第2話 金商法と暴対法

以前は証券取引法であったが、国際的な潮流を鑑みて、金融商品取引法とされた。


90年代後半から日本版ビッグバン導入に伴って、金融商品に関する法律群を統合した為、内部統制報告書の提出が義務付けられた部分を日本版SOX法と呼称される。




健全な市場及び消費者保護の為、金融商品の販売等に関する法律も整備された。


法の精神こそ立派であるが、国内事情よりも国際的な潮流を優先した結果、海外投資家による恣意的な価格形成が、疑われる取引も結局有耶無耶になってしまう傾向がある。




法律さえ遵守すれば、問題ないコンプライアンス至上主義の弊害も散見されている。


回転売買若しくは経済合理性のない乗り換え販売も、期間や回数等の数値基準だけが重視され、顧客属性を考慮する筈の適合性基準も、上司の胸先三寸で決まってしまう。




僕が入社した頃、殺人と強盗以外なら何でもありで、数字こそ人格と嘯いていた。


顧客資産を預かる際、前受若しくは借受の発行が必要であったが、実際には名刺の裏書だけで対応する先輩もおり、週末のギャンブルに流用して、馘首された例も散見された。




ダマテンこそ問題外であったが、マカサレに至っては、表彰に必須と奨励された。


ダマテンは顧客に黙って転売することであり、協会による公正慣習規則違反で済むが、マカサレは顧客了承による取引一任勘定に該当するので、金商法違反に該当する。




株式委託手数料の自由化によって、業界全体に激震が走り、ネット証券が台頭した。


信用取引による回転売買が最大の収益源であったが、大幅に引き下げられた結果、販売手数料が高率である投信信託の乗換営業及び保険商品が主力を担うことになった。




信用取引で、レバレッジを掛けず、現物取引だけであれば、致命傷にはなりにくい。


株式依存症若しくは中毒症の末期患者のように日計り商いを好む顧客は、手間ばかりで手数料自由化により招かざる客に凋落して、利幅の取れる商品だけが持て囃される。




期間若しくは商品による制限を設けても、想定外の裏技が、目聡く発見される。


お客様より上司様の文化が蔓延しており、繰り返しになるが、数字こそ人格であり、良い先輩も都合が、暗黙の了解で前に添えられるので、寧ろ不名誉な称号であった。




三か月ルールであれば、翌月の初日に乗り換え、投資信託以外の商品を挿入する。


会社の常識は、社会の非常識であるが、気が付くと良心の呵責を感じることなく、収益の最大化に邁進することこそ、美徳であると盲信して、友人及び知人の数が激減した。




外資系親会社による徹底した四半期決算を意識した行動が身に付いてしまった。


上昇が期待される商品であっても、長期保有顧客は最大の敵になり、利益相反が顕著となってしまい、不必要寧ろ有害な助言がないので、ネット証券への逃避は加速する。




証券不祥事、山一證券の自主廃業等のように、業界を取り巻く環境は最悪であった。


損失補填に絡む国会議員の自殺もあり、技師系親会社の軍門に降るしか、生き残る道はなかったのだが、徹底した時価総額至上主義によって、地方法人の離反を招いた。




四半期決算での実績を焦り、仕組債を利用した粉飾決済によって、墓穴を掘った。


上場企業の規範となるべきであるが、恥知らずにも反面教師となってしまい、営々と築き上げてきた金看板に泥を塗り、社員章を外さざるを得ない、悲哀及び屈辱を味わった。




度重なる不祥事で不信感が募り、外資系親会社は、日本市場から事実上、撤退した。


入札の結果、友好関係にあるメガバンクではなく、疎遠であったメガバンクの傘下として再出発するしかないが、時価総額及び収益至上主義による負の遺産は顕著であった。




お客様より上司様、上司様より銀行様、根底にあるのは、数字こそ人格への盲従だ。


表面こそ美辞麗句を並び立てるが、三つ子の魂百までの通り、手を変え、品を変えて、信奉する会社の存在意義を実現する為、構造的な利益相反を孕む矛盾を無視する。




地道に信頼感を回復するのではなく、親会社による露骨な紹介営業も最悪であった。


間接金融中心の考えに凝り固まった銀行からの出身者は、市場を理解するのではなく、商品構造が単純で理解し易い仕組債を収益獲得の主力商品に位置付ける失策を演じた。




