41 冒険者ギルド

 両開きの扉を開けて冒険者ギルドに入ると複数のカウンターと両側の壁に大きな掲示板があり、丸テーブルと椅子が置かれているが物語のように酒場は併設されていないらしい。

 最も食事をしている人達はいるので持ち込みはOKなのだろう。

 受付の上にぶら下げられている看板を読んで一番左端の受付に話しかける。



「新規登録を頼みたい。」


「いらっしゃい、後ろの2人の新規登録かい?」


「いや3人だよ。俺の分も頼む。」


「新人って年には見えないけどねぇ、まあいいさ登録に一人銅貨10枚かかるけど大丈夫かい。」



 20代半ばほどの女性に話しかけるとぶっきらぼうに返される。

 辺境での取引のためだろうが商人の財布には銅貨が大量に入っていたが流石にこうも銅貨ばかり求められるとあっという間に無くなりそうだな。



「30枚丁度あるね、それじゃこの板に名前を書いておくれ。ああ、家名は無くても良いが嘘はだめだよ。」



 金属の板に羽ペンでショウトと書いてクルス達に場所を空ける。



「書いたら魔力を板に流してこっちに見せておくれ。」



 魔力を流すと金属の板に文字が浮かび上がる。


**********

ランク:アイアン

名前:ショウト

賞罰:なし

**********

ランク:アイアン

名前:クルス

賞罰:なし

**********

ランク:アイアン

名前:ダリア

賞罰:なし

**********


 特に問題も無かったのでそのまま見せるが種族のホムンクルスや向こうの世界での車のスピード違反などが表示されなくて安心する。



「何だどっかでやらかしたのかと思ったら職人か何かかい?質問が無ければこのまま説明を始めさせてもらうよ。」


「テイムしたモンスターを連れて街に入るのはどうしたらいい?印か何か必要なんだよな?」


「ああ、テイムしたモンスターを連れて門の衛兵に話しかければ売ってくれるよ。ただし人頭税として印1個で銀貨1枚取られるけどね。

 体の何処かに布かベルトでも巻いて印をつけておけばいい、印は1年後には買い直さないといけないから気を付けな。」



 俺はゲートがあるから無くてもいいのだが鑑定されてテイムを持っているのにモンスターがいないのも変だし町中でヒールが必要になるかも知れない、スカラと護衛役のシドーの分は買っておいた方が良さそうだな。



「他に質問がないなら冒険者について説明させてもらうよ。」


「大丈夫だ、説明を頼む。」


「あいよ、あんた達のランクはアイアンだブロンズ、シルバー、ゴールドと上がっていくが自分のランクと同じランクの依頼しか受けられない。

 ただし4人以上のパーティを組んでいる場合のみ一つ上のランクの依頼が受けられる、一人だけランクが高いやつがいてもそいつの上のランクの依頼は受けられる様にはならないから注意だ。

