48 討伐出発

 翌朝、まだ奴隷商からしたら早いかも知れないが予定もあるので9時を過ぎたので商会に向かわせてもらう。

 


「いらっしゃいませショート様、お待ちしておりました。」


「まだ朝早いのに悪いな、急ぎの依頼が入ってしまってな。」


「いえいえ、オークの件でしたら私共も困っておりましたのでどうぞよろしくお願いします。」


「すごいな俺が何の依頼を受けたかまで知ってるのか。」


「今回の場合は特殊でございますからね、依頼を受けた冒険者が失敗してしまって上位の冒険者も出払っていて危うく街道封鎖の危機でございましたから。

 そこに来て話題の人が依頼を受けたらしいとたまたま商人の間で噂が広まった次第です。」


「そっちの噂も誤解が広がっている様だな…」



 思ったよりオークの件は大事になりかけているらしいが違う噂の方もさらに広まっている気がする…



「それでは連れて参りますので少々お待ち下さい。」



 前に使った2階の部屋に通されて椅子に座ると奴隷商が一度退席する。

 しばらくすると4人の人間を伴って部屋に戻ってきた、一人を長椅子に寝かせると抱えてきた人間は頭を下げて部屋を去る。



「お待たせいたしました。この3人が候補となります。

 左から左腕が無いのがシルバーランクのシーア19歳で金貨2枚、次の右腕がなく左目に切り傷があるのがシルバーランクのネヴェア20歳で金貨1枚、最後にそこに寝かされたのがブロンズランクのフェリシティ18歳で元準男爵令嬢でした。」


