第26話 下校

 時間ぴったしに早乙女先生の授業が始まった。

 五時間目に医療、六時間目に薬学を学んだ。

 どれも、AI が知っている治療方法、調剤といったやり方の基礎を教わった。あとは、自分たちで研究していき、AIとともに学習していく必要があるとの内容であった。



 授業が終わり、夕陽が綺麗になる放課後になった。

 翔と桜、燈子、真宙の五人は下駄箱で春と合流した。

「まだちゃんと紹介できなかったから紹介する。弟の春だ」

 翔は春の紹介をした。

「よろしくお願いします」

 春は燈子をみて挨拶をした。

「よろしく」

 燈子は微笑んだ。

 春は、安心した表情を浮かべた。


「学校が始まって、二日目でたくさん学んで友達ができて幸せだな」

 桜が嬉しそうに呟いた。

「たった二日だけで本当にこんなに充実するなんてな」

 翔は、自分たちの今の状況を振り返った。

「今日の朝なんか、翔と神崎さんはバチバチだったのにね。いつの間にか仲良くなっているし」

 真宙が、思い出し笑いをした。

「仲良くなんてないわ。七瀬くんの馬鹿さに影響されただけよ」

「俺は馬鹿じゃねーよ」

 翔は笑った。

「ふふっ、冗談よ」

 燈子は微笑んだ。

「やっぱり、燈子は笑った顔の方が似合ってるぞ」

 翔は、自然に笑う燈子を見て、ふと思ったことを口に出していた。

「えっ」

 燈子は、少し驚いた顔をし、夕陽のせいなのか少し顔が赤くなっていた。

「ただ、そう思っただけ。笑った方が良いことありそうな気がするだろ?」

「そうかしら? まあ、試してみるだけ試してみるわ」

 燈子は、クールに装っているが嬉しそうな表情をしていた。


「春くん、学校どうだった?」

 桜は春に話しかけた。

「授業は難しいけど友達が出来て楽しいよ!」

 春は嬉しそうに学校のことを話した。

「よかった。春くんと同じクラスじゃないから心配だったんだ」

「ありがとう。僕は大丈夫だよ」

 春は、桜と翔の顔を見てニコリと笑った。


「本当に、いつか私たちがタイムマシンに乗る日が来るのかな」

 桜は空を見上げて呟いた。

「三人じゃなくて五人だといいな」

「そうだね」

 翔と桜は嬉しそうに笑った。

 翔は五人で過去へ行く姿を想像すると、さらに嬉しくなった。


「兄ちゃんはいいな」

 春は、寂しそうに呟いた。

「何か言ったか?」

「ううん。なんでもない。兄ちゃんも桜も学校が楽しそうでよかった!!」

 春は嬉しそうな顔をした。

 翔たちは、話しながら歩いていると家に着いていた。

「あっという間に着いたね。私、”ゼノ”が発生してから人と話す機会がなくなって人と話すことが怖かったけど、みんな優しくて大丈夫だなって思ったら自然と話せるようになってた。ありがとう。じゃあ、また明日ね!」

 桜は、笑顔で手を振って部屋に入った。

 翔と春は桜に手を振って、桜が部屋に入っていくのを見届けた。

「ありがとう。今日、朝ごはん作ってくれてありがとう。朝は、早めに行きたいから僕の分は大丈夫だよ。夕飯は、今日仲良くなれた記念に一緒に食べれたらいいな」

 真宙は、今日の朝ごはんを作ってくれたことに対してお礼を言い、夕飯を一緒に食べようと提案された。

「俺が勝手に作っただけだから気にしないでいいよ。そうだな。一緒に夕飯を食べよう」

「ありがとう。今日は僕が作るね。じゃあ、これから食材買ってくる」

「分かった。ありがとう。いってらっしゃい」

 翔と春は、手を振った。

 真宙はスーパーへ向かった。


「じゃあ、また明日…………朝ごはん作ってくれてありがとう。それじゃあ」

 燈子は、翔の顔を見ずに急いで部屋に入ろうとした。

「待って。明日なんて言わずに神崎も一緒に食べよう」

「私、七瀬くんたちに冷たい態度をしてたのよ。そんな私はこれ以上関わらないほうがいいのよ」

 燈子は、悲しそうな表情をして言った。

「そんなことないぞ。誰もそんなこと思っていないからこれからも一緒に過ごそう」

「…………ありがとう。じゃあ、また後で」

 燈子は、泣きそうな安心した表情をして部屋に入った。


「ねえ、兄ちゃんの部屋に行ってもいい?」

「いいよ」

「やった!!」

 翔と春は、翔の部屋に入った。

 家に入ると、小梅がおすわりをしてしっぽを振って待っていた。

「ただいま、小梅」

「長い間待たせてごめんな。今、ご飯あげるからな」

 翔は、手を洗いってドッグフードをお皿に乗せた。

 小梅は、嬉しそうに勢いよくドッグフードを食べた。

 翔は美味しそうに食べてるとこっちまで幸せな気持ちになった。

 ピロリーンと音が鳴った。

「何の音?」

 春は、あたりを見まわした。

「もしかして俺かも」

 翔は、画面を表示した。

 画面にはメールが来ていると表示されていた。メールを開くと、桜からメールが届いていた。

『同じ家にいるけど、メールをしてみたくてメールをしました! そういえば、体育の時に六道山を登る途中で小屋があったの! 明日の放課後、見に行かない?』

「これ、桜からのメール? 僕も行きたい!」

「そうだよ。うん、一緒に行こう。そういえば、春と連絡先交換してなかったな、後で交換しよう。これ、真宙と燈子にも送っているんだ」

 翔は、了解と桜と燈子、真宙にまとめてメールを送信した。

「僕も、みんなの連絡先ほしい」

 春が羨ましいそうな目で翔を見た。

「分かった。まず先に、俺と連絡先を交換しよう。この画面に触れてみて」

 翔は、自分のアドレスを表示させた。

「これ?」

「うん」

 春は、不慣れな手つきで恐る恐る画面に触れた。

「わぁ! 僕の画面に兄ちゃんのアドレスが出てきた!」

 春の目は、まるで宝物を見つけたかのようにキラキラと輝いた目をしていた。

「そしたら、追加するって右下にあるからそれを押して終わり」

「出来た! ありがとう」

「よし! 次は、春の連絡先を追加したいから画面出して」

「うん! 分かった」

 春は、画面を表示して翔の指示に従った。

「よし、これで完了っと。今から、桜と真宙と燈子の連絡先を送るから追加して」

 翔は慣れた手つきで桜と真宙と燈子の連絡先を送った。

「来た! えっと、連絡先を押して、追加するを押して完了っと」

「桜たちに連絡先交換したって連絡するんだぞ」

「分かった」

 春は、桜と燈子と真宙にメッセージを送った。

 すぐに、桜からよろしくと返事があった。

 五分後くらいに、真宙からもよろしくと返事があった。

 その十五分後に燈子からもよろしくと返事があった。

 春は、みんなからの返事を見て、嬉しそうに画面を見つめた。


 三〇分後、真宙が帰ってきて、パッパッと夕飯を作り、翔と春、桜、燈子、真宙の五人で自分たちがここへ来るまで何をしていたかを主に話し、仲良く食べた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る