皮肉にも仕組債で躓き、墓穴を掘ったにも関わらず、性懲りもなく、押し売りする。


人は誰しも、お買い物は大好きなのに、主導権を販売側が握ると苦痛になることは、自分自身の胸に手を当てれば、明白なのに誰も異を唱えることなく、受け継がれている。




厚化粧よりも薄化粧が好まれ、理解出来ないモノへの拒否感は、万国共通の筈だ。


デリバティブは、リスクヘッジとして活用すれば、利便性もあるけれど、素人相手にオプションの買い手でなく、売り手として、実際のリスクを説明しないのは、卑怯だ。




利益が限定されるが、損失は底知らず、手数料の塊で、典型的な不機嫌な商品だ。


販売手数料に飽き足らず、商品組成時に多額の費用が発生して、市場の変動に対して無防備であり、手の内を晒し続けるので、運用制限のない投資家にとって意味がない。




丁寧な商品説明及び的確な時価評価が採用されると、投資に値する商品ではない。


メガバンクの関係先に対して、不適切な情報共有に基づき、優越的地位の濫用でなく、活用と言い換えて、組織的な販売が法人及び個人で、日常茶飯事に繰り返された。




内部告発の常連であった為、不穏な動きを感じるや否や、異動の憂き目に遭った。


事前警告なしで、後ろから袈裟懸けにするような卑怯な振る舞いを避けた結果、伝家の宝刀である人事権を行使されて、短期間で異動になってしまい、僕の立場を悪くした。




出向者である役員のインサイダー疑惑を組織的な隠蔽する為、報復は凄惨を極めた。


評価及び異動だけでは、飽き足らずに問題児である僕を休職させる為、産業医に働き掛けたが、硬骨漢が拒否すると精密検査を求めて、主治医に切り替えようと画策した。




哀しいことであるが、信頼関係が破綻しており、証跡を残すことで保身を図った。


不毛な関係が永続しており、心身を擦り減らすことを双方が望まなかった為、僕は早期退職制度を利用して、二十五年間の会社生活に終止符を打った、無条件降伏だった。




他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけ、心理学者に従った。


十五年間も無駄な努力によって、他人及び組織を変えようと足掻き続けず、貴重な時間を浪費せず、もっと早く見切りを付けろと助言もあった、我が人生に一点の悔いなし。




暴対法の正式名称は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律と長い。


都道府県公安委員会によって、指定暴力団の不当な行為を禁止して、措置命令及び罰則規定が設けられており、警戒区域では措置命令を経ずに罰則を科すことが規定される。




具体的に27種類の行為が禁止されて、指定暴力団の代表者等は無過失責任を負う。


事業者に対しても不当な要求による被害を防止する為、不当要求防止責任者を選任することが求められ、地元警察署の暴力団対策担当が実施する講習を受ける必要がある。




暴力団員は減少し、暴力団事務所の撤去も進み、対立抗争事件も減少、短縮化した。


法律に触れぬように巧妙になり、企業舎弟による一般社会への進出、組織偽装、組織の不透明化・地下組織化・マフィア化が顕著となり、組織犯罪の国際化等も懸念される。




国際的な潮流よりも、国内事情を優先させた結果、海外勢力を増長させてしまった。


台湾系黒社会が先陣を切り、朝鮮半島系、東南アジア系、南米系及びアフリカ系と全世界から浸食を受けているが、他を圧倒して厄介で悪質なのが、大陸系中国人の犯罪だ。




十億超の人口を養うことが不可能であることは、共産党政権も半ば宣言している。


北京、上海、広州、福建等と出身地によって勢力が色分けされており、組織窃盗や偽造品、製造販売等の犯罪行為を繰り返し、非正規品市場を形成して、肥大化している。




労働基準法に準拠して、交代制で臨む警察に対し、黒社会は24時間闘っている。


構成員の多くが密入国者であり、指紋登録されていないだけでなく、出入国を繰り返すので、警察の必死の捜査も限界があり、具体的な暴力への実効性は、甚だ心許ない。




職業として警察を選択しただけで、死地に赴く覚悟は、過大な要求で無理がある。


