第5話 昼職と夜職

コロナウイルスの蔓延によって、首都圏に緊急事態が発令されて、継続している。


リモートワークが提唱されて、昼職も申し訳程度に出勤調整も実施されているが、中途半端になっているのに対して、夜職への風当たりは強く、夜8時以降は息を潜めた。




コロナウイルスは、夜行性なのだろうか、9時から17時を中心に方針が決定する。


穿った見方かもしれないが、昼職を実業で夜職は虚業との考えが、根底に存在するように感じてしまう、夜間外出を制限するのではなく、交替勤務を採用すべきだと思う。




前回の東京オリンピックは、10月だったが、諸般の事情を鑑みて、7月開催だ。


地球温暖化の影響で、マラソンは北海道で実施されるが、コロナ対応のドタバタ感を見ているとアスリートファーストは掛け声倒れであり、都民同様に蔑ろにされている。




諸般の事情も煎じ詰めれば、元凶はカネ絡みであり、我利我利亡者が暗躍している。


歴代オリンピックの開催地を鑑みると、発展途上国から先進国の一員へ発展したのは昔話であり、開催後を楽観的に見積もることにより、反動に喘ぎ悶え苦しんでいる。




自由と安全が両立すると考えるのは、甘え若しくは幻想であり、比率を決めるだけだ。


自由を謳歌するのであれば、安全は脅かされて、安全を追求すれば、自由は制限されるトレードオフの関係にあり、アメリカと中国を比較すれば、理解することが出来る。




勘違いしないで欲しい、無責任な反対を唱えるのでなく、挙国一致の醸成が必要だ。


憲法改正の議論さえも拒否するのではなくて、賛否両論を提示するのが責務である、枝葉末節を重箱の隅を突くのを止めて、優先順位を明確にして、迅速に対応すべきだ。




経済は一流、政治は三流と揶揄されていたが、今や経済も風前の灯になっている。


政治家を選んでいるのは、国民であるが責任を自覚せず、マスコミの論調に左右され続けて、他人事を決め込んでおり、民主主義の皮を被った官主主義に矛盾さえ感じない。




保守と革新の壁が曖昧になり、中道若しくは支援者に心地の良い政策が採用される。


恩恵から排除されて、絶望して選挙権を放棄した若者及び弱者が、サイレントマジョリティーとなり、甘い誘いに乗って、特殊詐欺や不正受給の片棒を担がされてしまう。




正直者が報われる神話は、過去の異物になって、稼ぐが勝ちの風潮が蔓延している。


正規雇用から一度脱落してしまうと敗者復活が困難となり、現状維持を金科玉条に掲げるので、上部構造の理想が神輿は軽くてパーで、下部構造は生き残り頭脳ゲームとなる。




国益よりも省益が優先されて、権益及び天下り先が至上命題になり、硬直化する。


総務省はICT、経済産業省はIT、文部科学省はAIで予算を確保して、エッジ効果によって、無駄遣いが、前に倣え、の号令で大なり小なり、無限連鎖で継承される。




需要が供給を生むケインズ革命は、曲解されてしまい、消費こそ美徳に堕落した。


輸入した食料を惜しげもなく、廃棄するだけでなく、恥じることなく廃棄物を輸出することに何の痛痒も感じず若しくは目を背けている間に、災害は忘れた頃にやって来る。




離婚の傷を癒す為、夜の街を徘徊若しくは漂流して、時に漂泊することもあった。


名古屋は夜が短く、深夜営業はフィリピンパブしか選択肢がなかったので、頻繁に通った結果、不法滞在や偽装結婚等の根本的な問題を実地で、体験することが出来た。




東京都下でスナックを経営する年上の女性とは、通い婚のような形態を続けていた。


先方の両親への挨拶を済ませて、僕の両親を訪問する計画をしていると「年上で子供連れの水商売をしている私を受け入れてくれる筈がない」と急遽関係の解消を迫られた。




内部告発により、大阪へ異動が決まると蟠りはあったが、自然消滅してしまった。


親会社となったメガバンクの本拠地である大阪は、東京以上に問題を内在しており、僕は危険人物とされて、東京に舞い戻ることになり、久々の再会を果たすことになった。