「最初の2人は分かりますがその準男爵令嬢はなぜここに?値段も予定より上がっているようですが。」


「値段に関しては申し訳ありませんオークの問題で護衛費がかさんでしまったのです。

 フェリシティについては”元”準男爵令嬢です。セイントスカラベをテイムされている方ですからもしかしたらとお連れしました、お値段の方も勉強させていただきます。」



 値段については仕方ない馬車輸送で取り寄せなんてしたら費用がかかるのは分かるからな。

 問題は両手両足が肘と膝から切断され顔面も殴られて原形も分からない状態になっている物体だ。

 セイントスカラベが何度ヒールをしても失った手足は戻らないし俺がどうこうできるレベルじゃない気がするが。

 どうしたものかと悩んでいると商人が説明を初めた。



「まずはシーアとネヴェアについて説明させていただきます。

 シーアは片手剣使いのシルバーランクで利き手も残っていて今すぐ戦えます器量もよくまだ処女です。

 ネヴェアは大剣使いで利き手と左目を失ってまだ傷が癒えきっておりません処女も失っておりますがご覧の美しさのためこの値段となっております。」



 シーアは短髪のくすんだ金髪をしており日焼けしたかわいい系の美人で、ネヴェアは赤毛の短髪にオリーブ色の肌をしたカッコイイ系の目付きの鋭い美女だ。

 どちらもよく鍛えられていて腹筋が割れて筋肉質の体つきをしている。



「まず3人の髪を1本づつ貰ってもいいですか?」


「ええ構いませんが。それは何でしょう?」



 新たに交換したホムンクルスの胚を取り出し3人の遺伝子を確認した。

 突然取り出した素材に商人が不思議がっているがステータス画面を他人に見えない状態で使い見比べる。

 シーアは見た目と変わらず体を鍛えなくても胸は今と変わらないようだ。

 ネヴェアは目つきが怖いのは変わらないが傷があったほうがかっこいいかも知れない、筋肉質である今でも分かるくらい大きいがステータス画面ではさらに大きく描かれている。

 そして問題の顔つきすら分からないフェリシティだが、なるほどこんな状態にされた理由が少し予想がついた。

 胸は大きくも小さくもないが金髪ロングに色白の肌、薄幸の美少女という言葉が似合う美しさだ。のきねぇさんが手に入れてきた白人モデルよりも美しいかも知れない。

 この見た目ならストーカーか嫉妬がこうなった原因と思って間違いないだろう。



「気にしないで下さい、シーアは流石に金が足りませんね。

 購入するならネヴェアが欲しいですがもう少し値段をなんとかなりませんか?」


「ええええ分かっております。美しいとはいえ顔に傷があり失ったのも利き腕で両手武器使いです、そうですな銀貨45枚ならばお売りしてもよろしいのですがどうでしょうか。

 フェリシティも一緒に買っていただけるのでしたら金貨1枚と銀貨30枚でお売りいたします。

 顔はこの状態ですが殴られただけですのでヒールで治ります、手足はどうにもなりませんが元は非常に美しく上位貴族の方にも求婚されたことがあるそうです。

 この様な状態にした犯人もすでに処刑され実家からも正式に縁を切られてますので安心安全となっておりますがいかがでしょう?」


「なるほど、ですが本当に美しいかこの状態では分かりませんし人には好みというものもあります。

 直しても仕事も出来ませんし治療の手間も普段の世話もあります、ネヴェアと銀貨10枚差ほどの価値は無いかと。」


「では金貨1枚と銀貨20枚にいたしましょう、顔に関しても100人に聞いたら100人が美人だというと保証いたしますよ直した後に街で聞いて1人でも美人じゃないと言ったら返金してもいい。」



 そりゃこの美しさなら治ってさえいればいくらでも売れるだろうよ。

 それに両手両足の無い人間を連れてそんな質問して回ったら明らかに俺が変態扱いされるじゃねぇか。

 だけどぶっちゃけ欲しい、手足に関してもいつかは直せる様になる予定だし首輪があるので自殺される心配は無い、準備部屋に寝かせておけば移動の面倒も存在しないと言っていいだろう。



「分かりました購入します。」


「ありがとうございます!それでは早速取引をいたしましょう。」



 少し悩んで諦めたように購入を告げると商人が嬉しそうに契約書を準備する。

 ホムンクルスのスキルでフェリシティの顔に驚いたのを見て値段をふっかけられた気がするがロックウルフの群れが2、3個無くなるくらいの違いしかないだろうし気にしない。

 俺は銀貨70枚を用意して契約書を確認して2枚にサインをする。



「では今から譲渡を行ないますので首輪の宝石に魔力を流して下さい。」


「分かった。」



 順番に魔力を流して繋がりができた事を確認して命令をする。



「ダリア、クルスに槍を渡してフェリシティをベッドに寝かせて戻って来い。

 ネヴェアはダリアについて行ってベッドで一緒に休んでいろ。

 サユキはスカラを連れて新人二人に飯を食わせて心と体を癒やすのを手伝え。」



 

 一通り指示してダリアが戻ってくるのを待ち契約書を片方受け取ると商人に入口まで案内される。



「またのお越しをお待ちしております。」


「ありがとう、次があったらまたよろしくな。」



 目的の知識を持つ奴隷を手に入れたのでしばらく用事は無いが売る方でまた来るかもしれないしな。

 怪しまれない様に門を通るときだけサユキとスカラに出て来てもらい森に入ったら交代でフォレコ達を出す。

 今日辿り着けるか分からないが村を殲滅するの目的のためゴブリン達も外で戦ってもらう。

 襲って来る魔物だけ相手にして森を進むがこちらの森は北側よりも動物が少なくゴブリンが多い気がする。

 たまにいる1匹で歩いているオークを解体しながら進むので歩みは遅く、半分は来ているはずだが暗くなって来て見通しが悪いので今日は準備部屋に戻ろう。






 2人の様子を確認すると頬を赤く染めて目を潤ませながらサユキにスライムグミを食べさせられていた。

 ネヴェアは魅了しなくても食事くらい出来るだろうに、まぁいいか。

 青白かったネヴェアの顔色は治り、フェリシティの顔の腫れも治ってはいたが骨折もしていたのだろう鼻や頬骨の辺りがまだ紫色に染まっている。ネヴェアも顔の傷は消えておらず目も開いてはいなかった。