自然界でも特定の種類を保護若しくは乱獲すれば、生態系は崩れて、何らかの副次的な効果が現出するのが当然であり、戦後の混沌とした闇市での騒擾事件を教訓にすべきだ。




安全、平和、人権を念仏のように唱えていれば、大丈夫と考えるのは無責任だ。


連合国軍最高司令官総司令部によって、無償で与えられた自由及び民主主義を後生大事に墨守しているだけではなく、自らの頭で考えて、議論すべき時期は到来している。




国際連合と意訳しているが、実際は旧連合国であり、第二次世界大戦の枠組みだ。


重要な議論も五大国による拒否権の発動によって、覆されてしまい停滞して、拠出金負担割合及び不払いの問題で行き詰っている状態を打破する為、一石を投じるべきだ。




自己実現欲求も曲解してはいけない、至高の動機は母性本能、乃ち自己犠牲だ。


自由を謳歌する場合、他人も尊重して、侵害しないことが大前提であり、信頼の欠如した社会は、外部不経済による費用も飛躍的に膨張するので、極力回避すべき事態だ。




地球温暖化が叫ばれているが、周期から検討すると寒冷化による恐怖が現実的だ。


二百数十年前の天明の大飢饉では、悪天候や冷害に加えて、浅間山等の噴火による火山灰も降った為、東北を中心に疫病や餓死及び逃散が相次ぎ、都市部も治安悪化した。




胃袋だけが欧米化してしまい、食糧需給率も低い為、食糧危機の到来に無防備だ。


肉食の非効率及び日本人の消化器を考慮すれば、玄米と味噌汁の良さを理解して、有事も想定した平等な分配方式の確立を目指し、正直者が報われる社会を実現すべきだ。




暴力を肯定する気は毛頭ないが、現実問題として避けられない事実を直視すべきだ。


売春防止法による赤線及び青線の廃止や利息制限法と総量規制の強制適用によって、救済されて、恩恵を受けるだけでなく、除外されて、却って不利益な場合もあり得る。




最も弱い立場に対する救済を拡充して、制度を悪用する輩を排除、厳罰化すべきだ。


親切仮面を装った悪党による貧困ビジネスによる搾取及び不正等の非効率を排除しなければ、社会保障費の高騰は避けられず、富裕層が海外逃避する最悪の事態を招来する




北風の威力で上着を奪わず、太陽の恩恵を享受することが出来る環境整備が重要だ。


銀行口座や携帯電話等を奪って、最低限の文化的な生活を不可能とする兵糧攻めではなく、高齢者の運転免許返上のように、解散届で、休耕地を貸与、屯田兵とすべきだ。




警察及び自衛隊員の再就職先も、天下りでなく、屯田兵指導員を拡充すれば良い。


休耕地及び山林の荒廃を防止するだけでなく、海外依存の観光立国でなく、自立した産業立国によって、東京一極集中を是正して、活力のある地方創生を実現させるべきだ。




鎖国を推奨するのではなく、共栄共存を志向する人には、門戸を閉じるべきでない。


悪意に満ちた不良外国人が目立つが、殆どは善良な人であり、一律に排除するのではなく、サイレントマジョリティーが声を上げることで、良貨が悪貨を駆逐出来る筈だ。




外交官で詩人のポール・クローデルは「日本は貧しいが、気高い」と絶賛した。


明治維新を実現して、欧米以外で唯一の先進国となった事実は世界に轟いており、極端な卑下は不要であり、大東亜戦争も軍部の仕業にして頬被りせず、直視すべきだ。




現在の常識によって、過去を裁くことは愚かなことであり、只管謙虚に学ぶべきだ。


今、僕が存在するのは、父母が不可欠であり、其々に祖父母も存在するので、無限に祖先からの恩恵を被り、人生まで遡ると数え切れない奇跡の結晶であると自覚すべきだ。




自分の存在を愛するように、奇跡の結晶である他人を尊重することから始めよう。


喜怒哀楽と一括りにするが、積極的な感情である喜楽は、分かち合うことで総量が増加して、消極的な感情である怒哀は、分かち合うことで、総量が減少する特徴がある。




嫌な経験をしたら、自分限りで処理して、嬉しい経験は他人に施して、繋げよう。


同情は不遜であり、共感は不能であり、出来ることは受容でしかない、適度な離別感を持つことで環境に左右され難くなる、偉そうに語ったが、残念ながら僕は煩悩の塊だ。


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