水商売に見切りを付けて、介護関係の仕事をしていた彼女と縁りを戻すことになった。


昔からの夢でもあった保母になる為、勉強をして資格取得を目指していたが、年齢の壁によって疎外されて、介護職に従事したが、二人の子供を抱えて、生活は苦しかった。




二人の子供が少女から女性に成長すると、母である彼女は僕のことを警戒し始めた。


実子と同様に考えていた心算であったが、一つ屋根の下で生活をして、彼女の不在中に子供と親密に接することに疑念が生じて、不快に感じるようになり、関係は破綻した。




生活が苦しく、不自由である負い目を感じつつも、僕に依存することを拒否した。


僕も学費を止められて、貧乏学生の悲哀を舐めていたので、子供の要求に従ってしまったが、彼女の意向を確認しなかった為、目障りな同居人となったことに無頓着だった。




高校卒業後、百貨店の美容部員を経て、水商売一筋であり、夢の門戸は閉ざされた。


彼女は夢に固執せず、臨機応変に対応出来たが、経営者であり、経験及び貯蓄もあった為、夜職から昼職の移行が可能であった珍しい事例であり、一般的には困難が伴う。




山手線の主要駅にてスナックを経営する女性は、AV業界の闇部に翻弄されていた。


父のDVから逃げるように、中学生になると美貌を武器に繁華街で生きる術を体得しており、水商売だけでなく、風俗業でも頭角を現すとAV業界から熱烈な歓迎を受けた。




淫乱路線の単体女優として活躍した後、芸能界も騒然とさせた渦中の人物になった。


歌姫の実父によって、本人を想起させる紛らわしい芸名のAVを企画して、派手な宣伝活動を開始するとスポーツ紙やゴシップ紙を中心に喰い付き、少しずつ注目された。




生き馬の目を抜く芸能界で、老獪な戦術を駆使する実父は、一気に戦線を拡大した。


売り出し初めの微妙な時期でもあり、歌姫の関係者も極秘裏に実父と交渉を開始して、多額のカネが動き実利を得ると一転して「AVとは認識せず、私も被害者」と訴えた。




「誰も恨んでいないよ、色々経験出来て、結構楽しかったよ」屈託なく言った。


一介の顧客とママの健全な関係であり、大阪勤務時代も震災ボランティアに参加した帰り等に立ち寄って、顔繋ぎだけは欠かさず、付かず離れずの関係を継続していた。




東京勤務に復帰すると、数組で満員の小店から大店に変わった後、連絡が途切れた。


実妹でチーママが顧客と結婚して、本人も著名プロデューサーから、半ば脅しプロポーズを受けて、精神的に参ってしまい、店舗を畳み、行方を晦ましたと風の噂を聞いた。




勤続二十年表彰の副賞に貰った旅行券で北海道を訪れた時、突如連絡があった。


「数か月だけ、匿って欲しい、今は理由を聞かないで」唐突であったが、断ることは出来なかった、北海道旅行を中断して、東京に戻り、彼女との奇妙な同棲生活を始めた




要望に応える為、自分なりに東奔西走したが、彼女とは住む世界が違い過ぎた。


「一杯頑張ってくれてありがとう、これ以上迷惑を掛けて、好意に甘えることは出来ないので、怖いけど噂の彼と三度目の結婚をします、三度目の正直を信じます、ばいばい」




三年間、音信不通の末に「突然ですが、熟女パブに勤務するので、遊びに来てね」


教えて貰った店に早速、予約を入れて、久々に会ってみると、自身に満ち溢れた笑顔が影を消して「場末のお店に来てくれて、ありがとう」疲れ切った表情でお酌してくれた。




「裏の仕事の経験しかなく、常識知らず」や「容貌しか取り柄がない」罵倒された。


一方的な罵詈雑言を吐き、反論すると徹底的な兵糧攻めのモラルハザードに、自立に向けた行動には横槍を入れて邪魔をして、一時休戦するも、精神的に追い詰められた。




「中学校も碌に出席していないから、昼職は無理だから、仕方ない、自業自得だよ」


