52 再会

 今日の予定は買い物とダンジョン素材の売却をしようと思う。

 闇の魔石を大量に集めた副産物のシャドーキャットの皮が大量に貯まっているのだ。

 他にも前回売りに行ってから集めた物が色々あるので倉庫整理のためにも1回すべて売却する。


 どうやら価格改定があったらしく魔石類の買取価格がかなり下がっていた、1個1万以上した買取価格が3千円~5千円になっていたのでかなり暴落したな。

 シャドーキャットの皮は大きさが小さいため価格が低かったのだが狩りづらさからか属性の需要からか少し値上がりしていた。

 大分製作魔法で使い切ったと思っていたが細々とした物を集めて120万になってくれた。

 バンシーの涙とアイビードライアドの枝が結構高かったので魔法使いポジションの人口が多いのかも知れない。




 役所を出て向かったショッピングモールで解体に使いそうなバケツや桶などの大き目な物を買ってマジックバッグに詰めたら驚かれたんだがまだそんなに広まっていないのだろうか?俺が異世界に行けるようになってもう2週間は経ってるんだけどな。

 まあ向こうが楽しくて帰って来ないというのはありえそうだけど。


 忘れないようにまずタブレットと台座を買い、ショートケーキやタルトをホールで買ってその他お菓子やインスタントラーメンやスープを種類優先で買っていく。

 ナッツ類やドライフルーツなんかは向こうで食べても問題にならないかな。

 そうだ食器も買わないと置いておけば綺麗になるから数を多めに用意しておこう。

 フェリに確認したら食器を持ち寄る会食もあるらしいから見栄えの良いものも少し用意しよう、総銀製の皿はさすがに見当たらないから必要になったらでいいか。

 何度も往復して10万円以上買い物したがこれって経費で申請出来ないよな…




 フードコートで昼食を取っていると久しぶりにのきねぇさんから連絡が来た。



「お久しぶりです、突然ですがショートさんってダンジョンクリアされてますよね?」


「その質問が出来るということはのきねぇさんもクリアされたんですね、おめでとうございます。」


「そうなんです!凪紗とパーティを組んでなんとか倒したんですけど良かったらショートさんに異世界を案内してもらえないかなぁ~って思って。」


「ん?パーティを組んでいても異世界へのゲートが開くのはランダムだったと思いますが。

 俺が案内出来る所に飛べるとは限りませんよ?」


「それがそうでも無いみたいなんです、実は今一つ噂がありまして。

 行きたいと心の底で思っている場所に飛ばされているんじゃないかって。」


「ということは人のいない孤島に行きたいと思ってると孤島に飛ばされるし人恋しいと思ってれば王都みたいな所に飛ばされるってことですか?」


「そうです!そしてどこどこの街に行きたいな~って街の名前を思い浮かべて初めてゲートを潜るとそこに集まることが出来るって噂です!」



 そうか、掲示板で雪山に出て苦労してた人は実は人付き合いに疲れて雪山にスキーにでも行きたいとか思ってたんだろうな…そんな事でさらに苦労するなんて思ってもいなかっただろうに。

 無事に人里まで辿り着けていると良いな。



「私がいる街の名前を教えて凪紗さんとそこに集まるのが目的というのは分かりました。

 ただ、私がいるのは辺境の街なので金を稼ぐには余り向いて無さそうですよ?」


「むしろ好都合ですね、今ネットで街の名前を書き込まれた場所に人が集まってるので人口が多い所は治安が荒れているらしいです。国が同じかは分かりませんが人がいない所の方が安全かもしれません。」


