第42話 ジョナン、真の女難を知る

 神様と精神感応テレパシーを一通り終えた頃、ごま塩コンビがこちらにやってきた。



「おっちゃん」


「ジョナンさん」


「ああ、やったな」



 俺たちはやったんだ。



「おっちゃん、ガーファの街はどうなるんだ?」


「私も心配です」


 二人の心配ももっともだ。



 俺たちはガーファ大神殿を壊した身だ。


 あれ以来ガーファには足を踏み入れていない。



 俺は神様にガーファの様子を調べてもらった。



 ――今確認した。リーニエが大活躍している。大魔神がいない間、今までのシステムを捨て去り、新しいシステムを導入した。居心地の良い街になったようだな。


(リーニエなら大丈夫だろう。そのままあいつが市長になればいい)



 ――ちょっと映してみるか。



 スライムさんの体から映像が照射しょうしゃされる。



 そこにはガーファの街と、リーニエが映っていた。



 なんと、街の音も聞こえる。



(音も出るようになったのか)


 ――アップデート完了だ。次は映像先と会話できるように鋭意えいい改良中だ。



 ガーファの街からリーニエの声が聞こえる。



「そこにこの物資を届けろ。インフラの整備はまだか。ああ、そこにはこんなにいらない。これぐらいでいい」


「はい、分かりました」


 リーニエの指示で部下とおぼしき女たちがてきぱきと動く。


「リーニエ様、少し休まれてはいかがです? 連日休みなく働かれていますが……」


 違う部下がリーニエを心配して言う。


「一刻も早くガーファを復旧させねば。私にはやらなければいけないことがある」


「えっ、リーニエ様のやらねばならないこと? それを聞いてもよろしいですか」


「フッ、そんなこと恥ずかしくてとても言えぬ。会いたい人がいるなんて、な」


「えっ、それはリーニエ様の想い人ですか?」


「ハハハ、まあそんなところだ」



 そこで画面は消えた。



「リーニエ姉ちゃんの想い人?」


「それって……」



 ごま塩コンビが俺を見る。



「ハハハ、まさかね」


 俺は笑うしかなかった。



「ごほん。しかし」


 俺はごま塩コンビに話しかけた。



「この三年、お前たちは成長した。ミルポ、お前は呪いというハンデがありながら、よくここまでウイングボードと防御をみがいた。エスティも魔法をよく勉強し、数々の精霊召喚を習得した。ニ人とも、偉いぞ」



「それもこれもおっちゃんのおかげだ」


「そうです。ジョナンさん」



 くー、うれしいこと言ってくれるね。



 しかし、大魔神のガレキでえらい騒ぎになっているな。


 よし、ここは大掃除といこう。



「お前ら、ここはスライムさんの聖地。一粒たりともゴミを残すな。ごま塩コンビ、ここを掃除しなさい」



 俺は年長者として、ごま塩コンビに指示をした。



「おっちゃん、このガレキの山は、うちたちじゃ無理だ。やっぱり男の人じゃないと」


「ジョナン先生、お願いしまーす」



 先生? ウム、その呼び名、悪くない。わかったわかった。



「ここら辺は全部俺がやってやるよ」



 よーし、片付け頑張るぞ。


 俺は腕まくりをした。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「アンタ達」


 そう呼ばれてミルポ&エスティが振り返る。


 そこにはヨーコの姿があった。



「アンタ達、立派に魔神を倒したみたいだね。よくやったよ。この三年間よく頑張ったね。それにしても、アンタ達、男の扱い方がだいぶ上手くなったじゃないか」


「いやー、三年間頑張ったからね。ヨーコ姉ちゃんからも色々教えられたし」


「偉いね、ミルポは。三年もてば人も変わる。成長するものさ。それにひきかえ、あのスライムバカは何も変わっていないね」



「でも、そこがいいところだと思います」


 エスティがつぶやく。



「そうだぜ。やっぱりおっちゃんはあーでなきゃ」


 ミルポも続ける。



「そうさね、ところでアンタ達、私のもとに戻って来る気はないかい?」



 ヨーコの問いに、



「ノー」と、ミルポ。


「すいません」と、エスティ。



「そうかい、しょうがないね。まあジョナンならアンタ達をうまい具合に導いてくれるかもね……。あー、あと聞きたかったんだけど、私の所に居た以外は、アンタ達どこで何をしていたのさ」



 ヨーコの問いに、ミルポはニカッと笑った。



「北はノースアイランドから、南はサバリカまで大冒険だったぜ」


「そうそう、巨人族の生まれ故郷を訪ねたり、禁断の魔法があると聞いて探しに行ったり」



 エスティが楽しそうに続ける。



「そうそう、その時エスティが間違ってお酒飲んじゃって……」


「ミルポ! それはダメ~」



「えー、聞かせなよ」と、ヨーコ。



「いやぁ、エスティが酔っ払って大暴れしたんだ」


「もうその話はやめて。それを言うならミルポだって、ウイングボードを村の大事な仏様に突っ込んで壊して、危うく火あぶりの刑にされそうだったじゃない」


「うちは別に恥ずかしくもなんともないぞ。うちの武勇伝だ」


「お前たち、色々と派手にやっていたじゃないか。もっと聞かせておくれ」



 女三人のおしゃべりは終わらない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 俺はせっせと聖地の片付けをしている。ガレキの数が半端じゃない。俺一人で終わるのだろうか……。



 スライムさんに手伝わせようか?


 いや、ここはスライムさんの聖地。スライムさんの手は汚させない。



「でもおかしいな。何で俺だけ一人、ひたすら頑張ってんだろう。女どもは向こうで楽しそうに談笑だんしょうしているというのに」


 ――お主は本当にバカなやつだ。女どもに良いように言いくるめられたことに、なぜ気づかない。


「神様、何か言ったか」


 ――まあ、ワシもさんざん男どもをたぶらかしてきたから、人のことは言えないがな。


「? おい、神様。お前、もしかして女だったのか?」


 ――おや、話してなかったかな。人間の頃はたくさんの男どもを手玉に取っていたものだ。


「いや~聞いてないよ~。神様、女だったのか〜」



 男同士、親身しんみになって話せる相手だと思ったのにな。



「まあ、じいちゃんばあちゃんになれば男も女もないけどな」


 ――お前は本当にバカだな。男と女は、いつまで経っても男と女さ。


「そんなもんかい」


 ――いや、こんなバカが大魔神を倒すとは時代も変わったな。神の力、神の奇跡、万物を創造する力、あの頃とは大違い。いい時代になったものだ。


「うるせえな神様。何をブツブツ言ってんだ」


 ――いや、何でもない。ところでお主に聞きたい」


「なんだ」


 ――スライムはオスメスか、どっちだ。



 作業の手を休め、しばし考えた。



「スライムさんは、全員メスだ」



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神殺し(ゴッドキラー)、訳してスライム ~女難編~ イケニエ儀式から絶世の美女を救ったら、逆恨みされて殺されそうです。こちらも美少女二人を引き連れて反撃します。 青柳漠(アオアヲさん) @takarenamai

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