第33話 抱えた重み

 桜から、心から翔を大切にしたいとという気持ちが伝わってきた。

 自分の誕生日になると、父親が亡くなった日のことを思い出す。今まで誰にも言わないでいた心の内を話そうと思った。

「……五年前、俺の誕生日に父さんが亡くなったんだ。俺があの時、プレゼントをお願いしたから買った帰りに父さんは亡くなった。俺があの時、プレゼントを欲しがらなければ……母さんや春を悲しませてしまった」

 翔は、口に出すと自分が言った一言や五年前の誕生日に父親が亡くなった出来事が鮮明に浮かび上がってきた。自分の一言で周りを不幸にしてしまったことがとても辛く、心に残っていた。

「その後、母さんは父さんが亡くなったことが苦になって……」

 翔は、泣くのを我慢して、落ち着いて話すことを意識しながら話そうとした。

 すると、桜は翔を強く抱きしめた。

「ずっと一人で抱えてたんだね。話してくれてありがとう」

 桜は、優しくもはっきりと聞こえる声で翔に言った。

「俺のせいだって、春に思われてるのかと思うと怖い」

 強く抱きしめられると、不思議と抱えていた思いが爆発して、いつの間にか口に出して涙を流していた。

「ううん。春くんは翔くんのこと大好きだって見てたら分かるよ。大丈夫」

「早く、タイムマシンに乗らないといけないんだ」

「うん。タイムマシンに乗るために一緒に頑張ろう」

 静かに涙を流す翔を、桜は落ち着いた声で答え、優しく包み込み、背中をさすった。

 翔は、この五年間抱えたいたものを桜に吐き出した。

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