「いつの間にそんな事に…分かりました街の名前を教えます。

 地図に今の俺の現在地を書いてメールするんで1時間後にそこに出れるか待ち合わせしましょう。

 街に入るのにも冒険者登録するのにも金が必要なのでそれも出します。」


「ありがとうございます!街に入るためのお金を稼ぐのが1番難しいらしいので本当に助かります。」


「貨幣が無くても適当な素材を渡せば入れるはずですがそんなに難しいですかね?」


「それが誰かがやらかしたらしくって街に入る審査が厳しくなっているらしいんです。」


「一体何をやったらそんな事に…では1時間後の14時にゲートを通って30分会えなかったら一度準備部屋に戻って電話をした後自由行動ということにしましょう。

30分を計るのはこっちでやって念話で知らせるので凪紗さんにも言っておいて下さい。」


「はい、分かりました!よろしくお願いします。」


「それではまた。」



 想定外の予定が入ったが買い物は終わっているし向こうで時間を計る砂時計でも買って行こうかなゲートに入って確認してもいいけどなんというか風情ふぜいが無いしな。

 向こうに行くならできるだけ向こうの物で何とかしたいという気持ちがある、まあ自分に優しいゆるゆる判定だけどな。

 30分の砂時計は今回以外使い道が無さそうだから10分のと3分のを買って行こう。インスタントラーメンも買ったし使うだろ。



 急いで家に帰り準備部屋にはフェリとボニータ、サユキ、スカラしかいなかったので装備を着ながら念話でクルス達を呼ぶ。

 タブレットの設定を簡単にしてアプリをインストールしてからフェリに渡す。

 サユキの暇潰しに突き合わされたのか人に見せられない顔をしていたがきっと大丈夫だろう。

 10分前にようやくクルス達が帰って来た、ショッピングモールにいる時に念話したら良かったなまだ使い慣れてないから便利なんだが忘れがちなんだよな。


 少し早いがスマホに連絡が来てないかを確認した後ゲートを通る。

 森の中では見通しが悪いので二人に教えたのは森の近くの平原だ、歩いて平原に向かい辺りを見回すと丁度ゲートが現れ中から凪沙さんが現れた。

 すぐ近くに2個目のゲートも出現したのでどうやら無事に合流出来たようだ。



「お二人共異世界へようこそ。」


「良かった本当に合流できた!」


「お久しぶりですショートさん、今日もありがとうございます。」


「お久しぶりです、と言ってもまだ1月も経っていない気がしますが。」


「そういえばそうですね、何故か最近ダンジョンが出来てまだ一月っていうのが信じられなくて。」


「分かります、こんなところで立ち話もなんなので歩きながら話しましょうか。」


「「はい。」」


「二人には先にこれを渡しておきます。」



 そう言うと俺は銅貨の入った袋を二人へ差し出す。

 俺が持ってた銅貨を適当に2つの袋に入れただけだが多分50枚づつはあるだろう。



「いいんですか?こんなに一杯。」


「元から渡す予定でしたし多く見えるかも知れませんが使うとあっという間に無くなる量でもあります。

 街へ入るにも冒険者の登録をするにも10枚単位で無くなるので調子に乗って買い食いすると足りなくなりますよ。」


「まだお金も稼いでないのに買い食いなんてしませんよ!」


「一応ゴブリン1匹の角を持っていくと銅貨5枚、一食付きの宿が銅貨10枚からなので食っていくのは問題無いでしょう。

 ただ危険な依頼に失敗して怪我の治療で借金をすると奴隷になって生殺与奪を握られるので安全マージンは多めに取って下さい。

 まぁゴールドランクの依頼までは大丈夫だと思ますが何があるか分かりませんから。」


「ちなみに一番高く売れるダンジョンの素材は?」


「この街だと需要があるのはフローティングアイの結晶体ですね、淫魔の体液も高いですが今は供給過多気味です、皮類はいくらでも需要があるみたいですね。

 あとはパラライズパピヨンとモウドクドクヤガエルの毒も需要がありますが何に使われるか分からないのでちょっと怖いですよね。」


「麻痺は狩りの他に医療にも使われるらしいですが毒はどうしても暗殺が思い浮かびますよね~」


「あ、この辺まで来たら安全なのでホムンクルス以外は準備部屋で待機してもらって下さい。

 テイムモンスターが街に入るには結構お金がかかるので。」



 街の門が見える位置まで来たので2人に召喚獣を仕舞うように伝える。



「街まで連れていきたい場合は門でテイムモンスターの印を買って体の何処かに付けないといけないんです、年間銀貨1枚の人頭税がかかるので町中で出さないで下さいね。

