チャリパイEp.3~大統領の秘密~

夏目 漱一郎

第1話謎のノート

「ん?なんだ、これは?…」


ある日曜日の昼下がり、一人で街を散歩していたシチローは、足元に落ちていた一冊のノートを拾った。

見たところ未使用品ではなく少し使い古されたように見えるそのノートには、使用品ならではの紙の黄ばみがあるものの、特別に何か書いてある様子は無い。

更にどこかに名前でも書いてあるかと表紙や裏表紙を見たが、そこにも何も書かれてはいなかった。


「何も書いてないや…まあ、メモ帳位にはなるか」


何も書いてなければ交番に届ける程の物でも無いだろうと、シチローはそれを事務所へと持って帰った。



♢♢♢



「それはきっとよ!」


眉間にしわを寄せながら囁くように、子豚が言った。


「あの、っていうの?まさか~」

「コブちゃん、マンガの読みすぎだよ~♪」

「でも、実話を基に描かれたマンガだってあるのよ?」

「まあ、そういうマンガもあるかもだけど…」


子豚とひろきがこのノートがデスノートか否か言い合いを始めると、その間にシチローが割って入る。


「じゃあ、ひろきはこのノートはと…」

「そりゃ~そうでしょ」

「だったら試しにこのノートに…と」

「わああ~!ちょっと待った~!もしもって事があるでしょ!」

ひろきが慌ててノートの上に覆いかぶさる。


「それもそうだな…じゃあ、別な人間にするか…と…」

「ホントに書くから恐いわ…」



♢♢♢



尊南アルカイナの羽毛田尊南はげたそんなんは、『六本木ヒルズ爆破テロ』の件で一時的に警察に拘束されていたが、持って行った物が爆弾ではなく只のだった為に『不起訴』とされた。


「羽毛田が生きているか、電話で確かめてみよう」


シチローは、まるでイタズラ小僧のように小さく笑うと尊南アルカイナに電話を掛けた。数秒の呼出音の後に羽毛田の声が聴こえる。


『ハイ、毎度ありがとうございます。こちらは尊南アルカイナでございます♪』

「テロリストが愛想良くしてんじゃね~よっ!」

『おっ!その声はシチローだな?一体何の用だ?』

「いや、と思って」

『変な奴だな…それで用件は何だ?』

とか、そういうのはない?」

『別に…だから用件は何だよ!』

「チェッつまんね~の!」


ガチャ!

「アイツ…なんだか知らねえが、腹立つ…」


受話器を置いたシチローは、退屈そうな表情で呟いた。


「どうやら、デスノートでは無いらしいよ…」

「羽毛田で確かめる事ないでしょ!」


てぃーだが呆れたように突っ込んだ。


やっぱり何の変哲もない普通のノートなのだろうか…拾ったときには、なにかのノートなのではと期待してみたが実際はそうでもなかった…シチローはアテが外れたと大きく欠伸あくびをした。


その時…


「わかったわ!これはお風呂でも勉強が出来るなのよ!きっと文具会社の試作品なんだわ」


子豚がキッチンからヤカンに水を汲んで、そんな事を言いながら戻ってきた。

よく見ると、確かにノートの紙の質は通常の物とは少し違っていた。水に強い素材と言われれば、そうとも思えた。


「大丈夫かよコブちゃん、水なんてかけて」

「わかんないけど、かけてみましょうよ」


どうせ拾ったノートだからと、子豚は遠慮なく水をかける。


「ほら、水に濡れても大丈夫でしょ?」

「ホントだ、水をはじいてる」

「えっ、ちょっと待って!これって…」


確かにノートは水をかけても大丈夫だったが、皆が驚いたのはその変化だった。







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