第71話 性について
どんな作品を書くにせよ、性というテーマはわたしにたち書き手にとっては避けては通れないテーマである。真正面から取り組むべきテーマでない作品であっても、書き手にとって、「性とは何か」を問われる場面があり、直接的な行為でなくとも、人を好きになるステップであっても、ささいな男女の触れ合いであっても、人間が存在するかぎり、性とは無縁でいられない。
村山由佳先生の「海を抱く BAD KIDS」に出てくる藤沢恵理という十七歳の少女がいるのだが、村山先生は等身大の性について赤裸々に書いている。そこには十代ならではの「表向きの自分に対する裏側としての性」が書かれていて、わたしたち同様、現実とある種の幻想である性への葛藤を見事に表現している。恵理が大人の男性にオスを感じる自分に戸惑い彷徨う様は実にリアルで、わたしは大変素晴らしいと思う。
わたしもこの年になると、性について書くことはあっても、自身がその中に身を埋めていくことはほとんどなくなってきた。しかし、性行為がうすのろな行為ですらなくなった今だからこそ、性をどこか客観的に(直言すれば他人事として)見つめることができるようなっているような気がする。
つい最近、「沼の中で」という短編を書いた。物理的な性行為を超えた「精神的な性行為」を表現したくて書いてみたものである。生物的な性に振り回されていた若い頃には感じなかった、精神的な性という存在に気がつき始めているような気配を感じているから書けたのだと思う。
人間である以上、性とは離れたくても離れられない。そこにどう向き合っているかによって、いち作家として、あるいはひとりの女として、生きていることに対する答えが見えてくるのではないかと思っている次第である。
(雑記より)
※夜の読み物ですので、たまにはこんなことを書いてみました。(2024.4.11)
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