第4話 出会い
ステラは洞窟の入り口に着くと中をのぞいた。大きな岩がゴロゴロとある洞窟は薄暗く、奥までは見えなかった。波打ち際から離れているため、ここまで波が来ることはないだろう。洞窟内は砂浜の砂が流れこみ絨毯のように広がっていた。
ステラは洞窟の岩に腰かけるように座った。
するとその時、近くから動物が威嚇するような声が聞こえた。
「トゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛」
声は小さく、ステラの真後ろからした。
「何かいるの?」
ステラが振り向くとそこには、猫のようだが猫ではない動物がいた。大きさは小型犬くらいで、額に赤い石のようなものがある。長い耳は垂れ下がりウサギのように長く、体毛は身体上部がエメラルド色でお腹から足にかけては白かった。こんな動物、ステラは見たことがない。
「トゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛! トゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛!」
その動物はステラが近づいても逃げることはない。しかし、威嚇はやめず、彼女がそっと手を伸ばすと毛先が白くエメラルド色の大きな尻尾を立て、白い牙を露出させた。
「あなた……怪我してるの?」
その動物の白い左足の体毛が赤く染まっていた。そのため、この動物はここから動けないようだった。
「ごめんね。あなたが休む邪魔をしようとしたわけじゃないの。少しだけここにいさせて」
ステラはそういうと、反対の岩に腰掛け、その小さな動物の動きを見守った。外はザァーと雨が降り注ぎ、ステラが離れたことで、小さな動物は威嚇を止め、怪我をしている足を舐めるように毛繕いを始めた。
「あなたなんていう名前なの?」
ステラは頬を両手で覆い両肘を
ステラの問いに動物は答えずただひたすらに傷をいやすように足を舐める。その姿はつい触ってみたくなるほど毛並みは美しく。まるで幻想生物を見ているようにステラは思えた。
そうしてしばらく雨宿りをしていると、雨が上がり洞窟に日差しが入り込んできた。
「太陽だ……」
ステラはそっと動物の様子を
「食べ物を探さなくちゃ」
ステラは洞窟を離れ森に近づいた。木々の葉は雨粒が乗り、太陽の光をキラキラと反射していた。
ステラは砂浜と森の境をそうように歩く。すると、少し森に入ったところに黄色のラズベリーを見つけた。
「これ、食べれそう」
ステラはそれをとって口の中に入れる。そして口をしばらくモゴモゴと動かして味を確かめる。優しい酸味と甘さが口の中を伝って美味しい。
「っ……!」
ステラは手に取れるだけラズベリーを摘むと次から次へと口に入れて夢中になって頬張った。満腹とは言わないが多少お腹は膨れ飢餓感は少し薄れた。
「これ……あの子も食べるかな」
ステラは服の裾を片手で持って摘んだラズベリーを入れていくと洞窟に持ち帰った。
「ねこちゃーん」
先ほどの動物がいたところを覗き込むと、やはりその動物はそこにいた。
「トゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛!」
ステラが猫と呼ぶ生き物は毛を逆立てて喉を鳴らし手を伸ばすステラを威嚇した。
「ご飯、ここに置いておくね」
ステラは葉っぱの上に乗せたラズベリーをその動物の前に置いた。
「食べれるかどうかわからないけど美味しいよ」
「トゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛」
ステラはその小さな動物の頭を撫でるように触る。動物は牙を出したまま威嚇を続けステラを睨みつけた。しかし、次第にその唸り声もステラが撫で続けると弱くなり、やがて、ステラから顔を背け、地面に顔を伏せた。
ステラは首筋から背中にかけて撫でていく。
「あなたも一人? 私も一人なの……」
ステラの言葉にその小さな動物は一瞬ステラの方を見て顔を上げたが、すぐに顔を伏せた。
「良かったら友達に……って行っちゃった……」
後ろの片足をひょこひょこさせながら、神秘的なその動物は洞窟の外に出て行った
「フラれちゃった。あははっ……」
ステラの空虚で自傷気味な渇いた笑みが洞窟内に寂しげに響いた。
無人島サバイバル 二村 三 @333323333
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。無人島サバイバルの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます