No.6 家に家族がいるのに女の子連れてくるって気まずくない?

 霧香と喋りながら歩いて20分ほどったった頃、俺の家の目の前まで来た。


「わぁ、やっぱり昔から変わってないね。かな君の家。すごくおっきい。」

「そりゃな。昔から住んでる家は一緒だし。とりあえず家に入るか。」

 俺はスクールバッグに引っ掛けているカードキーをドアにかざして家の鍵を開けた。

 そういえば凛音りんねももう家に帰ってきてるよな。


 ガチャっと音がしてドアを開けると、凛音が「お兄ちゃん!おかえり!」と言いながら俺に抱きついてきた。

「おっと、ただいま。凛音。とりあえず降りてくれ。今日は霧香が家に来てるからな。」俺がそう言いながら背中をポンポンと叩くと、

 

凛音は「はーい。」と言ってぴょんと俺から降りた。

 

後ろを見るときりが、「お、お邪魔します…。」と遠慮しながら言っていた。

 凛音は後ろにいるきりに気づくと、「あっ!霧香お姉ちゃん!」と言いながら次はきりに抱きついた。

きりは「ふわぁっ!凛音ちゃん!?」と驚いて、ふらつきながらもしっかりと倒れないように凛音を抱きしめていた。


「り、凛音ちゃん、首、首しまってる!」


凛音はきりから離れると、少ししょんぼりして、

「あっ、ごめんなさい!霧香お姉ちゃん。家に帰ってきてからママに霧香お姉ちゃんが家にくるって言われて、ずっと玄関で待ってたの。会えるの楽しみにしてて。いきなり抱きついてごめんね?」と言った。


まぁ、いきなり抱きつくのはな。ていうかずっと玄関で待ってたのかよ。すごいな。


「えぇっ!?ずっと玄関で待ってたの?ごめんね?待たせちゃって…。」とおちこむきり。「ううん!待ってるの楽しかったから!」とニコニコ笑いながら言う凛音。

ははは…。テンションが真逆だな。

流石に俺もずっと落ち込んでいるのは見てられなかったから、

俺はきりに「凛音も自分でやったんだから、そこまで気にしなくていいよ。ほら、凛音もこんな感じだし。」

凛音の方を指差すと凛音が「そうだよぅ、もうっ!そんなに落ち込まないで!霧香お姉ちゃん。あたしが好きでやったんだから。霧香お姉ちゃんは悪くないでしょ?」

「あ…。ふふっ、そうだね。私悪くないね。」

「そうそう、それでいいの!」

凛音は今更気づいたように「あ、霧香お姉ちゃん、お兄ちゃん、ママがお菓子準備してリビングで待ってるよ!」と言った。

俺たちは凛音に

「「うん。分かった!」ああ、俺たちは手を洗ってからそっち行くよ。」と答えた。

「はーい!」


手を洗ってからリビングに行くと、キッチンの方からふわっと甘い香りが漂ってきた。

キッチンの方を見ると母さんが「霧香ちゃん、いらっしゃい。」とオーブンからお菓子を取り出しながらこちらを向いてにこりと笑っていた。


「はっ、はいっ!お邪魔してますっ!今日は急にお家に来てすみません!」

だいぶ緊張してるな、霧香。この調子で大丈夫か?


「ふふっ、緊張しなくても大丈夫よ。クッキー焼いたのよ。昨日から仕込んでたから。霧香ちゃんの好きだって言ってたチョコチップのクッキー。」


「母さん、もしかして来るって分かってたのか。どうりで昨日からテンションが高いわけだ、昨日も夜に家帰ってきてすぐに「お菓子の仕込みするー。」なんて言うからびっくりしたよ。このためだったのか。」

母さんは食器棚から平皿を取り出して、クッキーを盛り付けながら

「ええ。元々引っ越すのは知ってたんだけど、一昨日ぐらいに霧香ちゃんからこちらに引っ越して学校にも通う準備ができたって連絡が来てたの。だから昨日は、仕事終わりにはりきってお菓子の仕込みしたのよ。家に来なかったとしても、お菓子はわたすつもりだったから。」と返してくれた。

俺はテーブルに座りながらきょろきょろと周りを見ている霧香を手招きして横に座らせた。

「…!あ、ありがと。」

「霧香ちゃん、飲み物何がいい?今から紅茶と珈琲を淹れるつもりなんだけど、どっちがいい?砂糖とミルクはそっちに持っていくから好きな量入れてね。」


「あ、じゃあ紅茶にします。」と霧香が言ったあと、すかさず凛音が「ママー、あたしは珈琲にするー!」とちゃっかり自分の分もお願いしている。

凛音や俺はいつも紅茶と珈琲を気分で選ぶからその時によって飲む物が違う。、ミルクや砂糖の量もそうなんだが。

兄さんと母さんは断然紅茶派何だよな。で、父さんは珈琲派。

うちは結構飲み物の好みが分かれるので、お茶をする時は毎回紅茶と珈琲が出てくる。

「ふふっ、分かったわ。奏音はどっちにする?」と母さんが俺に聞いてきた。

「俺は珈琲にする。」今日は珈琲の気分だし。砂糖はなしにしようかな。

なんて考えながら俺が言うと、

霧香が意外そうに「へぇ、かな君珈琲飲むんだ、私、苦いから飲めないんだよ。」と言ってきた。

「まぁ、好みなんて人それぞれだしな。」

「ふふっ。それもそうだね~。」

和気あいあいとした雰囲気が漂う中、母さんがお盆にお菓子と飲み物を載せてこちらに来た。

「じゃあ、食べましょうか?」と母さんが言ったあと、


「はーい!いただきまーす!」


「そうだな。いただきます。」


「うん!いただきます!」


各々いただきますと言ってクッキーを手に取り始めた。


「ふふっ。それじゃぁ、いただきます。」


楽しいおやつ時になりそうだな。

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