「ネヴェア話を聞きたいんだが大丈夫か?」


「ああ、お陰様で傷も痛まなくなったし腹も一杯だ。」


「まずはそのボロボロの貫頭衣を脱いでこれを着てくれ。」



 対呪の布から作った下着のカードを渡して着替えるように伝える。

 納品依頼も無く使い道も今のところ無かったが肌触りの良い絹のような布だ、下着には丁度良いだろうとさっき作ってきた。



「製作魔法で作った物なんていいもの着るんなら先に体を洗ってきていいかい?流石に汚れたままじゃ申し訳ないよ。」


「ああ、そうだな。クルスとダリア洗うのを手伝ってやれ。」


「助かるよ、流石に片手じゃ洗えない所も多くてね。」



 半透明のカーテンに透ける洗い合っている姿を楽しみながらフェリシティの様子を見る。



「フェリシティは話は出来るのか?」


「喉を焼かれててしばらくはダメそうよ、内蔵もやられてたし主様に買われなかったら数日で死んでたんじゃない?」


「やっぱり不良債権を売りつけられたか、商人の顔すごい笑顔だったもんなぁ。

 まぁ価値があると思ったから買ったんだけど首輪の効果で自殺は出来ないとはいえ死にたいと思わなくなるくらいに持ち直せるか?」


「任せてよそういうのは得意なの、淫魔は心が弱ってる人を依存させて無理やり元気にして生気を長く吸うのが本来の姿なんだから。

 性行為で搾り取るのなんておまけなのよ?」


「それはそれで問題がありそうだが元気になってくれるなら問題ない。

スカラと協力してなんとかしてくれ、必要なものがあったら言ってくれれば検討する。」


「じゃあ早速だけど手足はどうするの上級ポーションでもないと治らないでしょ?」


「街で上級ポーションが買えればいいが無理ならスカラに中級のヒールを覚えてもらう、かけ続ければ上位のヒールと同じ効果になるらしいからな。

 上級ポーション2人分に魔素を20万も使うより中級ヒールに50万使ったほうが後々楽になるだろう。」


「上級ポーションなんて買ったら白金貨1枚は必要だぞ、こんな辺境じゃ売ってないしあたしはこのままでいいよ。

 中級ヒールだって何度もかけてたらお布施が金貨何十枚も必要になるじゃないか。」



 体を洗って着替えてきたネヴェアが会話に参加してきた。

 準備部屋に1時間以上いたので汚れは無くなっていたがリンスの効果か髪に艶が出てボサボサの髪がスッキリしていた。



「おお、見違えたじゃないか髪がスッキリしただけでも結構違うな。」


「ありがとよ、あのネバネバしたので洗うだけでこんなに変わるもんなんだね。

 鏡もあんなに綺麗で大きいものは初めて見たよ冒険者なんてしなくてもあれ売っただけで王都で暮らせるんじゃないかい?」


「あれは事情があって外には出せない物でね。この部屋の事とか色々と秘密があるんだ。」


「なるほどね、金持ちに秘密が無いことなんてありえないか。」


「そういう事にしてくれ、それで上級ポーションは金さえあれば簡単に買えるものなのか?」


「順番待ちにはなるだろうけど冒険者ギルドか商人ギルドで依頼したら買えるよ。材料を取ってくる依頼を受ければ優先してくれるらしいね。」


「なら王都まで行って依頼を受ける事も視野にいれるか。」


「いや、依頼をするのも受けるのもこの街でもいけるはずだよ時間はかかるけどね。」


「依頼が受けれるなら材料も全部分かるのか?」


「材料自体は有名で知られているからね、依頼書に書いてあるしありそうな場所も教えてくれるよ。

 この辺りだと西にある湖の先に陽光の花があるらしいね。月光の花も東の湖で見つかったとか聞いたよ。」


「材料ってそれだけなのか?」


「その2つさえ取ってくれば依頼は完了だね。あとは光属性を込めた水が必要だけど水にヒール使うだけだし。」


「なるほど、なら自分で集めることも可能か。」


「ゴールドランクの依頼だからあたしには無理だけど良い稼ぎになるらしいよ。

旦那のランクは知らないけど淫魔を2体もテイムしてるんだしいけるんじゃないかい?」


「そうだねランクはまだシルバーだけどゴールドぐらいなら余裕で倒せるな。」



 ランスが使えるメンバーも増えているし今ならバジリスクでも楽に倒せる気がする。

 ネットではアイビードライアドがいれば簡単に倒せると言われていたがテイムモンスターはあんまり増やしたく無いんだよな、歩くのもゴーレムより遅いから本当に大型専用のモンスターなので普段の効率は良くないし。



