第12話 妻と女官と護衛
お市との正式な
「亜蓮様♡」
外でも風呂場でも
恐らく日本一の高身長の亜蓮と、日本一の美女の夫婦の存在は、一気に
「凄いな。6尺(約180㎝)もあるとは」
「体重もそれなりにあるし、体格も凄そうだな」
「その
一部では49日を過ぎていないのにも
元亀元(1570)年5月28日。
「亜蓮様♡」
外出した亜蓮は、お市と手を繋ぎながら歩いている。
同行者には女官の幸姫と、
「市、
「鴨川の方に行きたいですわ」
「分かった」
鴨川は、白河法皇(1053~1129 在:1073~1087)の『
その暴れ川っぷりは、昭和でも健在で、昭和10(1935)年に発生した鴨川水害では、
・死者 12名
・負傷者 71名
・全半壊 482戸
・浸水 37・2㎢
と、被害が出ている(*1)。
「幸、鴨川の今の水位は?」
「今朝、確認した段階では観測開始水位ですね」
「まだ大丈夫そうだな」
行く時はその
幸姫が問う。
「神宮寺様、鴨川までは
「市、
「乗りたいですわ。徒歩だと疲れますしね」
「分かった。幸」
「では、
「ありがとう」
幸姫が
「(神宮寺様)」
直虎が
「(先日は
「あー、気にしてないよ。今日、虎松は?」
「
「了解。将来が楽しみだ」
初対面なのに高く評価してくれる亜蓮に、直虎は感謝しかない。
「あの子は、父の愛を知らぬ可哀想な子供です。神宮寺様が高く評価して下さり、幸いです」
「俺だけじゃないよ。
「……ありがとうございます」
自信満々に言われ、直虎は笑顔を絶やさない。
宇治でお市等を救ったスーパースターに断言されたのだ。
これで喜ばない者は、
(虎松が言う
段々、亜蓮に
数分後、幸姫が
「直虎、頼んだよ?」
「はい」
直虎に笑顔を振りまいた後、亜蓮は客車に入る。
「
夫婦になってから初めての
余談だが、茶々とお初は、今日も
現代だと子供の世話は、父親や母親が行う場合が多いだろうが、この時代だと武家等の場合は乳母に頼ることが多い。
その為、お市は育児をする必要が無く、逢引にも
今にも始まりそうなくらいにお市は、亜蓮と密着する。
「早く亜蓮様の子供を産みたいですわね♡」
「ありがとう。でも、ゆっくりで良いよ。
「茶々とお初?」
「うん。
しっかりとした考え方に幸姫は、驚く。
「育児を
「そりゃね。俺の子供にもなるんだし」
「「!」」」
お市と幸姫は、目を剥く。
浅井長政の
そんな中、はっきりと「子供」と言うのは、亜蓮が姉妹を実子の
「……
「ありがたい。でも、赤ちゃんだろう? 寝ている時は寝かせたいから、子供の体調が優先だね」
「……はい」
お市は微笑む。
まだ会っても無い子供のことを第一に考えるのは、相当な
幸姫も幸せな気持ちでいっぱいである。
(戦の世の中だからピリピリする男が多いんだけども……亜蓮様は、育児がお好きな
男女共同参画社会基本法(1999年 施行)が無いこの時代は、令和以上に男女差が激しい時代である。
城主は直虎等、一部を除いて基本的に男性。
政治を運営するのも男性で、女性は乳母等が代表されている
そんな時代に
幸姫は笑顔で亜蓮の隣に座る。
「神宮寺様」
「うん?」
「一生、お
そう言って、亜蓮の硬い手の甲に触れるのであった。
「……」
脳裏にあるのは、
———『俺の子供にもなるんだし』
はっきりと、亜蓮は姉妹を
(……姉妹は、幸運ね。味方が出来た訳だから)
対照的により不運だったのが、長政の
2人は姉妹と違い、助命が許されず、秀吉によって
万福丸 享年6歳。
井頼 享年0歳(※史実では、井頼は1661年(*4)まで存命)
兄弟の運命と比較すると、姉妹は亜蓮という味方が居るのは非常に幸運のことだ。
ふと、直虎は考える。
(
前夫の子供を認知するのだから、若しかしたら万福丸等も
否、やはり男児だから難しいか。
平清盛が源頼朝を助命したことで、平家が滅んだ前例がある以上、男児の助命は亜蓮の
性別が運命の分かれ道とは、まさに
(……私は……)
手綱を握りながら考える。
最近は、ふとしたことで
原因は、直政による積極的な後押しだ。
(……好きなのかな? 神宮寺様のこと)
ずーっと考えていると、鴨川に着いた。
「鴨川に着きましたよ」
「ありがとう、お疲れ様」
亜蓮は笑顔で
「段差、気を付けてね?」
「はい。亜蓮様♡」
気遣われたお市は、笑顔で頷く。
最後に幸姫が降りる時も、
「大丈夫?」
サッと手を出し、幸姫が段差で転ばない
「ありがとうございます♪」
幸姫も笑顔で降りた。
「お優しいですね?」
「そうかな?」
「好きですよ♡」
「ありがとう」
幸姫の告白を亜蓮は、笑顔で受け流す。
(……告白慣れしている?)
少し
金ケ崎合戦前でも、相当、女性人気があったかもしれない。
(……
それが当たるのはそう遠くない未来であった。
[参考文献・出典]
*1:ウィキペディア
*2:『翁草』
*3:『浅井三代記』
*4:四国新聞 1987年10月6日
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