第3話チャリパイの実力

シチロー、ひろきの後は子豚の尾行を開始するジョン。

森永探偵事務所を出発した子豚は、JRの山手線に乗る為に新宿駅へと向かっていた。

ジョンはアルマーニのスーツに身を包み、その後ろを軽快なフットワークで時折電柱の影に隠れながら尾行を続ける。


(よし、今のところ全くこちらの存在には気付いていないようだな…相変わらず完璧な尾行だ)


先程のような失敗は許されない。今度こそ子豚を完璧に尾行し、その行動パターンからノート奪還の為の有益な情報を取得しなければならない。

新宿駅の東口階段に差し掛かった時、子豚は立ち止まり腕時計の文字盤と時刻表を交互に見比べながら呟いた。


「あら、走れば次の電車に間に合うわ…」


ジョンが僅かに油断して一息ついた瞬間、突然子豚が走り出した!


「まさか!か?」


今のは完全に隙をつかれた。見失ってはなるものかと、慌ててジョンも子豚の後を追う!


「ラッキー、グッドタイミング♪」


子豚が山手線のホームへとたどり着いた時、緑色の電車はちょうどホームへと現れた所だった。


「ハァ…ハァ…この電車に間に合う為に走ってたのか…」


急に全速力で走ったもんだから、息が続かず肩で息をするジョン。この任務が終わったらジムに通って身体からだを鍛え直さないとな…と、本気で思った。そして、子豚が電車に乗る所を確認すると、ジョンも気付かれないように子豚の一つ後ろの車両へ乗り込んだ。


子豚は全くこちらに気付く様子は無い。ジョンは小さくガッツポーズをした。


「よし、上手くいったぞ!」


やがて電車内にブザー音が鳴り響き、電車の扉が閉まろうとした瞬間…



「座れないから、やっぱりにしよ~♪」

「ああぁぁ~っ!」


ガタン…ガタン…


ドアが閉まる瞬間に子豚に降りられてしまったジョンは…閉まったドアのガラスに顔を付けながら、呟いていた。


「日本の探偵ってのは、あんなにも優秀なものなのか…」



♢♢♢



「どうやら、私は日本の探偵を甘く見ていたようだ…」


いつの間にか、日本の探偵のレベルはジョンの想像の範囲を大幅に超えて上がっていたらしい。今までの資料はもう役に立たない、早急にアップデートする必要があるだろう。


ジョンは作戦を変更し、事にした。本当はこういった泥棒のようなやり方はジョンの流儀からはかけ離れたものだったが、ここまでこれといった成果も見せていないジョンには、手段を選んでいる余裕など無かった。


その晩、事務所ではてぃーだがノートとにらめっこしながら暗号の解読をしていた。


「え~と、逆さに読んでもダメだし…斜めに読んでもダメか…」


色々な方法で解読を試みるも、なにもヒントは浮かんでこない…すると突然、てぃーだのスマホがメールの着信を知らせた。


「ん?誰かしら…」


メールの送信主は、てぃーだの後輩の芝居仲間からだった。その文面を見たてぃーだが眉根を寄せて呟く。


「え~と…コンバンワ…え~…なにこれ?昔流行った『ギャル文字』じゃないの…何て書いてあるかよくわからないわよ…」


てぃーだはメールを読むのをやめ、スマホを机の上に置いた。


「こんなの、まだ使っているなんているのかしら」


と、その時突然てぃーだの頭にあるアイデアが浮かんだ。


「そうだわ、この暗号、これはなのかも!」


解読のヒントを得たてぃーだは、家でじっくり解読をしようとノートと辞書を持って事務所を後にした。

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