51 武器屋

「なんでぇネヴェア、武器だけ帰ってきたと思ったら生きてやがったのか。」


「ああ、おかげさんでかえっていい暮らしをしているよ。」


「あん?ああ奴隷になっちまったのか…」


「治療費が払えなくてね、でも本当にいい人に拾われたから気にしなくていいよ。」


「こうして無駄話しても怒られないんだからそうなんだろうな。

よし、今日はサービスしてやるから何か買っていきな!」


「ならネヴェアが片手で扱える剣を頼む、怪我が治ってもサブ武器に出来るとなおいいな。」


「ならロングソードか片手半剣だがそいつの使い方だと分厚い片手半剣の方がいいだろうな。

 どうだ、こいつを振り回せるか?」



 手渡された剣を片手で握りゆっくりと振り上げては下ろしてネヴェアは使い心地を確かめる。



「う~ん流石に重いね長さは何とかなるけどもっと軽いほうが良さそうだ。」


「ならロングソードだな、こっちを試してみろ。」


「うん、まだちょっと重い気もするが鍛え直せば大丈夫だろ。」



 鍛え直すで思い出したがそういえばネヴェアとフェリの強さを聞いてないな。



「そういやネヴェアってレベルいくつなんだ?」


「あたしかい?レベルは15だけどどうかしたかい?」


「15?何年冒険者やってるんだ?」


「なんだい5年だけどこれでも同期じゃ出世頭だったんだよ?」


「いや、疑っている訳じゃないんだ。」



 Lv15というと俺が1週間でなったレベルだ、1日に狩れる時間も数も少ないとはいえ流石に少なすぎではないだろうか?

 もしかしたらこの世界のモンスターは全体的に経験値が低いのかも知れない。

 Lv1~5くらいのモンスターを日に10匹前後倒して生活しているのが冒険者なのかな、休みも多く護衛依頼や移動などで倒さない日もあるだろうからこんなものなんだろう。

 ならゴブリンに着いて行ってレベルを上げればすぐに20くらいは越えるだろうから少し重くても問題無さそうだな。

 下手するとゴブリンに連れて行かせてたボニータと召喚主のフェリの方がレベルが高いかも知れないとか絶対に言えないな、ボニータにはしばらくチャンネル係に専念してもらおう。



「あたしのは決まったけど他に買う物はあるのかい?」


「ああ、俺の分の片手剣とクロスボウがあれば欲しい。

 剣の心得は無いが力はあるから丈夫で咄嗟に鞘から抜きやすいとなおいいな。」


「それだと曲刀が良さそうだな、斧と同じで叩きつけるだけで切れるからな。

 ファルシオンかカトラスがいいと思うが簡単に言うとどちらも幅広の片刃で刀身が曲がってるか曲がってないかの違いだな。」



 腰の位置から抜き差しして抜刀のしやすさを確かめてみるがカトラスの方が剣先が曲がっているおかげか下手な俺でも抜きやすい。

 逆に鞘に入れるのは難しいがこれは慣れれば大丈夫なはずだ。

 カトラスは分かりやすく言うと海賊が持ってる剣だな、アニメの海賊の武器ほど曲がってはいないがナックルガードは持ち手に付いていた。

 ネヴェアも力任せなタイプの様だが基礎くらい教えてもらえるだろうから今日から素振りをしようかな。



「カトラスの方がしっくりくる気がするのでこれにします。」


「おうそんな感じだな、クロスボウは色々大きさがあるが当たるかより弦が引けるかが問題だ。」



 手で引ける小型の物は簡単に引けたのでより大型クロスボウの先にある金具に足を入れて背筋で引く物を選んだ。


「ヒョロい兄ちゃんかと思ったらすげぇ力だ、うちで一番の大型が引けるとは思わなかったぞ。」


「引けはしたけど常用は無理だよ。2周り小さいやつが丁度いいかな。」


「そりゃそうだ、本来ならそれだって器具を使って引くものなんだぞ。

 それを簡単に引きやがって、淫魔をテイムしてるのも納得だぜ。」


「あと矢が50本とゴールドランクでも使える解体用のナイフを2本でいくらになる?」


「ナイフは鋼なら銀貨2枚、ミスリルが入ると金貨1枚だがどうする?」


「ミスリルたっか!流石に鋼でいいわ。」


「ならロングソードが銀貨7枚、カトラスが銀貨5枚、クロスボウが矢とセットで4枚、ナイフが2本で4枚の合計20枚だ。」


「おいおい、サービスしてくれるんじゃなかったのかい。」


「そう急かすなわーってるよ、ちっと待ってな。」



 ネヴェアの野次にそう言って店の奥に入っていく店主。

 戻ってきた時にはさっき試していたロングソードよりも二周り大きな剣を持って来た。



「おうこれも持ってけ、こいつはサービスだから金は取らねぇよ。」


「これあたしが使ってたやつじゃないか使い古しとはいえサービスで付けるにはちっと高くないかい?」


「その兄ちゃんさっきの発言を聞くにわざわざお前の腕を直してくれるってんだろ?ならせっかく治っても間に合わせの武器で役に立てないんじゃ恩も返せねぇ。

 だから持っていけ、そんで金を稼いでうちでミスリル武器を買ってくれればこんなもんタダでも利益が出るってもんよ。」


「なら貰っておこう、でも治る頃にはミスリル武器を買ってるかも知れませんよ?」


「奴隷にそんなもん買い与えるってんなら俺の見る目が間違ってたってことだ。良い方にな。

そん時は売りに来な、安く買い叩いてやるよ。」


「買い叩くで思い出した、オークの村で手に入れた金属って買い取りしてます?」


「くず鉄はさすがに買い取りはしないがとりあえず見せてみろ。」



 準備部屋からオークの鎧や武器、ついでにゴブリンの村で拾った武器を出して査定してもらう。

 