 金が無い今見つかるとそのまま奴隷落ちもありえますから。」


「その時はショートさんが買って助けてくれますか?」


「お二人ですと金貨10枚以上になる可能性があるのでマジでやめて下さいお金が足りません…

 ちなみに50枚毎に硬貨が変わって宿が一晩で銅貨10枚、1年で銀貨73枚あれば1年泊まれるので金貨10枚あれば7年は暮らせます。」


「1千万円くらいって事ですか?私を買うのには安すぎますね。」


「ええ、ですので借金や賠償などしないように大人しく金を貯めてくださいね。」



 1億でも安い私なら10億はいける!などと言っているがそんな金は無いので本当に気を付けて欲しい。

 ネヴェアの様に臨時パーティを組むことは無いだろうけど人攫いはいそうだから気お付けて下さい。



「また新しい綺麗所を連れて来たな、お前ばかりどうなってやがるやっぱ技で落としてるのか?」


「違いますよ偶然合ったので案内してるだけです。ほら一人銅貨5枚だから出して下さい。」


「ああ、先に賞罰を確認させてくれ。この板を触るだけだからよ、大丈夫だと思うが他の国じゃ最近は変な奴が増えてるらしくってよ。」


「おや、この国の王都はまだ大丈夫なんですか?王都の方で変な団体が来たとか聞いたんですが。」


「王都からはそんな連絡はきてねぇな。他の国の話なんじゃねぇか?町中でモンスターを暴れされたとか無一文で街に入れろと騒いだりと色々あったらしい。」


「近隣村の住人でもないのに金のない難民の集団が現れたとか聞いたのですが噂が混ざったのかも知れませんね。」


「かもな、よし賞罰も問題無い。6人で銅貨30枚だ。」


「はいこれでお願いします!」



 他の話を聞けないかとハッタリで話を続けてみたが今の所近くで名前を晒された街はまだ無いと思って良さそうだ。

 金を渡して門を通り冒険者ギルドまで案内する。



「ここが噂の冒険者ギルドですね!ショートさんはここで待ってて下さい!」



 何がやりたいのかすぐに予想できたので黙って頷いて外に残ったが残念ながら何も起こらず無事に登録が済んだようだ。

 外に出てきた2人に周辺の分布を教えてオークの睾丸が一番稼げると教えた時はすごい顔をされたのでホムンクルスの勉強に使った動画のURLを後で送っておこう。



「これで次からはカードを出せば街の出入りは無料になるので宿を取るか外でゲートに入るかはお好きにどうぞ。

 俺は結構人にゲートを見せているので使っても問題にはなりません、買ったものをゲート内に運んでも驚かれるだけでしたしね。

 あとやらかした俺が言うのも何ですが買取カウンターに大量のモンスターを持って行くと怒られるので程々にしておいたほうが良いです、事前に言っておけば50匹でも大丈夫みたいですが。

 お金が貯まったらハンマー系の魔法を最初から持っているモンスターをテイム登録すると冒険者ギルドでシルバーランクまでスキップ出来るので持っていたら登録をおすすめします。」


「はい!、50匹ってよくそんなに準備部屋に入りましたね。」


「そんな数解体させられたら怒って当然でしょう。」


「いや、重ねると意外となんとかなったんだよ。

 それに依頼を完了するまでに100匹近く襲ってきた時もあったし結構捨ててきたんだよ?」


「ダンジョンのつもりで倒していると大変なことになりそうですね。」


「生態系って壊したらルール的に危ないんじゃなかった?」


「大人数でいると襲ってこないからその辺で調整するしか無いね。

 さて、後は2人で大丈夫だよね?俺はそろそろおいとましようと思うんだけど。」


「あ、そうですね今日はありがとうございました!お礼は期待してて下さいね。」


「本当にありがとうございます、お金もお礼も後日必ず返しますから。」


「街に来る途中にも話したけど急がないからゆっくりでいいからね。

 本当に人攫いとか詐欺には気を付けて下さい、それではまた会いましょう。」


「ありがとう、またね!」


「はい、ありがとうございました。」



 二人と分かれて東門へ向かう、西の湖に先に行こうと思ってたけど戻るのも時間の無駄なので東の湖に先に行くことにした。

 さっき通ったばかりの南門をまた通るのも恥ずかしいしな、今度は1人だしまた何か言われそうだ。

 地図では2つ目の村から南に行けば行けるようだから片道3日か4日くらいだろうか、来たばかりの2人が心配ではあるがいざとなったらゲートもあるしスマホもある。

 二人共大人なんだから心配のし過ぎも良くないだろう。

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