「あ、そうだ。体を鍛えるのはいいし剣を振りたければあそこに転がっている剣を使っていいけど俺は腹筋の横線が見えないくらいの肉付きが好みだからやりすぎないでね。これは命令だよ。」


「いや、これは別になりたくてなってるわけじゃなくて街に帰ってきたら大量に食って依頼に出たら素食で大剣を振り回してたら勝手になっただけだから!」



 顔を赤くして手を振って否定するネヴェア。

 冒険者は依頼を達成したら数日休みにしてまた数日依頼に出る生活をするものと聞いているのでそれが太って筋肉に変えるサイクルになっていたのかも知れない。



「目指しているんじゃないならよかった。

そういや酒は好きか?飲むなら樽を用意しなければいけないんだが。」


「酒は好きだけど無くてもかまわないよ。ここは水もうまいしあの麦茶ってのもうまかったしね。」


「それは良かったもう街から出てるから後3日は森の中だからね。」


「え!?あたしはまだ慣らしもしてないし装備もないし戦えないよ!?」


「大丈夫だよ怪我人は治療に専念しててくれ、うちは10人以上の大所帯だからオークの村くらいで手は借りないよ。」


「オークの村って街の街道に出てるやつか、そうかいあんたがあたし達の尻拭いをさせられたんだね。」


「尻拭い?」


「ああ、あたしがこの怪我をすることになったのがその依頼なんだよ。

 臨時で組んだ連中が野営中に襲ってきやがってね、そこを襲われて全滅さ。

 あたしは女だから後回しにされてるうちになんとか逃げきることが出来たけど男連中は全滅さ。

 地図はあるかい?もしかしたら野営した場所に行けば何か残ってるかも知れない。」


「あるよ、でも武器は持っていかれてるだろうし大した物は残ってないだろ?」


「まあね、私も武器は売って治療費になっちまったし男共の汚い防具なんていらないだろうしね。それでも財布か冒険者カードでも残ってれば小遣いにはなるさ。

 縮尺が小さいから確かなことは言えないけどこの辺だね。」


「オークの巣から半日もかからない距離じゃねぇかこんな所で火を炊いて騒いでたらそりゃ襲われるだろ。」


「流石に火はなかったはずなんだけどね、明かりが欲しかったのか交代の間に焚き火を作って脱いでいやがったよ。」


「なるべくしてなったって事か通り道だし探してみるか。

 見つけた時にその格好じゃ流石にまずいし革の服くらい作っておいたほうがいいな。」



 余ってるナイトメアホースの皮で服と靴と手袋を作ってネヴェアに渡す。

 ついでにフェリシティにキャミソールくらい作っておいてやるか。



「戦う体つきじゃないと思ったらあんた職人だったんだね。職人でこんなにテイムするなんてそこの2人がよっぽど強いのかい?」


「強くはあるけどうちの最高戦力はゴブリン達とフォレストキャットだな、ほれできたぞ。」


「ありがと、随分着心地がいいね厚手なのに柔らかくて邪魔にならないしいい皮だけど何の皮なんだい?」


「ナイトメアホースだよ、余ってるのがこれだけだったんだ。

 あ、シャドーキャットのもあったかまぁいいや。」


「なんてもん奴隷の服に使ってんだい…シーツにするだけで銀貨10枚以上する高級品じゃないか。」


「売るとそんなに高いのかでかいから使い勝手がいいんだけどいっぱいあるし大きな街に行ったら売ってみるか。

 さてせっかく着た所悪いけど脱いでもらおうか、そろそろ寝たいからね。」


「こんなに綺麗所集めてまだあたしなんかを欲しがるなんて好き物だねぇ、買われちまった以上は相手になるけど淫魔みたいな技術なんて無いからね!」


「そんな技術俺だって持ってない、習いたいならサユキ達に聞けばいいがそこまで求めてないよ。」



 俺自身インキュにやり方を習うこともあるがそこまで経験も無い。お互い楽しめるようになれたらいいけどな。

 ベットが1つしか無いがフェリの横でやる訳にもいかず、新しいベットを交換して日付が変わるまで楽しませてもらった。

 筋肉質な体もいいかも知れないと認識は変わったが病み上がりでも体力では勝てないらしい。

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