第32話 秘密基地

 翔は、みんな何かを抱えているのではないかと思いながら、歩いてくといつのまにか秘密基地に着いていた。

「翔くん、おかえり」

 桜は、笑顔で翔を迎えた。

「ただいま」

 翔は、優しい口調で応えた。

「燈子ちゃんは仕事があるから遅くなるって、真宙くんは化学室で自習するから来ないかもしれないって、春くんは少し遅れるって言ってたよ」

「そうか」

「うん」

 翔と桜は、ソファに座り、秘密基地から景色を眺めた。

「……私たち、出会ってからもう五年経つんだね。私ね、翔に救われたんだ。もちろん、春くんと燈子ちゃんと真宙くんにも救われてるよ。だけど、翔が一番最初に声を掛けてくれて、手を繋いでくれたから、私はひとりぼっちじゃなくなったんだ。だから、今度は私が翔を助けたい」

 桜は、真剣なまなざしで翔を見つめた。

「ありがとう。大丈夫だよ、心配させて悪かったな」

「本当に大丈夫?」

「うん」

「よかった。何かあったらすぐに呼んでね。駆けつけるから」

 桜は、翔に笑いかけた。

「分かった。ありがとう」

 翔は、心配する桜に微笑んだ。

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