66 42階層へ
準備部屋に入り綺麗な空気を思いっきり吸い込んだ後、集まったメンバーに42階の説明を始める。
今回はエルジーの希望で留守番はベラだけとなる、まだ右手が治っただけなので急がなくて良いんだけどな。
「42階のモンスターはラヴァタートルだ。
フレイムカッターの魔法の他に溶けた石や燃えた石炭なんかを吐き出してくるから顔の向きに注意しろ。
切りつけた傷口が燃えたりするらしいから攻撃の時に油断しない様に。」
「はい、頑張りましょうねシルフ。」
「私がいればどんなモンスターだってイチコロ何だから大船に乗ったつもりでいなさい!」
空中で胸を張って自信満々のシルフがどれくらい強いのか楽しみだ。
何せ精霊と契約できないと使えないので地球でも取っている人が少なくどの様にして戦うのか分からないのだ。
唯一知っている精霊の話は雪山に出てしまった人が言っていたアイストルネードを使ってくるという話だけなのでとても気になる。
中級魔法習得の目安にもなるので一発ドカンとやってもらいたい。
ダンジョンに入って最初に出会ったラヴァタートルに精霊の強さを見せてもらうためゴーレムだけ前に出してとっておきを撃ってもらう。
ゴーレムが抱きついて動きを止めるとラヴァタートルが大きく口を開けて噛み付いてきた。
硬いゴーレムの腰を半分近く噛み砕いて持っていくと飲み込んで再び噛み付いてくる。
「さあいくわよ!とっておきのウインドボム!」
シルフが数十秒間力を込めて作り出した2mほどの風の塊を解き放つと高速でラヴァタートルにぶつかった。
開放された風が一斉に周囲に広がり辺りに爆風が吹き荒れる。
10m以上離れて見ていたにも関わらず強風で吹き飛ばされ数十メートル転がされた。
周囲を確認しながら周りに怪我はないか声を掛けるが自分の声が聞こえない。
ラヴァタートルがいた方向を見ると甲羅ごと頭部を吹き飛ばされ徐々に粒子に変わっていくところだった。
ゴーレムも粉々になって周囲に散らばっていてもう動けそうにない、死霊魔法でMPも使い切っているので新たに呼び出すことも出来ない。
スカラを探して全員にヒールをかけてもらうとようやく落ち着けた。
「とりあえずウインドボムは今後使用禁止だな。」
「なんでよ!見てなかったの?めちゃくちゃ強かったじゃない一発よ一発!」
「あんなもん前衛が戦っている所に撃ち込んだら全滅するわ!もっと大人しくて強い魔法は無いのか?」
「しょうがないわねぇなら次はウインドトルネードをお見舞いしてやるわ。
こっちは溜めも必要ないし魔法を撃った後近づけばいいわ。」
「分かった、じゃあ魔法組は一緒に魔法を撃ち込んで前衛組はトルネードが収まってから近づくってことで先に進もうか。」
通路を進んで出会った3匹のラヴァタートルと向かい合いシルフが魔法を準備する。
今回はゴーレムがいないので大盾を持っているクルスとジュリアを先頭に並んで先程のニの前にならないように少し腰を落として始まるのを待つ。
「さあいくわよ!切り裂かれなさいウインドトルネード!」
3匹のラヴァタートルの中心に出現した竜巻が徐々に大きくなりながら周囲の空気ごとすべてを中心に引き寄せる。
最初は引き寄せられるだけでラヴァタートルも傷もなく耐えていたのだが段々範囲と共に速度も上がり離れていた俺達まで立っていられない程の風に翻弄される。
中心にいる亀達の体が徐々に浮き始め足が地面から離れだした時にそれは起こった、始めは甲羅に浅い傷がついたかと思うと回数が増え血しぶきが上がり始めた。
傷から流れ出した血で竜巻が真っ赤に染まり向こう側が見えなくなるとモンスターが死んだ時の粒子が舞い始めた。
「どうよ!これならさっきよりも大人しいでしょ?」
「いやいやいや、危うくクルス達が巻き込まれそうだったからな!?
少盾ですら地面に押し付けないと持っていかれそうになったんだから大盾なんて構えてたら空飛ぶわ!」
「文句が多いわねぇ、終わった後にヒールも必要ないし大分大人しかったでしょ?」
「確かに鼓膜が破れたり意識を失うようなダメージは無いけどトルネードも禁止だ!
ダンジョン内でも出た素材がボロボロになってるし外で使っても何も素材が採れないじゃないか!
