第30話 変わらないもの

「早く席につけ、授業を始めるぞ」

 早乙女先生は五年経っても変わらず、少し怖い雰囲気を出しながら翔たちの前を通った。

 翔と桜、燈子、真宙は、慌てて自分の席に着いた。

 席は最初の頃と変わらず、同じ席のままだった。

「起立、礼」

 早乙女先生の号令も五年経った今でも変わらなかった。

「今回はゼノについて勉強する。まだゼノは不明なことばかりだが、いくつか推測できる点があがった。一つは、ゼノは宇宙からきたウイルスだということ。二つは、どこかの星で何億年も前から永久凍土で眠っていたということだ」

「早乙女先生、これは何を根拠に考えたのですか」

 翔は手を挙げ、積極的に聞いた。

「それは、AIも宇宙からきたと考えられているからだ。AIは宇宙を彷徨いながらも学習と経験を積んでいったとAIが説明した。ウイルス“ゼノ”は何億年も眠っていたと想定すると、そこでゼノをAIが見つけ、“ゼノ”というウイルスを学習し、抗体が作られたと考えられるからだ」

「結局、推測じゃないですか」

 翔は、この五年間、何一つゼノについて分からなかったことに苛立ちを隠せなかった。

「推測から可能性を見つけることだってある。七瀬は、自ら可能性を潰していくのか」

「それを確かめることができていないじゃないですか! ここ二年前までは俺たち、“君が代高校”に通う生徒は世界の救世主なんて言われてきたのに、今は推測だけで何も答えにたどり着けない落ちこぼれの集まり。所詮、現実に向き合えず、夢をみている子どもの集まりなんて言われているんだ!!」

 翔は、苛立ちを早乙女先生にぶつけた。

「これで話は終わりか? 七瀬は、授業で言われることを待っているだ。この授業は”ゼノ”について話すことだ。誰にも分からないことを、今まで学んできた知識を活かして可能性を見つけていくのが目的だ。考えもしないで批判するだけの人間は必要ない」

 翔は、黙り込み、その場から動かず静かに下を向いた。

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