72 拠点購入
翌朝、まずは冒険者ギルドに行っていらない物を売却して購入資金を増やす。
空の旅では魔物を倒していないのでほとんど売るものは無いのだが、攻略と魔素を稼ぐ為に倒したトロールやパラライズバタフライの素材を依頼書で必要な分以上の余っている物も売却してしまう。
「プラチナランクの依頼が2回分で金貨10枚、ゴールドランクの依頼が4回分で金貨4枚、その他素材の買取額が金貨50枚と銀貨34枚になります。」
「え、そんなにいくんですか?」
「はい、まずトロールの皮は分厚く丈夫でさらに大きいと人気の素材なのですが、めったに討伐されず倒しても生命力が強いのでボロボロにされるのが普通です。それでも銀貨30枚はするのですが。
今回の物は傷もなく綺麗な品を大量に納品いただいたので色を付けさせて頂き金貨1枚での買い取りになっています。
これだけ綺麗で大きな皮なら高級なソファーなどにも使われるので十分利益が出せます。
ワイバーンの被膜も家具はもちろんベルトなど高位冒険者用の装備にも使われるので需要が高いです。
サイズが小さいので少し安くはなりますがこちらも銀貨30で買い取りさせて頂きます。」
トロールばかり倒していたらいずれは暴落するだろうが1時間で十数枚手に入る物が金貨一枚か、トロールを倒しに行くにはほぼ全員で行かないといけないけどたまに行って稼ぐのもいいかも知れない。
「なるほど、そんなに高く売れるならまた倒してきてもいいかも。」
「トロールの皮は需要が全く足りてないのでそうしていただけると助かります。
ワイバーンもそうですが一体何処で倒したんですか?街の近くにいるようでしたら防衛のためにも場所を教えてもらえると助かるのですが。」
「あーいや王都方面で倒してきたのでこの辺にいるかは分かりませんね。
そうだ、サブマスターって会えますか?今日は受付にいないようですが。」
「ヘイディさんでしたら今日は午後からなので今はおりません、御用がお有りでしたら午後に来ていただければ大丈夫だと思いますが。」
「ならショートが礼を言っていたとお伝え下さい、用があるわけではないので次に会った時に改めてお礼を言おうと思います。」
「承知致しました。」
冒険者ギルドから出て次に商人ギルドへ向かう、出店経験があるエリジーとベラに先導されて受付へと並ぶ。
「ようこそ商人ギルドへご要件をお願いします。」
「北門付近で出店できる店舗を探しています。」
「承知致しました担当の者をお呼びいたします。少々お待ちください。」
受付嬢が裏へ行って一人の男に話しかけると一緒になって戻ってきた。
「お待たせ致しました後の事はこちらのライリーがお聞きいたしますので2階応接室までご案内致します。」
「ライリーと申します。それではこちらへどうぞ。」
後ろを着いていくと応接室に通されライリーさんは一度退室した後資料を持って戻って来る。
向かいの席に座り資料を並べると物件を順番に紹介してくれた。
「こちらの3件が北門からの大通りに面した店舗の間取り図となっております。
3軒ともに賃貸しなら年間金貨1枚、購入ですと門に近い所から金貨20枚、25枚、30枚となっております。」
一番広いのは門に一番近い物件だが他の物件は3階建ての建物でどれも馬車を停められるくらいには庭がある。
今の所庭が広くても用途が思いつかない、畑を作るにしても井戸は別の場所にあるし水を汲んで来るのも大変だ。
トイレも王都のような下水道も無いのでどこも汲み取り式で貸し出す前に汚れた木板を張り替えるのが普通らしい。
壁も薄く防音材なんて物も無いので間取りと広さだけ見ればどこも作りは一緒なんだとか、あとは壁の隙間と床鳴りの確認くらいかな。
日当たりも大通りと庭があるし周囲の家の高さも大して変わらず、薬草と薬の保存の事を考えればむしろ暗くて風通しが良い所の方がいいだろう。
