった。
「これからよろしくねフェリシティ。私のことは好きに呼ぶといいわ。」
「よろしくお願いしますドライアド様。
確かに何か繋がりが出来た感覚はありますが何かが変わった様な感じはありませんわね。」
「それはそうよ精霊魔法のルールが服従に変わったとはいえ元は友好を築くだけだもの、お互い変化があるわけじゃないわ。
契約によって絶対服従とはいえ契約の解除は出来るからその事は忘れないことね。」
「私は精霊様に無体な事をするつもりはありませんがショート様次第になりますわね。
でも多分大丈夫だと思いますわお優しい方ですもの。」
「精霊を怒らせる予定は無いから大丈夫だな。それじゃこのゲートを通って準備部屋に行こうか、畑はすぐ作るから。」
「その訳の分からない黒い扉ね、気になってはいたけど精霊の力でも先が見えなかったのよね。」
ゲートを通り貯まっていた魔素で部屋の拡張を行うと広げた分を畑に変更する。
「トレント召喚!お前の名前はローレルだ。
そこの畑で実を作るのがお前の仕事だ誘引は使うなよ。
それからドライアドをお前に宿らせたい、無理じゃなければ受け入れて欲しい駄目なら根を揺らして大丈夫なら枝を揺らしてくれ。」
枝を揺らして答えるトレントは根を動かして畑に向かい地面を掘って根を地中に入れると普通の木と見分けがつかなくなった。
「どうだドライアド駄目ならあの横に苗木を植えてもいいけど。」
「それが全然抵抗が無くって普通の木と変わらないのよね、ほら私が枝を動かすことも出来るし。」
そう言ってわさわさと枝を揺らすがトレントは嫌がる様子もなく佇んでいる。
話すことが出来ないので本当の所は分からないがいずれ念話を覚えさせれば話せるんだろうか。
「私は光属性もあるから死霊系のトレントは嫌がるはずなんだけど不思議ねぇ。」
「ならこれで一応問題は解決かな、あとは花をいくつか植え直せば完了だな。
さすがに全部無くなっていると街で問題が大きくなりそうだから移すのは5本くらいにしておくか。」
以前来たときには40本くらいあった陽光の花で無事な物は20本近くまで数を減らしていた。
さらに数を減らすことになるが依頼1回分で花が5本必要なので最低5本はもらわないといけない、増やすためにも数は必要だからな。
花の周りを広めに掘って根を傷つけない様に掘り返すと一度桶に入れて準備部屋の畑へ移す。
やってみて気がついたがミミズや虫は準備部屋に持ち込むことが出来ない様だ。
土を耕すためにミミズはいたほうがいいだろうとテイムをしてゲートを通ろうとしたが成功せず準備部屋には入れられなかった。
どうなるかは分からないがダンジョンが畑と言っているんだから魔法的な何かでなんとかしてくれるんだろう。
花を畑に植え終えて休憩を伝えると動物組がトレントの下で寝始めた。
遮光カーテンで屋根を作って床は毛布を敷いて寝やすくはしていたが自然と同じ木陰と土の床の方が落ち着くのかも知れない。
たった5畳の畑はトレントと5本の花で一杯一杯だし畑も広げてやらないといけないな。
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