第5話

アナタは何を思っていますか?

でも、もうこれで良いんだ。

今までもそうだった。私の心の中にだけ存在する大切なアナタがいるだけで。


前に飲んだ時教えてくれた、初めて聞いたアナタが思っていたこと。

私は今まで自分の想いばかり気にして、アナタがどう思っているかなんて考えたことなかった。

というより、私の事なんてただの同級生としか感じてないと思っていた。

これが、長い長い付き合いの中でたった一回聞けたアナタの想いだった。


「ずっと俺のこと忘れないでいてくれて、繋がっててくれて感謝してる。

でも、、、それ以上の感情はその頃は申し訳ないんだけどなかった。

ただアナタを思い出す事もある。元気かなーって。

ほんと俺、高校中退してから

誰とも付き合いなかったし、音信不通だったから

唯一連絡取ってくれてたのはアナタしかいない、、、ありがたかったし、嬉しかった。

でも突然結婚すると報告を受けた気がする。

その時は、もう結婚するし、邪魔しないようにしないと。って思った記憶がある。 

寂しくなった記憶もある。

・・・・

30代何人かお付き合いして、でも向こうが結婚したがっていても、答える事ができなくて。

向こうからさようならされた事もあったり。

なんで結婚しなかったかは、色々やっぱり

仕事もそうだし、結婚に踏み切る自信もその頃はなくて、、やっと結婚する責任が持てたのが

40ぐらいの時で、今の嫁はまぁいっか...ぐらいの気持ちで結婚したんだけど。

タイミングだよね。ほんと。結婚する自信が持てなかったのと一緒で

あの頃はアナタの近くにいる事ができないし

会える訳でもなかったし、こっちに来て!とも言える状況じゃないし、何もできなかったから。

気持ちに答える事ができなかったから...ごめんね。決して嫌いな訳じゃないし

電話来たり手紙いただいたりして嬉しかった記憶がある。

でも自分がいるこの環境でアナタの気持ちに答える事は出来なかった。

他に良い人近くにいるよ...

と思うしかなかった、、

ごめん。


アナタから婚約してる。結婚する。と突然聞いた時、複雑な気持ちになったのは覚えてる。

オレもたぶん知らず知らずのうちに心の中に当たり前にいた人だったから。

答えられずにいたのに、結婚を聞いて心から喜んであげられはしなかった。

おめでとうとは言ったけど、心からのおめでとうではなかった。でもあの頃のオレには

どうする事も出来なかった。ごめん。結婚したら流石に連絡は取れないし

取っちゃいけないと思うようにした。アナタからも連絡来なかったし、、、

でもほんと10年以上メールも電話もしなかったよね。もともと会ったりしていなかったけど、

でも頻繁に連絡くれて、オレの中では一番大きい存在であり続けていて

でもどこかで好きになっちゃダメだと自制してる自分もいたと思う。


オレそこからかなー、、他に目を向けるようになったのは。何人かお付き合いしたけど、

やっぱり自分にまだ家庭を持つ自信もなくて。

何人かダメになって。


ほんと昔のりんちゃんのこともそうだし

俺最低だよね。アナタの気持ちも分かってはいたけど、分からないフリして続けてて、

お互い近づくことも遠のくこともなくなんとなくの距離感で存在し続けてさ。

今思うと酷い男だと思う。


俺も貴方が心の中にずっといてくれていたから

遠い奥地で一人寂しかった時、色々元気もらったし、楽しかったし、ありがたかった。

いつからかアナタからの連絡を待っていたこともある。

ほんと全部タイミング。俺タイミング悪すぎるんだよね、、アナタの気持ちに応えられず

何十年もその事には触れず、時間が出来た時に

身勝手に連絡して、、でもいつもアナタは気持ちよく受け入れてくれて。ほんとに申し訳なかったと思ってる。


もし生まれ変わる事ができたら

あの頃に戻れるのなら、もう一度ちゃんとアナタと向き合うと思う。そのぐらい俺も大きな存在だったから。今、アナタの素直な気持ちを知って俺もあの頃に戻りたいと思ったよ。」


どうしよもない現実と遅すぎる後悔と、いろんなタイミングを逃した結果と。

私達は今やっと気が付いたんだ。

でも昔にもっとアナタとの距離が近づいていたら、こんな気持ちにもなれなったのかもしれない。アナタとは、何年経っても老人になってもこの不思議な距離感で存在する運命なんだなと。

何十年経っても、あの頃と変わらない心の中の主なんだ。

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