繋ぐ思い(1)
「ごめん、私は……。生徒会のことがやっぱり心配で、空ちゃんや私がいないと機能不全に……。」
その言い淀んだ言葉に空は仕方なさそうな感じを出す。有咲の勧誘はかなり強引ではあったけど、空は本気で自由が欲しい。何かに縛られないそんな感じのゆるい雰囲気に惚れたものだった。
きっと芽瑠も雰囲気は良いけれど、部活と兼務するとかなり忙しい。特に放送部は文化祭の実行委員に加盟している部活動でこの時期はともかく7月頃から忙しくなるのは分かっていた。
「あのさ芽瑠、だったら私とローテで活動日を決めて休む日を決めない?」
芽瑠はその言葉を言われると何も言い返せない、だっていつも一緒に居ない、そんな日々を想像できないから。
「私は、ハルトくん達が本当に私のことを求めてるか分からない。だけど、空ちゃんは私をずっと求めてくれてる。だから私も放送部に入るね。」
空の言葉を聞いて、芽瑠は2つ返事でokと答えた。
空は芽瑠との、ハルトとの思い出を思い出していた。空は3年前、A県の来海町から離れて聖マリアンヌ学園中等部に入学した。夢はかつてハルトと約束した、「魔法災害」の影響の事故の加害者や被害者を助けるための弁護士だった。現在もだが、「魔法災害」で意識を失い事故を起こした際、事故の被害者は国から補償金すら貰えなかった。知られている、認めているにも関わらずだ。
さらに言えば、ハルトがめざしていたのは「魔法災害」を調べて、なんでこんな理不尽が存在するのか、それを知るための学者だった。ただ、魔法が認知されて間もない現在であっても当然魔法師になるしかその道はなかった。ただ、それでもハルト達にはそれを叶える理由があった。
「いつもみたいに秘密基地に行かない?」
赤紫の髪の少女はハルトと空に対して言葉を述べる。その少女-来未ミカはハルト達のもう一人の幼馴染。そして、2人の夢を決めた、魔法師としての道に近づくためのその道としてのきっかけとなった少女だ。
「そうだな、俺も空もそこに行こうかってちょうど思ってたところだ。」
ハルトは笑顔でそう言って、いつもの秘密基地へと向かいたいと語る。秘密基地は山の中にある、3人で作った立派な秘密基地。公園のように誰かに邪魔されることなく、3人でリラックスして過ごすことの出来る、そんな場所がハルト達の秘密基地だった。
その秘密基地がハルトたち子供にとって、当たり前のように光って見える、そんな場所だったのは言うまでもない。
「やっと着いた。」
3人はいつもの秘密基地で、いつものように喋り、いつものように夢の話をする。
「ハルトと空は何に成りたいの?」
この質問に言葉が詰まる。ハルトも空もこの時の夢は「空白」だったから、ミカのようにはっきりとした「夢」は存在していない。
「私はパティシエール、甘いお菓子を作ってみんなを笑顔にしたいなって」
その言葉は甘いものが大好きなミカらしいものだってハルトも空も思いながら笑って話をするのだった。
「じゃあまた明日。」
「じゃあねミカちゃん。ハルトくん。」
「ミカ、空、じゃあな。」
3人はいつものように別れを告げ、明日また会えるかな、そう思いながら3人は歩き出した。
夢を語り合った数日後、2人は悲しみの中葬儀場にいた。その日、ミカは交通事故、いや「魔法災害」に巻き込まれて亡くなった。
(なんで、なんで……!)
(ミカちゃん……。)
2人は涙を抑えられなかった。魔法災害は今から20年前に突如襲ってきた。突如隕石がこの世界に落ち、ユーラシア大陸の1部が消滅。その頃から人々が突如意識を失う、突然倒れる、自然発火などの怪現象が起こるようになり、それらの総称を政府は「魔法災害」と呼んだ。
この世界の「理不尽」が魔法災害そのものだった。その対策として「魔法師協会」が作られ、セフィラ社によって適正者なら誰でも魔法が使える
「なんで、こんなことが起きてるんだ……。なんでミカがこんなことにならなきゃならないんだ……」
ハルトはその涙の中に「理不尽」への怒りを込めて憤った。ミカを殺したこの世界の理不尽は自分たちにも襲ってきているとは露知らず、ただ理不尽への復讐を願うハルトの姿は夢を決めるほどのものだった。
魔法師達のメモリアルズ~日常と非日常の狭間で〜 神衣 @kaguya_yuna
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