第2話 夜の帳に現れる怪物
恋愛物を書くのは深夜に限る。深夜の帳を捲ると人は感傷的な気持ちになれる。生理的な仕組みは知らないけれど、わたしは落ちついて愛を叫ぶ用意をすることができる。夫を寝室に押し込んだ後、薄暗くした書斎に籠り、自分が経験したり見知った恋愛の記憶というアルバムを広げていく。これまでたくさんの人を好きになり、嫌いになり、好かれたり、嫌われてきた。人間とは面白いもので、己が持つ魂のポジショニングの為に恋愛をすることがある。自分という存在が難破しないように、恋愛によって錨をおろすのだ。
わたしも若い頃は自分を受け容れてくれる港が欲しかった。ギフテッドなんて言葉のなかった時代。変人であり生意気な女と随分言われてきた。中学になるとおきまりのようにグレた。誰にも理解されない絶望は身に染みた。いつか誰かに理解されると思いながら生きてきた。眩しいくらいに純粋で若かったのである。
あの時代を振り返りながら、恋愛物を書いていく。人が人を好きになるのに理由などはない。だけど、小説は読者に理由を伝えなければいけない。わたしは暗い洞窟で登場人物の叫び声を文字にしていく。理由なき理由を魂の叫びで表現していく。こんなこと、太陽の眩しさが残っているうちに書けるわけがない。神が夜を与えくれたのは、きっと人には愛を文字で刻む時間が必要だからだと思ったのだろう。わたしはそんな神に感謝しながらも、朝を迎えると、自分の書いたものに今だに赤面してしまう。それだけ、深夜の怪物とは恐ろしい存在なのだと、毎回思うのであった。
(没作より)
※何を言いたいのかわからないので、没になりました。深夜のテンションで筆を走らせてクラッシュアウトしてしまったようです。(2024.2.11)
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