第29話 成長と発展

「小梅、行ってきます!」

 翔たちは小梅に声を掛けてから外へ出た。

「このままだと、全員遅刻かもしれない。神崎、AIアシストの空海を使ってくれないか? ちょうど全員、神崎が認証している靴を履いているし」

「もしかして、こうなることを想定していたわね!」

「悪いな。朝から俺の誕生日会を開くって聞いた時点でこうなるって思っていたから、事前にIoT対応した靴を履くように桜と真宙に連絡してたんだ」

「何で私だけ連絡しないのよ!」

「神崎は、いつもIoT対応の靴を履いているから」

「…………本当に仕方ないわね。今日は七瀬くんの誕生日だから特別に使ってあげる」

 燈子は、深呼吸をして画面を表示して言った。

「Please 空海! ここにいる五人のすばやさを上げて」

「かしこまりました」

 画面から優しそうな男性の声が聞こえた。

 すると、五人の靴が輝き出した。

 五人は走り出すと、車と同じくらいの速度で学校へ走った。

「やっぱり神崎のアクセス権限はすごいな! さすが、ゲネシスに勤めるだけあるな」

 翔は、車のように軽快に走りながら言った。


 この五年で、この町“宇燈逢籠”はさらに発展していった。

 AIが備わったAIロボットが普及し、国民全員にロボットが支給され、料理や洗濯といった家事をしてくれるようになり、スーパーの品出しもAIロボットがするようになった。

 そして、もっとすごいのが燈子が発明した“空海”。空海とは、画面を表示した状態で話しかけると答えてくれるAIアシスタント。燈子によると、AIアシスタント自らが“空海”と名乗ってきたそうだ。なんでも答えてくれるわけではなく、ゲネシスによって管理されているため、全ての人々が自由にAIを使いこなせるわけではない。

 また、IoT対応も発展していった。IoTとは、物をインターネットに繋ぐことをいい、物をインターネットに繋ぐことで、繋がっているもの全てを操作したり、状態を把握したりなどの管理をすることができる。これも、ゲネシスによって管理されているものもある。


 燈子は、AIとITの技術があったため、ゲネシスからスカウトを受けた。学校に通いつつ、ゲネシスで働くことになった。ゲネシスで働くことの出来るものだけがアクセスできるアクセス権限を取得している。そして、その権限は燈子が持っている認証カードキーでアクセスすることができる。

「学校に遅刻するから使うなんて……今日だけなんだからね!」

 燈子は、翔と春、桜、真宙に注意した。

「燈子さん! 学校が見えるよ!」

 春が、軽快に走っていく。

「春くん、話聞いてる? だんだん生意気になってきたわね」

 燈子は、深くため息をついた。


 春は一五歳になった。タイムマシンに乗ることを諦め、タイムマシンに乗るためのパイロットスーツをデザインするのが夢になった。小学生の頃よりも甘え上手でやんちゃになった。そして、今は燈子にベタ惚れしている。

「到着っと。ありがとう! 燈子さん! またあとで!」

 春は小学生のころと変わらない笑顔で四組の教室へ向かった。


 翔と桜、燈子、真宙は時間ギリギリに教室に着いた。

「はぁ…………はぁ…………なんとか間に合ったね。燈子ちゃん、ありがとう」

 桜は呼吸が落ち着いてからお礼を言った。

「神崎、ありがとう」

 真宙は、少し息を上がっているが疲れた表情をすることなくお礼を言った。

「神崎がいなかったら完全に遅刻だったぜ、ありがとな」

 翔は、呼吸を乱すことなくお礼を言った。

「どういたしまして、本当に私たちは朝から騒がしいわね」

 燈子は微笑んだ。走ったせいか、少し燈子の頬が赤かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る