第9話 お姉様、集めた爆発物を最大火力でぶっ放してはいけません。
ボルケノは
「いや、ここで終わりだ。その日──昨日だが、すっかり夜も
「寝坊癖のあるお姉様が早起きするとか、大惨事の予兆以外の何者でもないですわね……」
「道については詳しく聞いていた。そのお陰でわたしはほとんど迷うことなく
「方向音痴のお姉様が迷うことなく目的地に到着するとか、大災害の前兆以外の何者でもないですわね……」
「冒険者登録もすんなりと終わった」
「平穏への道は
「
「
「わたしはしばらくダンジョンの中を歩いて、大きな岩を見つけた」
「岩?」
「おっと、補足するぜ妖精の嬢ちゃん。
「ああ、あの岩のことですのね」
「クロザック殿、補足感謝する。で、わたしはその岩に荷物を入れておくのにぴったりの
「…………」
一同はこの情報によりオチが読めてしまい、相槌を打つ勇気もなくなってしまった。
「わたしはその
「…………」
さぞかしぴったりだったことだろう。
ダイナマイトで岩盤を破壊する際、岩に細長い穴を空けて、その穴にダイナマイトを入れて起爆する。それは余計なものを巻き込まないようにするという理由もあるが、爆発のエネルギーを外部に
その効果は入り口を
「ここでわたしはふと『クラスターフレイムの書』の巻き物を使うときの呪文ってなんだっけかなぁと思った。無論、そこで使うつもりはなかったが、忘れてしまっているのは良くないし、時間が経つと思い出せなくなると思った。わたしはグレープ教官に会うためにダンジョンを歩きつつ──あ、グレープ教官というのはだな」
「
「うむ。わたしは呪文を思い出そうとしながら歩いて、グレープ教官に会った。そしてグレープ教官の青く
「イラプション。噴火という意味もございますし、確かにナッツ教官の髪型はそんな感じですわよね。しかしなんでしょう、その楽しくない連想ゲームは……」
「その瞬間、魔法が発動して、そのせいで爆弾も起爆してしまって、大爆発が起こった。幸いにもフロアが火の海になることはなかったが」
「代わりにその火力をすべて引き受けることになった大岩が
ボルケノは笑うしかなかった。
「はっはっは。なるほど、三種類の爆発物を連鎖的に起爆することで通常ではあり得ない火力を実現したというわけか。どうやら岩の
「笑い事じゃねえ」
「貴殿も笑いたまえよ。こんな面白いこと、最後に
「…………」
そう言われても笑えるはずがなく、イーリスも
「あははははははは」
「いやミズネさん。
「当然だぜ。本題はこれからだ。崩落したチュートリアルダンジョンと巻き込まれた施設の復旧をどうするか、復旧するまでの間どうするか。ボルケノの旦那、もちろん協力してくれるよな?」
***
ボルケノは急に真顔になり、クロザックを見返した。その眼光の鋭さに、
それはボルケノ自身も意図しないものだった。彼はすぐに表情をいつもの笑顔に戻す──それでも目は笑っていなかったが。
「はっはっは。クロザック殿、なにを言っている。全責任はミズネさんにあるだろう。僕たちカンケイナイヨ」
「白々しいな、旦那。ミズネは不可抗力って言っているし、そうなれば事故扱いだよなぁ。そして事故となれば責任は
「貴殿こそ白々しい! 不可能を可能にするほどの奇跡を起こしておいてなにが不可抗力だ!
「そっちで冒険者登録をしてあったのなら、こっちでは冒険者登録自体ができねえぜ──本来ならな。リストが回ってくる前に登録手続きに来ちまったから審査は通っちまったがよ、正式には無効だ。ミズネの籍はそっちにある」
「登録しようとした時点でこっちは除籍だ。ダンジョン崩落についての責任は我々にはない」
クロザックは分かりやすくため息をつく。
「ふぅ。てめえならそう言うとは思っていたさ。でも俺はこのくだらない問答を避けるために来てるんだよ。なあ、旦那。どうせ最後はこういう話になるんだし、無駄な話は
「ヤダ」
即答されて、がくり。クロザックはテーブルに頭を落っことしそうになりながら、
「子供みたいに駄々をこねんじゃねえ! てめえのそういうところ、大っ嫌いだぜ!」
「嫌われるのは結構……いやでもね、僕も本当はこんな真似したくないのだよ。お金かかり過ぎるし、現実逃避も時間稼ぎもしたくなるさ。はっはっは」
「何度も言うが、笑い事じゃねえ」
「知っているよ。はぁ、仕方ないか。建設的な話をしよう」
この言葉でようやく、クロザックはボルケノを睨むのを
「仮にミズネさんに責任を取らせたところで一銭にもならない。復旧は早急に始めないといけない。僕と貴殿で責任を押し付けあっても
「物分かりの良いやつで助かるぜ」
「貴殿と協力など本当は死ぬほど嫌なのだけどね」
「性格が良ければもっと助かるんだけどな! まあいいさ、てめえから協力という言葉を引き出せただけで、俺の仕事は九割くらい終わりだ」
クロザックはティーカップを手に取り、ふんぞり返りながらそれを口に運び「それ、わたくしの煮汁が混ざっておりますわよ。あ、ちょっと漏らしたかも」思い切り吹き出した。
その吐き出した紅茶がボルケノの顔にかかる。ボルケノは無言で顔にかかった紅茶をハンカチで
「ただ復旧するだけだも面白くない。良い機会だし、お互いのチュートリアルダンジョンを統合しないか? ジーンベリー平原の低ランクダンジョンを流用すれば、新しくチュートリアルダンジョンを造れると思う」
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