第2話C I A
「何か文字が浮かび上がってきたよ……」
ひろきが指摘するようにノートの水をかけた部分から、何やら文字のようなものが浮かび上がってきた。水で濡れた部分だけその文字が見える事から、それは特殊なインクで書かれたものであろう……
しかしその内容は、日本語でも英語でもなくまるで暗号の様でシチロー達四人には解読出来るものではなかった。
「アルファベットと記号が羅列してあるわね……何て書いてあるのかしら?」
「これは何か事件の匂いがしてきたぞ。探偵の腕の見せ所だ」
シチローが目を輝かせ、嬉しそうに呟いた。
「じゃあ、この暗号を解読した人が、みんなに奢って貰えるってのはどう?」
そんな案を子豚が提起する。こういうイベントを考える才能に関しては、子豚は天才的なものを持っている。
「よ~し、頑張って解読するぞ~」
早くも乗せられたひろきが子供のようにはしゃいでいた。そして、全員で改めてノートを凝視する。
「う~ん……なんて書いてあるんだろうな、これ……」
♢♢♢
ここは東京の丸の内にある、とあるビルの一角のオフィスの中……
正式には非公開となっているが、この場所にアメリカ合衆国政府国防省統括の秘密諜報機関(分かり易く言えばC I A)の日本支部が存在していた。
「あのノートは、まだ見つからないのか! あれが公になれば、我が国は大変な事態に陥る事になるぞ!」
どうやらあのノートには、アメリカ政府がひた隠しにしているある重要な事柄が記載されているらしい。
「まぁ支部長、落ち着いてください」
淹れたてのコーヒーの香りが立つマグカップを右手にして、怒鳴り散らす支部長を
彼の名は『ジョン・マンジーロ』C I A日本支部では、最も優秀なエージェントの一人である。
「ご安心下さい。あのノートは必ずやこの『ジョン・マンジーロ』が奪還して見せます! 実はもう、あのノートの在処は既に突き止めてあります」
「おおそうか、さすがはジョンだ。仕事が早いな」
「恐れ入ります」
シチローがノートを拾ったが為に、チャリパイはC I Aのターゲットとなってしまった。
しかも、エージェント『ジョン・マンジーロ』の言い草では、そのノートの在処は
もう、C I Aに突き止められているという……
その日からジョンは、極秘にチャリパイの監視を開始した。
♢♢♢
その日、シチローとひろきは事務所の食糧を調達する為にスーパー『アキナイ』へと買い物に来ていた。
そして、二人からおよそ200m以上離れたビルの一室から、ジョンが双眼鏡でその様子を監視していた。
「ねぇ~シチロー、そろそろビールが無くなってきたんじゃない?」
「まだ1ケースもあるよ! どんだけ飲むんだ、ひろきはっ!」
(どうやらただの買い物らしいな……こちらの存在には全く気付いていない様だ。それもそうか、あの二人からは200m以上も離れているんだ。気付かれるなんてあり得ない)
そんな事を考えながら、再び双眼鏡を覗き込み監視を続ける。すると、何気ない会話をしていた二人のうち、ひろきの方が突然双眼鏡の視界の中で自分の方を指差して何か言葉を発した。
「何、気付かれただと! そんなバカなっ!」
ジョンは、思わず双眼鏡から目を離して叫んだ!
☆☆☆
「あっ、シチロー。あそこにティダとコブちゃんがいるよ」
実際にはスーパー『アキナイ』の道路向かいにはハンバーガーショップがあり、てぃーだと子豚はその2階席の窓際で食事をしていた。
「あら、シチローとひろきだわ。ヤッホ~♪」
子豚とてぃーだは、2階席からシチローとひろきに向かってニッコリと微笑んで手を振った。
一方、ジョンの方はあの距離からの監視が気付かれた事にどうしても納得が出来なかった。
「ここからあの二人の所まで200m以上あるんだぞ! どう考えても見つかる筈が無い!」
すっかり勘違いをしているジョンは、気を取り直して再び双眼鏡でシチロー達を覗いた。
その双眼鏡の視界には、こちらに向かって手を振るひろきとアカンベーをするシチローの姿が映し出された。
「なんて奴らだっ!」
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