 あくまでも同じランクが4人いて初めて上のランクを受けられる様になるからね。」


「テイムモンスターは人数に入らないのか?」


「入らないね、明らかに上位のモンスターなら認められる事もあるがそういう場合は大体指名依頼になるしね。」


「なら人型のモンスターを冒険者として登録することは?」


「完全に人間に見えるようなモンスターなら気が付かずにする事もあるだろうけどゴブリンだのオークだのを連れてきても登録なんてしないよ。

 それに完全に人間に見えるモンスターなんてみんな上位のやつばっかりなんだからテイムモンスターとして登録したほうがいいと思うけど?」


「例えば有名なとこだと淫魔とかならどのランクの仕事が受けられるんだ?」


「そんな若い子達連れてよくそんな名前出せたね。」



 呆れ顔で見られたが確かに女性陣に囲まれて出す名前じゃなかったな。

 頬をかいて笑ってごまかすと説明を続けてくれた。



「淫魔だとシルバーランクの依頼が受けられるね。ちなみにゴールドランクを受けるならワイバーン、ドラゴンをテイム出来ればオリハルコンランクだ。」


「おお、シルバーランクが受けられるのなら確かにテイムモンスターとして登録した方がいいな。」



 ドラゴンは無理だがワイバーンは多分バジリスクくらいの強さだと思うのでいけなくはないがあのランクを倒す依頼は余り受けたくないので気にしなくていいだろう。



「まぁテイムするにはそのモンスターに勝たないといけないんだけどね。

 さて、依頼は通常の依頼と常設依頼、指名依頼の3種類がある。通常はあちらの掲示板から依頼書を取って受付で受注しな。

 常設依頼は事前に受ける必要はない、討伐証明や採取素材を直接受付に持って来たら精算するよ。

 指名依頼は本人に直接依頼される物だからランクが低いうちはあまり関係は無い物だが中には拒否できない場合があるのを理解しな。」


「え、拒否できないのか?」


「ああ、といっても国からの物や貴族からの物でも緊急性のある物のみだからそうそう無いよ。

 それに不可能な物は流石に来ないから安心しな。」


「それならまぁ今は気にしないでおくか。」


「そうしておきな、さて後はギルド内での乱闘禁止や一般の人への乱暴禁止など一般常識だから気になるなら掲示板横の冊子を読んで学ぶといい。

 以上だけど何か質問はある?」


「今のところは無いですね。」


「はい、お疲れ様。このカードは再発行が出来ないから無くしたらランクも初めからなる、忘れずに体内に仕舞っておくんだね。」



 再発行ができないと聞いて一瞬驚いたがなるほど、モンスターカードと同じ様に仕舞えるなら無くすことはないな。



「ありがとう、それじゃ依頼を見て来るよ。」



 受付嬢と分かれて掲示板を順番に見ていくがアイアンランクで受けれるのはホーンラビットやゴブリンの討伐、薬草などの採取に町中の掃除や荷物運びとあまり難易度が高くない。

 常設依頼ばかりで町中の依頼以外は通常依頼も無いようだ。


 ブロンズランクはウォーターフロッグやフォレストキャットなど少し強くなってはいるがダンジョンの20階程度の強さしか無い。


 シルバーランクはロックウルフの群れやウォータースネークなどノーマル枠の群れやレア枠の討伐が多かった。


 ただゴールドランクはファイヤリザードやロックオクトパスの討伐など20階代と30階代が混ざっていたのでハンマー系の魔法を覚えているモンスターの強さがここのようだ。

 ということはゴールド級のモンスターをテイム出来るからシルバーの依頼を振っても大丈夫だろうと言う事なんだろう。


 森で倒したゴブリンの強さを思い出しても今更10階のモンスターを倒すのも面倒だし出来ればランクをスキップしたいな。

 となると納品依頼を大量に片付けるか、ホムンクルスをもう1体作るか、淫魔をテイムモンスターとして登録するかのどれかになるが。

 アイアンやブロンズの納品依頼をしようにも素材はもう売ってしまったしあるのはシルバーやゴールドの素材ばかりだ。



「すみませんアイアンでシルバー以上の納品依頼をしたらランクって上がります?」


「あーよくいらっしゃいますけど自分の1ランク上の素材までしかランクアップ査定の対象外なんです。

 パーティで受けても同様ですね、依頼の報酬自体はもらえますがランクアップはしません。」


「そうですか、ありがとう。」



 気になって聞いてみたがやはりダメらしい。

 となると一番ランクが上がるのはサユキをテイム登録してシルバーの依頼を達成するのが一番早いか。

 クルスとダリアのランクは上がらないかも知れないけど俺のランクだけ上がれば問題ないし依頼の場所まで移動する時に常設依頼のモンスターを適当に狩ればそのうち上がっていくだろう。

 となると一度街の外に出るか、少しくらいはアイアンランクの依頼も体験しておきたい。

 クルスに冊子を読ませてダリアに常設依頼の納品物を覚えさせる。

 常設依頼は出来れば肉も取れて金になるホーンラビットを見つけたいな。クルス達に解体の仕方の動画も見せて勉強させるか。

 ギルドを出て今日は宿を取らず人目がない場所でゲートに入る、日も暮れ始めているし明日の朝街から出たほうがいいだろう。

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