第13話 体育祭〜練習編〜
オレたちは本番に向けて練習を始めることにした
オレはあることに気づいてしまった
「お前ら……なんか弱くね……?」
そうだ、弱いのだ
オレを囲んでおいて倒せなかったので弱いことは明白なのだが、
オレの想像よりも弱すぎたのだ
「お前が化け物なんだよ!」
そう声を荒げたのは入江(いりえ)という男子生徒だ
「まぁまぁ落ち着いて、あたしたちが弱いのは本当のことだから
同盟組んでなんとか勝負になってたからね、麟斗くんとはまったく勝負にならなかったけどね」
紫紺のショートヘアーが特徴的な 岩崎雫(いわさきしずく)という女子が入江をなだめる
「ったくよぉ!?俺達のチームが揃って出るはずだったのにお前のせいでよぉ!?」
なぜかキレている
戦力はアップしているはずなのに…
「だめだよ入江、キレちゃ、麟斗くん困ってるじゃん」
岩崎さんもしれっとオレのこと名前呼びしてるし
「あの、麟斗くん、ごめん、入江はこんなやつだけど根は悪いやつじゃないから許して欲しい」
岩崎さんがなぜかオレの手をにぎにぎしながそう言われてしまった
「あたしは麟斗くんとチーム組めてよかった だって強いもん あたしのこと守ってよね?」
謎のおねだりをされてしまった
体育祭の時のルールは最後まで生き残ったチームが勝利で1人でも生き残ればいいので守ってやる義理はどこにもないのだが……
「チーム戦の時は弱いやつを守って導いて強くするのが強者のすることだ」
オレの頭の中にとある男の声が聞こえた
あぁ、そうだな とオレは思ったので
「岩崎さん 一緒に行動しよう」
オレはその誘いを受けることにした
その男の声は懐かしかった
一瞬頭の中がフリーズしたが、すぐにあいつのだと気づいてちょっぴり安心した
まだあいつからの言葉を重く受け止めているのか……という思いもあるのだが
あいつがオレに残してくれた大切な言葉だ
守ってやらないとな
「あの〜、ゲームでチーム組むからと言って私生活でも一緒の必要ありますか?」
オレは昼休み
食堂で岩崎さんと一緒に昼食を食べていた
「あたしは麟斗くんのパートナーだからね 息を揃えるためにできる限り一緒の方がいいと思って」
語弊のある言い方やめてくれ
オレの本当のパートナーはサキだ
サキと一緒がいい
サキと付き合って色々なことして結婚したい
という気持ちがある
本当はサキと一緒に出たかった
でもサキは自分の意思で選ばなかった
ちくりと心が痛む
「ねぇ、あたしのこと雫って呼び捨てにして?」
いきなり岩崎さんがそんなことを口にする
「いきなりどうして?」
「その……パートナー……だから……」
果たして呼び方程度で変わるものなのか?
オレはよくわからなかったので試しに名前呼びしてみることにする
「雫、オレと一緒に優勝しようね」
やべ、思ったよりも恥ずかしい
サキのことはいっつも呼び捨てにしてるはずなのに
なぜ慣れないのか?
「うん、あ、ありがと……名前呼びしてくれて……」
ちょっと顔を赤くしながら岩崎さんこと雫がそう言う
きっと彼女も恥ずかしいのだろう
ならなんで名前呼びさせたのか?
オレはよくわからなかった
「おい!水無月男!なんでお前女の子と楽しそうに食事食べてんだよ!」
オレのせいで出場できなかった大川という男子生徒がオレに怒ってきた
声が大きかったため余計注目を集めてしまう
「やめろ!麟斗くんは何も悪くない!責めるのは間違ってる!」
雫がオレのために反論してくれる
「岩崎、お前なんかに用はねぇんだよ!」
大川が雫のことを突き飛ばす
「きゃぁっ!」
オレは咄嗟に雫のことを抱きしめた
「大丈夫?怪我はない?」
「うん、ありがと、麟斗くん」
雫が突き飛ばされたせいで余計注目を集めてしまったようだ
そこに
「 はいはい!暴力はおしまいだよ!」
仲裁に入る白髪で髪型はおさげの女子生徒
「おい!柳原(やなぎはら)!お前は関係ないろ!」
大川が反論する
どうやらこの女子生徒は柳原というらしい
「同じ食堂を利用する人間として関係ないとは言わせないよ?そもそもとしてこんなことろで大声出したり暴力振るわないでもらえる?雰囲気が悪くなるから」
ものすごい正論パンチだ
「うっ……」
大川はその場を後にした
「君たちは大丈夫?」
「あたしは平気だよ」
なぜかオレを強く抱きしめて雫が答える
なんで強く抱きしめてるのやら…
「あらあら……抱きしめられてる赤髪のきみは……大丈夫そうだね、よかったぁ……」
そう言い、柳原という女子生徒はその場を後にするのであった
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次回
体育祭〜練習編其の2〜
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