「武器は冒険者から奪ったもんばっかりだな研ぎ直せば使える物もある。

 防具はひでぇ出来だが鉄としては悪くねぇな、買い取るなら銀貨3枚だな。」


「随分安いな使える物もあるんだろう?」


「使えはするがうちで売るほどじゃないからな、そこの樽に入ってる銅貨30枚の武器として売るのが精々だ

 後は素材屋に持っていって一度溶かしてもらわないと再利用もできん。うちは鍛冶屋じゃなくて武器屋だからな。」


「ということは最初から素材屋ってのに持っていったほうが高かったか。」


「輸送費くらいしか変わらねぇけどな。」


「まぁ今日は素材屋に行く時間もないし買い取りを頼む。」


「あいよ、買い取り分を差し引いて銀貨17枚だが剣帯も必要そうだな、2本で銅貨30枚にしておいてやるよ。」


「じゃあこれで、大剣はありがたく使わせてもらうよ。」


「おう、次来る時はナイフでもいいからミスリル品を買ってくれよ。」


「それは冒険者ギルドの買取カウンター次第だな。」



 解体をすべて任せられるなら100匹でも200匹でも納品出来るんだがなこの街の規模じゃどう頑張っても無理だろう。

 荷物を準備部屋に入れてから武器屋を出て次の店に向かう。



「ネヴェア、鞄の中を拡張して見た目以上に入る物って何処で売ってる?」


「マジックバッグの事?それなら雑貨屋か防具屋に行けば売ってるけど必要ないんじゃないの?」


「いや、大物はいいんだけど金とかの小物が場所取ってさ。」


「要するに金を入れておく程度の容量でいいのね?ならここから近いのは防具屋の方ね。

 雑貨屋のほうが種類が多いけど商人用の大容量の物がいらないならどっちでも変わらないわ。」


「ならあそこの防具屋でいいか。」



 武器屋の向かいにある防具屋に入り防具が並べられた棚を順番に見ていく。

 武器屋もそうだが見慣れない物が色々と並んでいて見ていて楽しい、人間用だけじゃなくてテイムしたモンスター用の物もいくつかあるんだな。

 馬や走竜、走鳥といった騎乗用のモンスターの鎧らしい。



「いらっしゃませ、何かお探しですか?」


「いえ物珍しくて眺めてただけなんですがマジックバッグはありますか?」


「それでしたらこちらの棚でございます、うちで扱っているのは金貨1枚から8枚の物ですがサイズは木箱1個分から5個分となっております。

 どれも腰のベルトに付けられるようになってますから便利ですよ。」


「木箱って腰くらいの高さがあるあれですよね?」


「ええそうです、輸送などによく使われるあれですね。」


「1個分だとすぐに満杯になりそうだし2個分の物はいくらですか?」


「2個分の物が金貨2枚、3個分の物が金貨4枚となっております。」


「なるほど3個分の物を買う予算は無いし1個分の物じゃサイズが心配だし商売うまいなぁ。

 ネヴェア2個分の物で大丈夫だと思うか?」


「旦那は毛皮や肉を入れるわけじゃないし十分だと思うよ。1個のだと予備の武器だの雨具だの食料を入れておくとすぐに一杯になっちまって結局買い替えることになるんだ。」


「では2個の物を一つと雨具を5人分お願いします。」


「ありがとうございます、雨具が1着銅貨30枚ですがたくさん買っていただいたので蝋引き用の蝋をお付けしますね。

 合計で金貨2枚と銀貨3枚になります。」


「ではこれで。」


「丁度お預かりいたします、ありがとうございました。」



 ネヴェアの発言で属性対策のマントはたくさんあるがフード付きの物が無いなと思いつきで買ったのだが蝋引きと聞いて少し後悔した。

 この世界の雨具は布製のフード付きマントに蝋を染み込ませた物の様だ。

 さすがに地球の雨合羽を持っては来れないがウォーターフロッグの皮を使って作れば蝋を塗らなくても性能の良いものが作れたんじゃ無いだろうか、マントくらいなら素材を渡して作ってもらえばそんなに工賃もかからないはずだし自分でも作れるかも知れない。

 やはりその場の思いつきで買うものじゃないな最低限相談するべきだった。

 断ればよかったのかも知れないけど棚から大量に出してもらってサービスしてくれると言ってくれた物をいりませんとは俺には言えなかったよ…

 でもマジックバッグは便利だった買った物をとりあえずバッグに突っ込んで店を出れるのでゲートを開いて変な目で見られることがない、地球での買い物でも活躍してくれるだろう。


 明日は地球で買い物をしてこちらでは上級ポーションの素材を探しに行く予定なので一番近い南門から出てから森の中でゲートに入る。

 ネヴェアには暇な時にクルス達と21階から属性魔石を集めてもらおう、闇は全員分のブレスレットが作れたからゴブリン達はシドーがいる時は光の魔石を、いない時は雷と氷の魔石集めだ。

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