殺人犯へのインタビュー
嫌いだった。あの作家気取りが。たいして上手くも無い癖に、そう思って見下していた。
あの作家の作品なんて
知ってはいたさ。メディアに出てれば嫌でも目に付く。今はそういう時代だろう。
嫌いだった。碌に笑わねェ、喋らねェ。喋った所で短ェ、つまらねェ。ワタシはテメェらとは違うンですって顔して、イヤイヤ
だから殺した。アイツの女とガキを。
山ン中の家だった。だから誰にも気付かれないで行って帰って来れたんだ。
アイツは来なかったよ。仕事にかまけて来なかった。家とは別にあった、アトリエ、とか言う所に、ずっと明かりが着いてたよ。だから外に置いといてやったんだ。見つけやすい様に。
後で知ったよ。まさか雪が積もるまで気付かないとはな。思わなかったよ。
アイツ、随分薄情なのか、それともただのマヌケなんだか。
殺した後何してたか?飯食ってたよ。自分家帰って、寒かったから、あったけぇ飯。
そんで酒も飲んで、寝て起きて、アイツの事がニュースになってたのを、手を叩いて見ていたさ。面白かったよ。
逃げなかったのかって?まぁ、今になって思えば、もっと遠くにでも逃げときゃ良かったとは思うけど、そん時はまさか、捕まるとは思っちゃ無かったから。
捕まったのはそれからまた翌日だった。アイツの家の玄関先の防犯カメラに写ってたらしい。それも気付かなかった。
そのくらい、俺はマヌケな人殺しだった。
女子供だから殺せたもんだ。アイツが家に居たンなら、多分俺は誰も殺しちゃ無かったよ。
だからそう、全部アイツが悪いのさ。
自分は他人様と違うンですって腹の立つ顔してたアイツが悪い。
その癖、家族が殺されてるのに気付きもしねェアイツが悪い。
全部そう、アイツのせいだ。俺は悪くねェんだよ。
だが、悪くなくても殺したのは確かに俺だ。俺なんだ。
なァ、記者さんよ。あの絵は本当に、アイツが描いたのか。俺にはまるでそう思えねェ。
あの絵が本当に、アイツが描いたなら、どうしてあの絵は俺を責めない。
どうしてあの地獄に、俺が居ない。
アンタが俺に見せたあの地獄。
なァ、あれはあの日の事だろう?あの日をモチーフにしてンだろ?間違いないだろ?そうだろう?
あの地獄は俺のオカゲで出来たんだろう?そうだろう?
なのにどうして俺が居ない。俺がアソコに描かれていない。
地獄は犯罪者がおちるンだろう?俺は殺人犯だ。アイツの女と子供を殺した殺人犯だ。間違いなく。
だから頼む。頼むから、俺を、そこへ入れてくれ。
あの地獄へおちたい。おとしてくれ、なァ。
俺をそこへ描いてくれ。
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