アフターの居酒屋で「全部奪われた上、存在まで全部否定されて、悔しいよ」搾り出すように呟くと「居場所がなかったから、カネもケンカも男に負けないように誓ったのに」




ホストが女性客を風呂に沈めても、武勇伝になるのに、反対だと悪評で負けてしまう。


ホステスが男性客から搾取して、ホストに貢ぎ、更に上前を撥ねる食物連鎖の頂点に立つのは誰だろうか、兜町と比較するとカネが海外流出しないだけマシだと思っていた。




暴対法の施行によって、暴力団が排除されて、半グレが台頭しただけではなかった。


台湾系が先陣を切って、朝鮮半島系、東南アジア系、南米系、アフリカ系も相次ぎ参入したが、最大の勢力であり、悪質なのが大陸系であり、盗品及び偽物市場も形成する。




「AVで稼いでいた頃、ホスト狂いの友人に連れられて行ったけど、私は嫌だな」


チャラチャラしたへなちょこ男がNo.1だと抜かして、口説いて来て鬱陶しかったので「お前ら、口先で適当なこと言って、稼いでいるけど、私ら、身体を張ってんだ」




「心身を削って、ホストに貢いでも昔なら昭和の大歌手、今は占星術師には敵わない」


「食物連鎖の頂点に君臨する連中とズブズブだからね、現実を理解してクスリに走っちゃうんだね」と言い「シャブで少年院に二回ぶち込まれたけど、二十歳で止めたよ」




安定していた躁鬱症が悪化して、自傷やストレス性腸炎で入退院を繰り返していた。


法テラスに相談して、弁護士と相談するものの、内弁慶外地蔵で典型的なサイコパスであったので、調停は長引いたが前妻による過去の悪行が暴かれて、彼女は解放された。




亡くなった友人、知人が「おいでおいで」や「来ちゃ駄目だ」と安眠を妨害する。


AVからタレントへ華麗に転身した先輩やポールダンスや社会活動を手掛けていた後輩等の悲劇的な最後を、真直に見届けて「生きていても苦しいから、早く皆に会いたい」




昼職は基本的に年功序列であるが、夜職は若さを売り物にした実力主義の世界だ。


夜職で圧倒的な成功を収めて、若くしてカネと名声を手に入れたが、昼職の世界では羽根を捥がれて、飛躍することは難しく、凋落の兆しに一番敏感なのは、取り巻きだ。




酸いも甘いも噛み分けた結果「口では綺麗事を並べ立てても、所詮は己が大事だよ」


「私なんか相手にしても無駄だよ」が「何か裏がありそうで怖いよ」となり「本当に優しいね」心を開くと「ギュウ(ハグ)して」や「いいこいいこ(頭を撫でる)して」




強烈なDVを受けて、傷跡も生々しいけれど、父の愛情を求め続けて、痛々しい。


著名プロデューサーは、性癖を知悉しながら、純粋な心を弄んでズタズタにしてしまった「逮捕されないなら、ボコボコに蛸殴りにして、殺してやりたいよ」遠くを見詰めた。




夜職から昼職への転職は困難であり、養育費の悪質な踏み倒しも後を絶たない。


正直者が報われる社会の実現に欠かせないのが、弱者を切り捨てない社会であり、制度の不備を悪用する輩を許さない風潮、サイレントマジョリティーが声を上げることだ。




現時点では「自分のことだけで、一杯一杯なので、絶対無理だよ」固辞している。


僕の夢を繰り返してしまい、彼女の負担になってしまったので、口に出すことは差し控えるが、決して諦めたのではなく、貴重な経験で先頭に立つ機が熟すのを待っている。




大学生の時、茶の間でも活躍するオネエ系タレントに入れ込んだことがあった。


セット料金だけで、齧り付き席で飲食も特別扱いして貰い「何かプレゼントさせて」に「親の脛齧りが生意気を抜かすな」欠点のない端正な顔が、阿修羅のように変化した。




「もう、二度とお店には来たらアカンの」弱弱しく、尋ねることしか出来なかった。


「うちのお店はショーが売り物で、三か月で刷新するんで、学生らしく友達と遊びに来て頂戴」卒業までの四年間と新人時代に継続していたが、東京進出によって途絶えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る