第25話 居城決定
亜蓮の居城の候補としては、
①
②嵐山城(現・西京区)
③
④船岡山城(現・北区)
⑤淀古城(現・伏見区)
の五つが現実路線だ。
(……船岡山かなぁ)
濃姫に膝枕されながら、織田信長は考える。
「お決まりになられましたか?」
「いいや、悩むね」
「でしたら1番近い所の方が良いのでは? その分、管理し
1番近い所で言えば、五つの中で船岡山城だろうか。
「そうだなぁ」
信長が悩んでいるのは、
淀古城は
信長としては、山に
そういった意味では、淀古城の方が良いのだが、
「……悩むなぁ」
「
《美濃の
そんな
「……決めてくれ」
「では、船岡山城で」
「理由は?」
「近いからです」
船岡山は、300年後の明治3(1870)年に信長とその息子、信忠を主祭神とする神社が創建される為、そういった意味では織田家と関係が深い場所だ。
「単純だな」
「単純ですよ」
濃姫は微笑むと、信長に
「船岡山城か」
引っ越し先が決まり、亜蓮は呟く。
御所と船岡山城の距離は、
・徒歩 堀川通/鞍馬街道/府道38号 経由 2・7㎞ 40分(*1)
・バス 京都市営地下鉄 京都市営バス 36分(*1)
・自動車 今出川通り/府道101号 と 千本通/府道31号 経由 3・3㎞ 11分(*1)
と現代換算で言えば約3㎞と言った所だ。
近い分、引っ越すのも楽である。
「
「神社に参拝したことあるよ」
「神社? あそこにありましたっけ?」
「あー、勘違いだ。でも、登ったことあるよ」
井伊直政を抱っこする。
後に《井伊の
「あそこ高いですか?」
「どうだろ? 1町(109・09m)くらいだからねぇ」
船岡山は標高112m(*2)。
京都府の平均標高が260m(*3)なので、平均よりかは低いことになる。
「
「いや、そうでもないよ。ただ、子供には疲れるかもだけど」
大人と子供では、体力と歩幅が違う。
その為、大人が平気な山でも子供には厳しい場合もあるだろう。
「むぅ」
子供扱いされた直政は、不満げだ。
「義父上は
「元服前は子供だよ」
「元服後も子供扱いするんですよね?」
「そりゃあ我が子だしね」
嬉しい半分、悔しい気持ちもある直政だ。
「義父上を……超えたいです」
なりたい、ではなく超えたい。
直政の目標が定まった。
「その意気だ」
亜蓮は微笑むと、くしゃくしゃになるまで直政の頭を撫で回すのであった。
亜蓮とお市は、日々愛し合っている。
というか、新婚から毎日だ。
時折、井伊直虎もその交わりに混ざり、亜蓮等は
七夕の夜。
3人は愛し合った後、縁側から天の川を見上げていた。
右隣の直虎が言う。
「そろそろ引っ越しですね」
「そうだね。準備出来た?」
「はい。ばっちりです」
「お市は?」
「勿論よ」
左隣のお市がしな垂れかかる。
2人は
歴史的には、妾が公認だった時代の方が長い。
※1
明治3(1870)年12月、『新律綱領』(布告第944)
妻と妾を同等の二等親と決定
明治13(1880)年7月、刑法(太政官第36号布告)「妾」に関する条項消失
明治15(1882)年1月、施行
※内務省「刑法の改定は戸籍上に関係無之(関係これなし)」
「(刑法施行前に入籍した妾は)
明治31(1898)年、戸籍法によって戸籍面から妾の字消失(*4)
この為、明治初期の28年間は、「国家が妾を公認していた」と言えるのだ。
芸能人が不倫でCMや番組を降板する
亜蓮は2人の頬に接吻後、尋ねる。
「子供達は寝た?」
「ええ」
「幸も寝ましたよ」
お市が頷き、直虎が答えた。
今度はお市が尋ねる。
「亜蓮様、今後、
「洛中から洛外に仕事の範囲が広がるよ」
「洛外は治安が悪いから心配ですわね」
洛中はなんだかんだ御所が近い分、御所は
一方、洛外は
戦災孤児や盗賊、
「最終的には
直虎が更に密着する。
「……統一は、
「分からんね。毛利に伊達に北条に上杉、武田、島津……強敵揃いだよ」
「あれ?
「鳥なき島の
織田信長は、四国を統一した長宗我部氏21代当主・長宗我部元親(1539~1599)を「鳥なき島の蝙蝠」(*5)と表現したとされる。
・18世紀に成立
・鬼や大蛇等が登場
の為、史実性は低いと考えられており、発言の信憑性の程は定かでない(*6)。
元親自身、若い頃は《鬼若子》(*5)と戦場では猛将だったが、四国統一後は、信長や羽柴秀吉と対立し、最後は四国の役(1585)で敗れ去った。
「大きく出ましたね」
「四国は平定出来るからね。問題は九州だよ」
「《鬼島津》ですか」
「正面からぶつかると、沢山死人が出るだろうな」
亜蓮は2人を抱き締めて、平和を祈るのであった。
[参考文献・出典]
*1:グーグルマップ
*2:建勲神社 HP
*3:都道府県別統計とランキングで見る県民性 2018年1月31日
*4:村上 一博「明治前期における妾と裁判」法律論叢 明治大学法律研究所 1998
*5:『土佐物語』
*6:ウィキペディア
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