店舗と3人分の部屋に工房が最低限、そこに一応オーナーである俺の部屋と客間と考えると3階建ての金貨25枚の物件がいいかな。
いざ直したい所が出たら地球で調べて製作魔法を豪勢に使って作り直してやろう。
「二人共真ん中の家が良さそうだけどどう思う?」
「そうですね、工房の他に倉庫も必要な事を考えると真ん中が良さそうです。」
「それに30枚の所は店舗が広すぎますね。薬屋にそれほど大きさは必要無いかも。」
「ならこの店舗の内見出来ますか?多分購入することになると思います。」
「もちろん可能です、すぐに行かれますか?」
「お願いします。」
「承知致しました馬車を用意致しますのでギルド前でお待ち下さい。」
ギルドから出てライリーさんが用意した馬車に乗り込むと大通りを北上し石造りの店の前に辿り着く。
裏に回って庭に馬車を止めると裏口から中に入る。
「こちらが店舗になりますカウンターや棚などはご注文いただければ新品でも中古でも用意させていただきますのでご用向きありましたらお声がけ下さい。」
ライリーさんが手に持っている魔道具のランタンの光に照らされた室内は何も置かれておらずガランとしていた。
少し埃っぽい空気の中見回すと20畳ほどの部屋に家具が置かれていたと思われる日焼け跡が見て取れた。
「いいんじゃないか?広さも十分だと思うけど。」
「そうですね以前の店よりも広いので十分商品も置けると思います。」
「倉庫と工房に出来そうな部屋も近くて使いやすそうです。」
「井戸は共同となりますがさほど離れていない場所にありますのでご不便は少ないかと。」
「じゃあここで決定でいいか、金はシエナに渡しておくから家具は2人で相談して決めてくれればいい。数日街を空けるかも知れないが足りなければ後で払うから予算は気にしなくていい。
それじゃライリーさん契約と家具の発注の方お願いします。」
「ありがとうございます、契約の方は一度ギルドに戻る必要がありますがその間に御用聞きをする者を派遣させて頂きます。
こちらの鍵はお渡し致しますのでゆっくりとご相談なさって下さい。」
エルジー、ベラ、シエナの3人を残し馬車に乗り込むとギルドで契約書を読んでサインをする。
「ありがとうございます、こちらが控えになりますので無くさないようにお気をつけ下さい。
今年の分の土地代や井戸の使用料などは購入額に含まれておりますが来年からは費用が必要になりますのでご注意下さい。
税のお支払いや出店登録も街役場だけでなく商人ギルドでも可能ですのでよろしければご利用下さい。」
「分かりました、身内に王都で店をやっていた者がいるので細かいことは後で聞いておく事にします。」
「おお、たしか薬屋と言っておられましたか。王都で出店できるような優秀な薬師がこの街に店を出していただけるとは!ギルドでもご支援できないか相談してみます。」
「ええ、事情があって奴隷となっておりましたが問題は解決できたので御用があればよろしくお願いします。」
金銭的にはまだ余裕はあるが素材の買付など商人の力が必要になる事は沢山あるだろうしギルドとは仲良くやっていければ良いと思っている。
この街ではまだ近くで採掘はしていないので鉱物系はすべて輸送されてくる素材だしな。
契約を終わらせてギルドを出るともう一度馬車に乗って店舗へと向かう。
欲しい家具や調薬の道具など色々と注文して製薬素材の買付などを相談して今日は解散となった。
家具の受け取りは明日以降で徐々にらしいので明日から暫く薬屋3人組には宿暮らしをしてもらおう。寝具と調理器具が入れば暮らせるだろうけど注文した物が足りないと買いに行くわけにもいかないし1週間くらいを見ればいいかな。
俺は悪いけど金だけ渡して何か依頼にでも行かせてもらおう。
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