第13話 隙間
煙草を吸う俺より、長生きすると言っていた妻が、あっさり病で死んでしまってもう1年が過ぎた。
吸い過ぎだと妻はいつも怒っていたが、君がいなくなってから、煙草の本数は増えるばかりだ。ちゃんと君の文句は伝わっていたとそう思わないかい。
なんせ、自炊する時も煙草を吸うんだからな。君がいたら発狂するだろうな。意外とうまくなったんだ。君がいなくなった隙間は、俺自身で埋めている。その間は煙でぴったり埋めているぞ。
最近、子供らが家を引っ越してはどうかとうるさい。舐めるなってな。掃除も洗濯もちゃんとできてんのに。この間なんか「大きい家に一人は寂しいでしょう。」なんて娘に言われてな。あほか、と言って追い返したよ。出ていった身で構うなってんだ。
怖いよな。怖いよ。君が開けて行った穴を、俺以外が埋めていってしまうと思ったらな。一人でいいんだ。でも一人は必要だと思わないか。君との思い出ではなくて、君自身を大切にしていく人間、ってのが。
仏間では吸わんよ。お前が嫌がるからな。だけど、煙草は止めん。煙草を1本吸うと寿命が5分縮まるらしいからな。
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