No.5 学校の最後の授業が一番めんどくさくない?

「きりーつ、れーい」 「「「ありがとうございましたー。」」」


「はぁぁぁ…疲れた。」

 ようやく最後の授業が終わった。昼休みが終わって、急いで教室に戻ったその後は掃除をして普通に授業を受けた。クラスメイトからの視線はきつかったが。

 家帰ったら課題終わらせて飯作んねぇとな〜。なんて考えていたら、霧香に声をかけられた。横を向くと、

「ねぇ、かな君今日に一緒に帰らない?家近いし街の案内してくれると嬉しいな。」と上目遣いに目をキラキラさせながら言った。くぅっ眩しい。そんなに見つめられたら断れないだろうが!

「あ、ああ、いいぞ。」

「やたっ!」

 よほど嬉しかったようで、霧香は満面の笑みでガッツポーズをしている。可愛いな。なんてのんきにきりのことを見ていたら、殺気というかなんというか目があったら殺されそうな視線が背中にチクチクと刺さっている。

「ねぇ、かな君、帰る準備出来た?早く行こーよ。」

 横からシャツを引っ張られ横を見ると、霧香が頬をぷくっと膨らませて、少し怒った様子で俺を見ている。かわいい。

「すまんすまん。それじゃ、帰るか。あ、霧香、俺今日自転車で来たから自転車取りに行ってもいいか?」

「うん、いーよ。校門で待ってる。私も明日から自転車で学校に行くから。一緒に学校行こうね?」

 虚を疲れた俺は「へ?」と間抜けな声を出してしまった。

きりは、「ふふっ。じゃぁ、先に行ってるね!」と言って小走りで教室を出て行った。その時の霧香の笑った顔は誰もが見惚れるほどに綺麗だった。

俺はハッとして顔を叩いた後、自分の自転車を取りに行ってきりの所へ向かった。




ーーーーーーーーーーー




校門につくと霧香がこちらに気付いたようで、手をぶんぶん振りながらこちらを見ている。

急いで近くまで行った。「遅くなってごめん。」と俺が言うと、

「かな君〜!もうっ、遅いよぉ。ここにいたら他の人に迷惑かかるかもだし、歩きながら話そっ。あっ、そういえば待ってたときにかなくんのお兄さんに声かけられたよ。」

「ごめんて、次は急ぐから。で、兄さんに会ったんだ?」

兄さんきりのこと知ってたんだな。はぁ、家帰ったら問い詰めるか…。

「うん。お兄さんおっきかったね。昔あったときもそうだけど、今はもっとおっきくなってた。いきなり声かけられた時はびっくりしたよ〜。」

確かになぁ。むかしっから兄さんでっかかったもんな。

「あはは。すまんな。兄さんに言っとくよ。」

「ううん。だいじょーぶ。そーだ。帰るときかな君の家によってもいい?」


「え?ああ、ううん。多分大丈夫だと思うけど…。一応母さんに聞くよ。少し電話していいか?」

「うん!いいよ。」

「ありがと。」

プルルルル プルルルル

『はーい。なぁに、奏音。何かあったの?』

「ああ、母さん霧香のこと覚えてるよな。」

『ええ、覚えてるわよ。』

「今日霧香がうちの学校に転校してきてさ。今一緒にいるんだけど、家に一緒に行きたいって言ってるんだ。いいか?」

『あらぁ、霧香ちゃんにもう会ってたのね。それなら話が早いわぁ。霧香ちゃんも連れてきていいわよ。おもてなしするから♪』

「やけに嬉しそうだな。母さん。」

『だって霧香ちゃんに会えるんでしょう。嬉しくもなるわよ。』

「そういえば、母さんと父さん、霧香と連絡とってたのか。霧香と会った時初めて知ったんだが。」

『あなた以外みんな霧香ちゃんと連絡とったりしてたりしたわよ。』

「じゃあ、なんで俺は知らないんだよ。」

いや、ホントなんで?

『あぁ、それは、霧香ちゃんが恥ずかしがってかな君と話せない〜!って言ってたからよ。私達は奏音と話してみたら?って言ったんだけど、かな君に会ったときに直接話すって言って聞かなくてね。それで、私達もナイショにしてたの。ごめんなさいね。ちゃんと話せてなくて。』

「あぁ。そういうことならいいよ。」

『あら、そう。てっきりもっと拗ねると思ってたんだけれど。』

「拗ねねぇよ、子供じゃないんだから。はぁ、じゃぁ、電話切るぞ。」

『えぇ、お茶菓子準備して待ってるわね。』

「分かった。」

プツッ

「どう?お義母さんいいって?」

きりが電話を終えるとそう聞いてきた。

「ああ、いいってさ。お茶菓子準備して待ってるだそうだ。」

「お義母さん優しいね。会ったらちゃんとお礼言わなきゃいけないね。」

「そういえばきり、母さんに聞いたんだけど俺には恥ずかしくて連絡できなかったってどういうことだ?最初に言ってた話と違うけど。」

じっときりの方を見るときりの体がビクッと跳ねた。

「え、えっとぉ、最初に話した内容もホントなんだけど、お義母さんが話した内容もホントだよ。ほ、本当に恥ずかしかったんだよぉ。かな君に実は女の子でしたー!なんて軽々しく言えないしぃ。」

まぁ、普通そうだよな。霧香の方を見ると涙目で顔を真っ赤にしてぷるぷる震えていた。

「ごめん。そうだよな。よしっ、この話はまた今度にしよう。とりあえず家に帰りたいし。」

霧香はまだ赤い顔で「うん、そうだね。」と言った。

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