もっと弱くて地味なやつでいいから!そうだカノンってのがあっただろあれならどうだウインドハンマーの強化版なら使いやすいんじゃないか?」
「えーあれ本当に地味だから見てもつまらないわよ?それでもいいなら使うけど本当にあれでいいの?」
「ああ、強い魔法があることは助かるんだけど味方に被害が出ない事の方が大事だからな。
カノンも周囲に被害があるようならランスで確実にダメージを与えて欲しい。」
「しょうがないわね、エルジーに怪我されても困るし聞いてあげるわ。」
「すみません、シルフの戦闘を見たこと無かったのですがまさかこんなにすごい魔法を使えるなんて思っていませんでした。」
「私だって普段はこんな魔法ぽんぽん使わないわよ?でも今は貰った風の魔石があるから好きなだけ使えるのよね。
使い切るとまずいから後で補充してねエルジー、どんどん魔力も増えてるしそのうち好きなだけ使えるようになりそうね。」
「使うのはいいけど本当に味方を巻き込まないでね、お願いよシルフ。」
「大丈夫よ私は風の精霊よ?あの竜巻に巻き込まれたってちゃんと守ってあげるわ。」
精霊の能力でもしかしたらあの中にいても無傷でいられるのかも知れないけど命を預けるにはまだそこまで信用できない。
雪山の人はアイストルネードを食らって寒いだけと言ってたのでぶっちゃけ中級魔法を舐めていたが精霊に遊ばれていただけなんじゃないだろか、耐性装備があってもあの竜巻の中で無傷でいるのは無理な気がするんだが。
次の犠牲者を探して通路を進み1匹だけで歩いていた亀に向けてシルフがウインドカノンを撃ち込む。
バスケットボール大の空気の球が高速で撃ち出されラヴァタートルにぶつかり数m吹き飛ばした。
開放された空気が俺の髪を揺らし、ぶつけられたラヴァタートルは空気の球と甲羅に挟まれた首がミンチになって甲羅にヒビが入り大きくヘコませていた。
さすが中級魔法だけあって威力は申し分無い、ウォーターリザードの頭蓋骨でも割るのにランスが数発必要なのに更に硬そうな甲羅を一撃とは恐れ入る。
この威力ならどんな魔物も一発で倒せるんじゃないだろうか。
ぶつかった時の音はでかいが許容範囲だし戦闘開始時に毎回撃ってもらうために風の魔石にMPをもっと込めて用意しておこう。
「どうよ!私ならもっと速度を速くもできるけど消費魔力が上がっちゃうのよね。」
「いや、十分だよ恐れ入った。これなら大幅に戦闘時間を短く出来るよ。」
「ふふん、そうでしょそうでしょ魔法で精霊に勝てる奴なんていないんだから。」
「これなら安心して背中を任せられるよ、これからもよろしくな。」
「任せなさい私がいれば100人力よ!」
「最初はどうなるかと思いましたがお役に立てそうでホッとしました。」
そこからは敵が1匹ならカノンで1撃、2匹なら残った1匹をみんなで倒し、3匹なら残った2匹を抑えてるうちに3匹目をカノンで倒してもらうという効率のよい倒し方が確立された。
ラヴァタートルは水と火に耐性があるらしくてスカラとシドーのランスが効かずボールを撃つしかなくて火力役が足りなかったがフェリのアースランスがレベルが高いはずのトラッドの魔法よりも効果が高く甲羅を一発で貫いていた。
もっとも命中精度は圧倒的にトラッドの方が高くて顔や首を狙ったものが外れて甲羅に当たっているトラッドと最初から体を狙っているフェリでは勝負にもならないのだが。
簡易鑑定の結果では溶けた石を吐き出してくると書かれていたがダンジョンのラヴァタートルはフレイムカッターか噛み付きしかして来ない。
耐性装備があっても溶けた石を被ったら大火傷したかも知れない、こいつもダンジョンの環境のせいで弱体化している様だ。
ドロップするラヴァタートルの甲羅は重くて持ち運びが難しいのでその場で盾に加工し持ち替えていく、水と火に耐性のある優秀な防具なので余れば鎧もこれで作りたかったくらいだ。
効率よく倒せたおかげで順調に進むことが出来て3時間ほどで階段まで辿り着いた。
スケルトン達の結果が気になるしまたあの臭いの中に戻るのは憂鬱だが行かないといけない、鉱石が集まっているといいんだけど。
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