71 レオゲン帰還

 希望者がもういなかったのでシエナと一緒に空に飛び立ちレオゲンの方角へ向かう。

 護衛にシドーを連れて影から守ってもらっているがたまに見える鳥の魔物達もワイバーンの近くに来ることは無く離れて行くので必要無いのかも知れない。

 ワイバーンを襲って来る魔物なんてヤバそうなのしか思いつかないし山越えでもしない限りは来ないと思うけど保険はあった方が良いだろう。


 トイレ休憩を入れたり暇つぶしにアーラにワイバーンの生態を質問したりしながら飛んでいると思ったよりも早くレオゲンの街が見えてきた。

 レオゲンもまだ大した時間滞在していないのに帰ってきたと感じるのは田舎者の性分だろうか、まだ日は高い位置にあるが辿り着く頃には空が赤くなり始めるだろう。

 明日到着するように調整したつもりが思ったよりもアーラが速くて結局同じ時間になってしまった。

 思えば前回エルジーと一緒に乗った時はLv1だったけどあれから10近くレベルが上ってるんだもんな、近接で戦っていたし羽ばたく力なんかも上がっているのかも知れない。

 南と東の門には商人達の馬車が並んでいるはずなので馬を怖がらせないために回り込むようにして北門の離れた場所に降りていつものメンバーに準備部屋から出てきてもらって北門に歩いて近づく。

 ワイバーンをテイムした事はサブマスターから伝わっているはずなのでテイムの印を買うためにアーラにも付いてきてもらった。



「ようこそレオゲンへ、話は聞いてるよそれが君のワイバーンかまさかワイバーンをテイムする様な冒険者がこんな辺境に来るなんてなぁ。」


「こんにちは、こいつのテイムの証をいただけますか。」


「おお、まだ登録してなかったのかそいつは光栄だちょっと待っててくれ。」



 門兵の一人が詰め所に入り印を持って戻って来る。



「待たせたね知っているだろうが登録に銀貨一枚かかる、それから許可無く町中から飛び立ったり街の上空を飛んだり、馬車を脅かすような事があると罰せられたり魔法を撃たれたりするから十分に注意してくれよ。」


「分かりました気を付けます。町中に入れると問題がありそうなので仕舞っておきますね。」


「お、おう。テイマー用の宿もさすがにワイバーンは入れないと思うからそっちのほうがいいと思うがどうなってんだそりゃ?」



 聞かれても俺も説明できないので愛想笑いをしてゲートを開いきワイバーンを準備部屋に戻してから門を通って街に入る。

 すでに日が暮れ始めているから用事は明日にして今日の所は帰ることにしよう。


 脇道に入ってゲートで準備部屋に戻るとアーラはすでに丸くなって寝ていた。

 最初は食料を大量に食べるので用意が大変だと思っていたがどうやら1日一食でいいようで朝起きると好物の馬を狩りにダンジョンへ行って自分で食事をしていた。

 トカゲのように変温動物で朝は苦手なのかと思っていたがダンジョン内が温度が変わらないからか俺と一緒に起きて朝食を獲りに行って食事を済ませて来る。


 夕飯までの微妙な時間を召喚獣をかまって過ごして夕食後はダンジョンへ行くための準備をする。



「47階のモンスターはサンダーバードだ。

 空を飛んでいて動きが早く、サンダーカッターなどの雷系の魔法を使ってくる。

 雷で痺れる事に注意する事は勿論、武器が届かない事も有るだろうから魔法組は頑張って当ててくれ。」



 普段は守られているだけの俺だが今回はクロスボウを持ち、エルジーもトレントの枝とワイバーンの被膜で作った弓を持ってもらう。

 矢は大型クロスボウの物を使うし本来は動物の後脚の腱を使うそうなので被膜では丈夫さが足りないかも知れないが撃ち落とさないと攻撃も出来ないので試してみるつもりだ。

 一応試射した感じはそこそこの威力があったし命中率も良かったので後は腕前次第だろう。


 通路を進んでいくと1mほどの大きさの黄色いツバメの様な鳥が飛んできた。

 大型の魔物ばかりの41階以降では珍しいが速度がとにかく速く上下左右に動き回って魔法を躱しながら近づいて来る。

 召喚獣達の邪魔にならないようにクロスボウで狙って撃つと吸い込まれるようにサンダーバードの額に突き刺さった。

 目標自体を狙うのではなく何故か何もいない位置にここを狙えという感覚があってその通りにしたら当てることが出来た。

 これが器用さのステータス効果なのだろう、一方エルジーは当てることが出来ず。職人をしてはいたがレベルを上げ始めた最近は遊びでクロスボウを撃つくらいだったので余り器用さは上がっていないのかも知れない。

 明日は製薬の道具を買いに行く事を予定はしているがすでにレベルが20を超えているので少し遅かったかも…


 撃ち落とされたサンダーバードの止めは他に任せてただ撃ち落とす。

 矢は使いまわしているが落ちる衝撃などで駄目になり徐々に減っていっている、練習用の数十本しか無いので階段を見つけるまで足りるといいんだが。

 無くなったとしてもトラッド達魔法組も慣れてきているし防御力も無いので1発当たれば飛べなくなって落ちてくる。

 問題があるとすれば落ちたサンダーバードに近接武器で止めをさすと手がしびれるということか。

 遠距離攻撃ができるフォレコと無視できるゴーレムに止めを頼んではいるが対策は必要だったかも知れない。

 サンダーバードの方から集まって来てくれるので効率は良さそうだけどゴブリン達用のサンダーゴートの手袋とホムンクルス達用の弓矢が必要かな、いやゴブリン達が他の階に行っても他のメンバーだけで倒せるかも。

 この階は当てることさえ出来れば簡単に勝てるが速度が足りないのかウインドランス以外の魔法はほとんど避けられてしまっている。

 当てることが出来る弓使いが3人と止めとドロップ運搬役の5人くらいのパーティでも何とかなりそうだ。

 トレントの相手は魔法組とゴブリン達で十分相手が出来るので魔素稼ぎをここでしてもらおうかな。


 サンダーバードが落とす爪はサイズ的に矢尻に使う物なので金銭的には効率が悪いがトレントの枝と矢羽と合わせれば矢が作れる、後は矢羽が必要だがアーラが戦っている25階でウインドコンドルを倒すことで羽を集めることが出来る。

 羽を拾う係が必要になるが25階なら1人いれば大丈夫だろう、刺さると少ししびれる程度だが戦闘中に動きが止まるのなら使えるかも知れない。




 明日はまず冒険者ギルドへ行って出来ればヘイディさんにお礼を言ってから家を買いに行ってみよう。

 値段は分からないがこうおう外壁に囲まれた街では外壁に近いほど安く主要な道を外れるほどさらに安くなるはずだ。

 商売が目的の購入では無いし北門の近くなら値段も安くなっているだろう、詰め所が近ければ治安も期待できるしワイバーンで北門に乗り付ける俺にとってはいい立地のはずだ。

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